急務!法対応(第2回) 軽減税率で大混乱する飲食業、レジ変更が急務

業務・勤怠の管理 人手不足対策法・制度対応

公開日:2017.09.22

 2019年10月、先延ばしになっていた消費税の税率アップが実施される予定だ。2年以上あるので、まだ先のことと考えているかもしれないが、業種によっては大きな影響を受ける。そろそろ対応を急がなくてはならない。

 その代表が食品を扱っている事業分野。中でも飲食業は影響が深刻だ。こうした要因は、「消費税の軽減税率」の導入にある。消費税の軽減税率の導入については、国会などでの議論の記憶がある方も多いだろう。消費税が8%から10%に引き上げられる際、低所得者への税負担を減らすため、生活必需品と認められた食料品や新聞などの税率は軽減して8%を適用する。ところがこの軽減税率、なかなかややこしい。

 8%の軽減税率が適用されるのは、「酒類・外食を除く飲食料品」と「週2回以上発行される(定期購読の)新聞」である。この文字面を見れば、かなり分かりやすい区分けに見える。しかし、日本人の食の取り方が複雑になっており、実務上は簡単な話ではない。軽減税率適用の対象範囲が分かりにくいのだ。

 軽減税率の対象外になる飲食料品は、「酒類」「外食」「ケータリング等」。お酒や外食は、生活に必要不可欠なものではないとの判断から、軽減税率の対象とならない。一方で、「テイクアウト・宅配等」は軽減税率の対象となる。

 こうした区分けの結果、分かりにくくなったのが、軽減税率の対象外となる外食と、軽減税率が適用されるテイクアウトや弁当などの加工食品の線引きだ。飲食店の店内設備で食事をするイートインなら、「外食」として10%の標準税率がかかる。一方、同じ飲食店でも弁当などを買ってオフィスや家などで食べる場合は「テイクアウト」となり8%の軽減税率で済む。

 店内の注文と、店頭の弁当販売といったように販売場所が違っていればまだしも、ファストフード店のように同じレジで10%の税率の「イートイン」と、8%の税率の「テイクアウト」を処理するとなると、現場で混乱が生じることもありうる。同じメニューを注文しても、食べる場所によって隣り合わせたレジに並んだ顧客の精算額が異なることが考えられるからだ。

レジやPOSシステム改修に補助金が

 このようにイートインとテイクアウトに対応する業態では、10%の標準税率と8%の軽減税率の複数税率への対応を求められる可能性が高い。消費税の計算や納税時の事務処理が間違いなく複雑になる。現行で利用しているレジスターやPOS(販売時点管理)システムでは対応ができないこともある。経理処理の増加や間違いを防ぐには、複数税率に対応したレジスターやPOSシステムの導入や、システム改修が必要になるのだ。

 飲食店といっても、大手チェーンであれば本部主導ですでにさまざまな手を打ち始めているだろう。しかし、中小企業や小規模企業者が経営している飲食店も、今後、2019年10月までに準備を進めなくてはならない。

 中小企業や小規模企業者にとってレジやPOSシステムの改修や更改にかかる費用は、経営に少なからず影響を与える。そこでこうした事業者の負担を軽くするために、軽減税率対策補助金(中小企業・小規模事業者等消費税軽減税率対策補助金)が設けられている。複数税率対応のレジの導入や、システム改修の経費の一部を補助してくれるものだ。

 軽減税率対策補助金には、2つの申請類型がある。1つが「複数税率対応レジの導入等支援」のA型、もう1つが「受発注システムの改修等支援」のB型だ。A型では、レジやPOSレジシステムの導入や改修、さらにタブレットやスマートフォンを使ったモバイルPOSレジシステムの導入も対象となる。レジ1台当たりの補助率は基本的に3分の2で、20万円を上限に補助が得られる。B型は電子的な受発注システム(EDIやEOSなど)の改修が対象で、小売り事業者などの発注システムの場合、補助の上限は1000万円となっている。

 中小企業・小規模事業者にはとてもありがたい軽減税率対策補助金なのだが、大きな注意点がある。それは、補助金の申請受付期限が、2018年1月31日までと目の前に迫っていることだ。また、この補助金は「事後申請」が必要であり、複数税率対応のレジやPOSシステムの導入、改修が完了してからの申請となる。

 すでに受付期限までの時間は半年を切っている。導入、改修の検討から機器選定、そしてリプレースや改修作業の実施までを考えると、あまり時間は残されていない。「2019年10月だから」とのんびりはしていられない。今すぐ複数税率への対応を自社のこととして検討し始めてほしい。

執筆=岩元 直久

【MT】

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