ビジネスWi-Fiで会社改造(第44回)
ビジネスWi-Fiで"学び"が進化する
顧問先2200社を抱える会計事務所を率いる公認会計士、古田土満氏が語る小さな企業の経営のコツ。前回は、中小企業がめざすべき自己資本額の目標を紹介しました。今回は、財務面のリスク管理の大切さを解説します。最近は、中小企業においても情報管理のセキュリティリスク対策の必要性が叫ばれています。しかし、小さな会社が、最優先で取り組むべきリスク管理の対象は財務です。
前回、小さな会社の経営における手元資金の重要性を解説しました。さらに究極のリスク管理の意味でも、手元資金があることが大切になります。
最近、一般的にリスク管理というと、個人情報の漏えいなど情報セキュリティの管理のことがいわれています。しかし、我々中小企業にとっての一番のリスク管理は財務体質であると確信しています。
中小企業は潰れないことが大事です。投資をする基準は、この投資に失敗しても潰れないかどうかです。情報の管理が不十分で、またセキュリティが不十分で事故が起きたら会社は損害を被るわけですが、普通は潰れません。しかし、もし、東日本大震災クラスの大地震があっても、我々の会社は潰れないと自信を持って言える経営者がどのくらいいるでしょうか。
イメージしてください。商品は全て売れない。建物は全壊しました。取引先は営業不能に陥り、売掛金の回収ができません。手形の不渡りも起きてきます。こんな状態でも、社員を守ることができるだけの蓄積が会社にあるでしょうか?
当然ですが、払うべき買掛金、手形は支払わなければなりません。そうしないと、仕入れ先が倒産してしまいます。そこの社員と家族をも不幸にします。ただ、銀行の借入金の返済は、猶予してくれるでしょう。
貸借対照表の借方の科目で一番注意しなければならない科目は商品、製品などの在庫です。貸借対照表には資産として価値のあるものとして計上されていますが、売れなければ価値はゼロで、保管費用が余分にかかります。自分の会社の在庫を一度ゼロと評価してみて貸借対照表を見ると、借入金がとてつもなく大変な額に見えます。
商品は売れれば大きな粗利益を稼ぎますが、売れなれば会社の命取りになります。大きくもうけようとするより、体力に見合った在庫にしないと会社は潰れます。建物、付属設備などもひとたび大地震があれば、潰れて何もなくなります。その他に撤去費用がかかるので、マイナスの財産になる可能性があります。
売掛金、受取手形もお客さまが特定の地域に集中していると一緒に被害に遭い、価値はゼロになります。その他の科目に潜むリスクも検討してください。
会社は、存続することにより社員と家族を守ります。利益の蓄積はお金で残すべきものと、古田土会計では繰り返し言い続けています。もし大地震や火災などで営業が不可能な状態になった場合に、会社と社員を守るのはお金です。このお金が蓄積されているかどうかが、生きるか死ぬかの分かれ道です。
皆さまの会社に、どのくらいのお金があるでしょうか。お金を持つ目安は、前述したように社員の給料(賞与は含まない)を何カ月払い続ける体力が会社にあるかです。最低6カ月、できたら1年と思っています。
古田土会計は総額で月々6500万円の給料を払わせていただいているので、7億8000万円の預金が必要です。中小企業はこのレベルのお金を蓄えた後で、ゴルフ会員権や、リゾート施設の会員権を買うべきです。
不動産の購入も4割くらいは自己資金を用意し、6割を最も長期の借り入れにして、月々の返済額を少なくして手元資金を蓄えるべきです。経営者は、社員と家族を守ることを経営の目的と考え、常に最悪のリスクに備えていなければならないのです。
※本記事は、2017年に書籍として発刊されたものです
執筆=古田土 満
法政大学を卒業後、公認会計士試験に合格。監査法人にて会計監査を経験して、1983年に古田土公認会計士・税理士事務所を設立。財務分析、市場分析、資金繰りに至るまで、徹底した分析ツールによって企業の体質改善を実現。中小企業経営者の信頼を得る。
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