ビジネスWi-Fiで会社改造(第44回)
ビジネスWi-Fiで"学び"が進化する
ひと昔前、車内に常備した地図帳で位置を確認しながら目的地に向かい、迷ってはペラペラとめくって、ようやくたどり着く――そんな経験をした方も多いのでは? 今は、カーナビやスマートフォンの普及により、衛星利用測位システムによる代表的なGPS位置情報を、多くの人が日常的に使えるようになってきている。
「今いる場所を地図上で確かめる」「ルート案内をさせながら、道に迷わず目的地までたどり着く」「自分の居場所をほかの人に地図上で知らせる」「友人や家族の今いる場所を知る」……。こういった具合に、さまざまな方法で日常の利便性をアップさせる。
位置情報測定はプライベートな利用だけでなく、ビジネスにも大いに活用できる。それは、外回りの際、カーナビやスマートフォンの地図アプリを使って、取引先に迷わずに行くといったベーシックな活用法にとどまらない。
例えば、営業などで土地勘のない場所に行き、そこからタクシーを呼んで帰りたいケース。スマートフォンのGPS位置情報を利用して、現在地にタクシーを呼ぶことができるアプリを使えば解決する。たとえよく知らない場所にいたとしても、現在地を口頭で伝えることなくタクシーを利用できる。
また、タクシー会社側も、配車センターに迎車の依頼があれば、近くを走行している空車をすばやく確認して向かわせることができる。以前は、運行記録計(タコグラフ)で走行速度や時間を記録する程度だったものが、最近ではGPS位置情報によって走行場所も記録・保存しているので、より緻密な業務管理が可能になっている。
宅配便やバイク便などの運送業では、社員の位置情報を把握することで、現在地や履歴から荷物の到着時刻を予測し、問い合わせがあった際、逐次ドライバーに確認の連絡をせずとも、すぐに顧客に伝えられる。
他業種においても、営業担当者や保守サービス担当者など外出が多い社員の位置情報を確認しておけば、顧客などから急な依頼が発生した場合、位置情報を確認し一番近くにいる社員を向かわせるなど、より迅速に対応できるようになる。
さらに、社内にいる社員の位置情報を把握することで、人員配置の最適化に活用できる。特に、大規模店などでは、売り場ごとの社員の配置を、顧客の混雑度に合わせて細かく臨機応変に見直せば、コストを抑えながら接客レベルを上げることが可能だ。
また、社員にとっても、勤怠管理と連携させる仕組みにより、顧客の都合等で急な直行・直帰の際に、いちいち報告する手間が省けるようになるなど、一人ひとりの居場所を把握するメリットは大きいといえるだろう。
しかし、さまざまなシーンで効率化が図れるようになる半面、セキュリティ面での課題があげられる。個人向けの無料アプリや、スマートフォンOSの一般機能をビジネスで使う場合など、個人ごとにセキュリティ対策を行う必要があり、対策ができない場合には、セキュリティホールなどを足掛かりに、会社情報や個人情報の漏えいにつながるリスクが存在する。こうしてトラブルに巻き込まれた場合の被害は深刻だ。
「コストがかからないから」といった目先の理由でセキュリティを軽視したりしていると、思わぬしっぺ返しを食らいかねない。位置情報をビジネスでも活用するならば、やはりビジネス用途で開発されたアプリやサービスを用いるのが基本といえる。位置情報を活用するメリットは大きいだけに、セキュアで自社に合ったアプリやサービスの導入を検討したい。
執筆=青木 恵美
長野県松本市在住。独学で始めたDTPがきっかけでIT関連の執筆を始める。書籍は「Windows手取り足取りトラブル解決」「自分流ブログ入門」など数十冊。Web媒体はBiz Clip、日経XTECHなど。XTECHの「信州ITラプソディ」は、10年以上にわたって長期連載された人気コラム(バックナンバーあり)。紙媒体は日経PC21、日経パソコン、日本経済新聞など。現在は、日経PC21「青木恵美のIT生活羅針盤」、Biz Clip「IT時事ネタキーワード これが気になる!」「知って得する!話題のトレンドワード」を好評連載中。
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