ビジネスWi-Fiで会社改造(第44回)
ビジネスWi-Fiで"学び"が進化する
何はともあれ、まずは実際に新聞を手に取って観察してみましょう。ここでは全国紙(朝日新聞、読売新聞、毎日新聞、日本経済新聞)の朝刊について説明しますが、夕刊や地方紙でも基本的な構造はほとんど同じです。
まず、上部や右上にある「◯◯新聞」という題字が目に入ります。この題字があるのが新聞の1面で、ページ数でいうと1ページです。実際、左上の欄外に「1」と数字で示されています。ページをめくって、次の面以降に2、3、4……と続いていることを確認してください。
ページ数の右には、「版」という表記があるはずです。ほとんどの人は気にしたことがないと思いますが、実はこの数字が、新聞を読む際には非常に重要なのです。
というのも、新聞の「鮮度」はここを見ると分かるからです。魚の鮮度を「眼」を見て判断するように、ニュースのプロは必ず新聞を読む前に1面の「版」を確認します。
ここに14版と書かれていれば、その新聞が「最終版」であることを表しています。分かりやすく言うと一番新しいバージョンである、という意味です。記事の鮮度が高いわけですから、新聞として最も価値が高いといっていいでしょう。逆に、「13版」や「12版」と書かれている場合は、一番新しいバージョンではないわけです。
実は、全国紙の朝刊には11版から14版まで4つのバージョンがあります。同様に、夕刊は1〜4版に分かれています。ただし、11版はそもそも発行部数がわずかです。最近は「働き方改革」などの影響で11〜12版を廃止する動きが広がっており、実質13、14版の2種類という新聞社も増えています。
なお、産経新聞の朝刊は15版が最終版、夕刊も5版まであります。ただし、首都圏など東日本では夕刊自体を発行していません。
「版」は、日本の新聞が全国展開を始めた100年以上も前に生まれた仕組みです。
配達するエリアが広がっていくと、印刷工場から離れた地域に届ける時間は遅くなってしまいます。かといって「朝刊」がお昼や、読者が出勤した後で届いたのでは意味がありません。そこで、印刷工場から離れた地域に配る新聞は別版とし、早めに刷り始めることにしたのです。
13版までは「早版」と呼ばれますが、当然、記事の締め切り時間も早くなります。社によって異なりますが、記者はだいたい午後7時から9時くらいまでには早版用の原稿をデスクに提出しなければなりません。
言い換えると、それ以降に起きた事件や、分かったことを早版に掲載するのは難しくなります。運悪く早版が配られる地域に住んでいる人は、深夜に起きた事件などについての記事は読めないわけです。
これに対し、最終版の原稿の締め切りは午前0時から1時ごろまでです。朝刊に印刷される日付の前日に起きた事件は、ほぼカバーできるといえるでしょう。
執筆=松林 薫
1973年、広島市生まれ。ジャーナリスト。京都大学経済学部、同大学院経済学研究科修了。1999年、日本経済新聞社入社。東京と大阪の経済部で、金融・証券、年金、少子化問題、エネルギー、財界などを担当。経済解説部で「経済教室」や「やさしい経済学」の編集も手がける。2014年に退社。11月に株式会社報道イノベーション研究所を設立。著書に『新聞の正しい読み方』(NTT出版)『迷わず書ける記者式文章術』(慶応義塾大学出版会)。
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情報のプロはこう読む!新聞の正しい読み方