ビジネスWi-Fiで会社改造(第44回)
ビジネスWi-Fiで"学び"が進化する
顧問先2200社を抱える会計事務所を率いる公認会計士、古田土満氏が語る小さな企業の経営のコツ。前回、最後に社長の重要な仕事として、自分の後継者を指名して、育てることを挙げました。古田土氏は遅くても65歳までには後継者を決めて、引き継ぐ必要があると力説します。それでは、その後継者をどのように選び、どのように接すればいいのでしょうか。そして、後継者は先代とどのように付き合っていけばいいのでしょうか。そのポイントを紹介します。
社長の大切な仕事として挙げた、後継者選びについてもう少し解説しましょう。古田土会計を創業して、2017年で35年目です。この先も事業を継続していくためには、後継者を選び、駅伝のたすきを次の人に渡すようにバトンタッチをしなければなりません。
私は2017年1月11日に発表した経営計画書で、2018年4月から飯島彰仁常務を社長にすることと、その他役員陣を全て明記し発表しました。そして、古田土会計は、皆さまの手本となるように事業承継を実行しました。
一般的に、創業経営者およびその奥さまは、会社を大きくしようというより、事業を続けるために必死になって働き、土曜日も日曜日もなく、朝早くから、夜遅くまで働き詰めだったと思います。
子どもの世話もできなく、奥さまにしかられながらも感謝しながら会社経営に没頭して、会社も世間さまに認められる規模になった。こういう中小企業は多いのではないでしょうか。
創業社長にとって、会社は自分が生んで育てた子どもです。実子よりかわいいかもしれません。その、自分の命と同じくらい大事な会社を譲るのです。創業社長がどんなに寂しい思いをしているか、後継者は分からないといけません。後継者は、会社、または社長の座を譲ったのだから、「これからは黙っていて口出しはしてくれるな」と思っているかもしれません。しかし、これは間違いです。
創業社長は、人生の全てを賭けた会社を譲るのです。譲られた者が、譲った者を無条件で長く立ててあげなければ、引退の花道を飾れないばかりか、自分が無視されているようで寂しくてしようがないものです。
後継者は先代の気持ちを察し、先代への報・連・相を徹底することです。毎日、その1日にあったことを報告し、アドバイスを求める。何か新しいことに取り組むときには、事前に相談する。人事の問題が起きたら自分で決断できることでも先代に相談して感謝する。とにかく、かわいがられて信頼される。後継者は自分に経営能力があると思っていても、先代から信頼されなければ社長の座は他の人に取って代わられます。譲るのは経営権であって、支配権ではないからです。
私が知るほとんどのケースでは、社長の座は譲っても株式を譲ってはいません。後継者が自分にとって信頼できないと思ったら、株式による支配権を使って社長を解任することができます。私は、そのような事例をたくさん見てきました。後継者は先代が自分のことをどう見ているのか、常に意識しなければなりません。自分しか後継者がいないと高をくくっていたら、たとえ息子、娘、娘婿でも会社から追放されます。
後継者は、先代を立てて大切にする。現在この会社があるのは先代のおかげと、会社の内外で言い続ける。退職金はできるだけ多く払う。債務超過にならなければよいのです。その分、株価が下がるので、低額で譲り受けることができます。繰越欠損が生じたら、当分の間、税金を払わなくて済みます。
一方、先代も後継者の気持ちを考えなければなりません。先代は、会社を譲ったらできるだけ会社に行かないように我慢する。忍耐が大事です。口出しもしないようにする。特に創業者は一代で会社を大きくしたので、後継者のやること、なすことが歯がゆくて見ていられないでしょう。それでも、口出しをしないように我慢することです。
高額な退職金をもらって、新しい事業を始めるのもよいと思います。創業者は会社が存続する限り、たたえられます。本を出版したり、銅像になって会社に飾られたりもします。それに比べて2代目は、現在の厳しい経済環境の中でも、会社が存続して当たり前としか思われません。事業規模が縮小したり、万が一倒産でもしたりすれば、「2代目のボンボンが会社を潰した」と批判されます。
2代目は、創業者と比べてつらい立場にあります。親より厳しい経済環境で必死になって経営している後継者のつらさを理解し、失敗しそうでも口を出さず失敗も経験させ育ててほしいと願っています。先代のほうがはるかに多くの失敗をして、今の自分になっているのですから。
※本記事は、2017年に書籍として発刊されたものです
執筆=古田土 満
法政大学を卒業後、公認会計士試験に合格。監査法人にて会計監査を経験して、1983年に古田土公認会計士・税理士事務所を設立。財務分析、市場分析、資金繰りに至るまで、徹底した分析ツールによって企業の体質改善を実現。中小企業経営者の信頼を得る。
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