一足お先に!IT活用でパワーアップ(第26回) HD化した人材派遣業者。外部提案でICT全面刷新

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公開日:2018.03.28

 日々の業務の中で場当たり的に構築してきたICT環境を、抜本的に見直す機会はなかなかない。しかも、現状のICT環境には、無駄があったり、新しい技術の導入が滞ったりしていることも少なくない。特にIT人材が不足しがちな中堅中小規模の企業では、従業員だけでICT環境の見直しを実現するのは難しい。企業経営のホールディングス化を契機に、外部のノウハウを活用してICT環境の全面刷新に取り組んだ、人材派遣のベルテックの事例を紹介する。

<ベルテック>

 1990年の創業。日本で仕事を求める外国人のニーズと、コストダウンや生産調整を図りたい企業側のニーズをマッチングさせるサービスを提供。アウトソーシング、人材派遣、人材紹介以外に、直接雇用の外国人の労務管理・生活サポートなどを手掛ける。マンション管理、自動車や家具・家電などの外観検査用照明機器の販売、ゴルフ用品販売といった事業にも多角化。本社は愛知県刈谷市、グループ全体の従業員は50人。

 

 外国人を中心とした人材サービスを手掛けるベルテックは、2017年に経営基盤の強化のため、中長期経営計画に着手した。計画では、グループ全体の経理処理や給与計算の業務を担当するトータルサービスシステムズを中心とした、ホールディングス化を打ち出した。それに伴って浮上したのが、IT資産管理の一本化。これまで関連会社が個別に対応し整備してきたICT環境を見直し、グループ共通の事業基盤として強化しようと考えた。

 その際に特に重視したのがセキュリティの強化である。外国人の人材派遣を手掛けるベルテックでは、外国人派遣労働者のビザやパスポートなどの機密性の高い個人情報を扱う。それだけに高いセキュリティレベルが求められる。しかし、必ずしもそれが実現しているとは言い切れない状況だった。

情報システム室室長の鈴木亜弥氏

 ベルテックで情報システム室室長を務める鈴木亜弥氏は、「グループのICT環境で一番足りないのはセキュリティ対策だという認識はありました。そのためにUTMや次世代ファイアウォールなどを検討してみました。しかし、費用対効果が見えない中で、どうすればベストなのかが分からずに、手を付けられませんでした」と話す。

 情報システム室自体が、2017年9月に設立された新しい組織だった。ICTに詳しかった前任者の後を受けて室長になった鈴木氏自身は、グループ企業の営業畑出身。ICTの知識がそれほどあったわけではない。しかも専任者は鈴木氏1人だ。他には兼任者が数名いるだけという状況で、なかなかICT環境の抜本的な刷新まで踏み込めないでいた。

 情報システム室ができる半年前に、NTT西日本の営業担当者からICT環境の整備に関するアプローチがあった。ただ、そのときは情報セキュリティの専門部署がなかったことから、提案を聞かずに終わっていた。「部署新設後、とにかく一度話を聞いてみようとNTT西日本の営業担当者に声を掛けました。そのときに、ICT環境の整備を行えば電話代を削減できる可能性があると知りました。そうした目に見えるメリットがあれば、費用対効果が分かりやすいので、具体的な検討に進めると判断したんです」(鈴木氏)。ベルテックのICT環境刷新プロジェクトが動き始めた瞬間である。

営業担当者、相談窓口のサポートを高く評価

 NTT西日本の提案は以下のようなものだった。まず、導入したものの使われていなかったVPNをNTT西日本の「フレッツ・VPN ワイド」(※1)に切り替える。電話機はWi-Fiにも対応できる次世代ビジネスフォンに入れ替え、同時に「Biz Box Server OS 6」を導入し、NASを統合する。さらに「セキュリティおまかせプラン」(※2・※3)を加えて、セキュリティ強化のために不正なサーバーとの通信やさまざまなウイルス攻撃を監視する「Biz Box UTM(Cloud Edge 100)」(※4)を導入する。

Biz Box UTM「Cloud Edge 100」

 「通信に関するトータルコストはこれまでと変わりませんが、便利になってセキュリティが強化されるのを評価しました。表面的なコストの高い安いではなく、提供される価値が費用に見合うかどうかが重要です」と鈴木氏は話す。

 鈴木氏が何よりも高く評価したのは、NTT西日本が情報システム部のメンバーに対して分かりやすく説明してくれたことだ。「NASやUTMといった個別の製品について分かりやすく説明してくれただけでなく、全体を包括的に教えてくれました。質問しても返事をくれないベンダーもあります」(鈴木氏)

 営業担当者のきめ細かいフォローとともに、現在、鈴木氏が頼りにしているのが、NTT西日本がサービスとして提供する、相談窓口によるサポート体制の充実だ。セキュリティおまかせプランとともに、中堅中小企業向けのICTサポートサービス「オフィス安心パック」(※5)にも加入したので、ちょっとしたことでも気軽に相談できるようになった。例えば、統合したNASにグループ会社ごとにアクセス権限を振り分ける際には、NTT西日本のサポートに方法を教えてもらいながら無事に設定を完了した。

Biz Box Server OS 6

 UTMの設定についても同じだ。「セキュリティおまかせプランの窓口に、閲覧履歴の活用方法を問い合わせしたときには、ベストな方法を検討してくれて、親切にやり方を教えてくれました。専門知識を持つスタッフがいない当社のような中小企業にとっては、電話で質問できて、リモートでサポートしてくれるのは、大変助かります」と鈴木氏は話す。

 同社のICT環境刷新は、まだ始まったばかりだ。ネットワークの工事は2017年12月に完了したので、今後は個別にシステム整備予算の決裁を取りながら、機能を追加していく方針だ。「UTMも今は一般的な設定で使っている状態ですが、今後当社に合ったセッティングにしていきたい。半年くらいかけて刷新の効果を確認していくつもりです」(鈴木氏)

 今後、鈴木氏がめざすのは、ベルテックのビジネスの中心である人材派遣業への貢献だ。UTMを導入したことで、セキュリティレベルを高めるとともに、ICT環境を活用したホスピタリティーの向上を図る。

 その1つが、登録に訪れた外国人への無料で使えるWi-Fi環境の提供だ。同社では月に100人ほどの登録希望者が来訪する。その際に、無料でWi-Fiが使えれば喜んでもらえる。もちろんセキュリティも考え、Wi-Fiのアクセス権限を、社内のデータベースにアクセスできる社員のデバイス向けと、来訪者用のフリーアクセス向けに分けて運用している。

 社内業務に関しても、新しく導入したビジネスフォンのWi-Fi機能を使って、どのデスクでも同じように仕事ができるようにした。オフィススペースを効率的に利用できて、事業展開の変化にも迅速に対応できる。さらに社外からのアクセス環境の整備も検討中だ。鈴木氏は「自宅や旅行先からも社内のシステムにアクセスできれば、場所にとらわれない働き方が提供できます。グループの従業員の半分以上は女性で占められるだけに、そういう環境を提供したいと思っています」と抱負を語った。

※1 フレッツ・VPN ワイドの利用には、フレッツ 光ネクストなどプロバイダーの契約・料金が必要
※2 セキュリティおまかせプランの利用には、フレッツ 光ネクストなどプロバイダーの契約・料金が必要
※3 最低契約期間は1年間で、1年ごとに更新(契約更新月に解約の申し出がない場合は自動更新)。契約途中で解約した場合、残月数に応じた所定の解約金が必要
※4 UTM機器はすべてのコンピューターウイルス、スパイウェア、不正アクセスなどへの対応を保証するものではない
※5 オフィス安心パックの利用には、フレッツ 光ネクストなど、プロバイダーの契約・料金が必要

※掲載している情報は、記事執筆時点のものです

執筆=高橋 秀典

【MT】

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