ビジネスWi-Fiで会社改造(第44回)
ビジネスWi-Fiで"学び"が進化する
受注生産型の製造業は、発注者からの多様な設計要求や短納期への対応に追われがちだ。“忙しいだけでもうからない”構造に陥っているケースも少なくない。そこから脱却するには、複数技術者による共同作業や、ICTの活用によって生産性を高める必要がある。
こうした生産効率を高める具体策として、CADソフト※によって作成したデータファイルなどを社内で一元的に管理し、従業員間で共同利用を容易にする仕組み構築が考えられる。精密板金加工やレーザー加工に強みを持つ三裕工業が取り組んだ、ファイル管理の効率化を紹介する。
<有限会社三裕工業>
スチール・アルミニウム・ステンレスなどの精密板金加工、各種レーザー加工、溶接を中心に事業を展開。制御箱からブラケット、本棚、建築補強まで「わがままを相談できる」企業として、発注者の多様なオーダーに対応する。納品前の検査のほか、工程ごとに寸法や重要箇所の徹底した確認を行うなど、全従業員が「いいモノを作る」というスタンスを貫いている。2011年設立、本社を兵庫県川西市に置く。
三裕工業は、最新の加工機や溶接機を取り入れ電気機器の筐体(きょうたい)など精密板金加工による金属製品を製作する。受注生産型の製造業だ。近年は新たな成長分野として、空気中の浮遊ウイルスなどを抑制する環境関連製品の開発にも注力する。
同社ではCADソフトによる設計や生産管理を行っているが、業容の拡大に伴って増え続けるさまざまなファイルの管理が課題となっていた。
安田裕明総務部長
「社内にある計15台のパソコンと加工機はLANで結ばれていましたが、CADファイルなどは設計作業を行うパソコンごとに保存していたため、必要な設計データがすぐに見つからないなど、業務効率が低下する要因となっていました。また、重要なファイルを他の社員が変更したり、誤って削除したりしてしまうリスクも常にありました」と、総務部長の安田裕明氏は当時の問題をこのように話す。
CADソフトによる設計・生産管理を行っていたが、ファイル管理に課題があった
「ある日、1台のパソコンに不具合が発生し、急いでデータを別のパソコンに移し替えたことがありました」と、安田部長は過去のトラブルを振り返る。幸いにしてこのときは、重要データや設計途中のCADファイルが消失する事態には至らなかった。だが、この不具合がきっかけとなり、ファイルサーバーを導入して、以前からの業務課題に取り組むことが決定した。
めざしたのは、社内にある大量の業務用ファイルを一元的に管理して、設計・製造の効率を高めることだ。そしてもう1つの狙いとして、取引先への見積もりやCADファイルといった重要度の高いデータの保全も考えた。
最新の加工機により多様な発注に対応
「重要なデータを管理するので、フォルダーごとにアクセス権限を設定できる機能を、ファイルサーバーの要件に挙げました。ベンダー選びでは、新たにシステム担当者を置けないので、保守サポートなどの体制を重視しました」と安田部長は当時の選定条件を整理した。
複数のベンダーからの提案を検討した結果、三裕工業はNTT西日本を選定した。実は最初、提案されたファイルサーバーを検証したところ、三裕工業の使っているCADソフトとの相性が合わず、CADファイルを開くのに時間が掛かってしまうことが判明した。
「代替案として、機能や価格などの要件を満たした別のファイルサーバーを素早く提案してくれました。新提案は的確でCADソフトとの相性も問題なく、非常に素早く対応してくれたので、導入後のサポートも安心して任せられると確信しました」(安田部長)。日々の運用サポートから故障時の対応まで、NTT西日本が持つ保守サービス体制も決断を後押しした。
また、当時の三裕工業は、工場の新設に取り掛かっていて、本社と新工場間のネットワーク構築や、クラウド型サービスを利用した重要データの保全などを計画・構想していた。こうした計画にも、ワンストップで対応できる点もパートナーとして魅力だった。
代表の安田原太氏
三裕工業代表の安田原太氏は、ファイルサーバーの導入効果を次のように語る。「以前は1つの製品を作るためのデータを、複数のパソコンから呼び出さねばならないケースがたびたびありました。しかし現在は、すべてのデータを1台のファイルサーバーから加工機などへ読み込めるようになり、業務効率化と生産性の向上が実現しました。当社が考えていた通りのファイル管理ができており、とても満足しています」。
2015年1月、新たな工場が完成し、主力の機械設備をこの新工場へ移行した。CADソフトで設計を行うパソコンやデータを管理するサーバーは、従来の社屋に設置しているため、両拠点間にNTT西日本のフレッツ 光ネクストを利用したVPNサービス「フレッツ・VPN ワイド」でネットワークを構築した。
「ファイルサーバーと加工機などを結ぶだけでなく、両拠点をフレッツ・VPN ワイドで接続し、データのやり取りを行っていますが、以前と何も変わりなく新工場はスムーズに稼働しています」と、安田部長は笑顔で話す。
製造業の業務改善活動は、高度成長期から続く日本のお家芸だ。企業は競って生産性を徹底的に高め、1円単位のシビアなコストダウンを積み重ねてきた。しかし、情報管理という少し違った視点から見れば、生産性を向上させる余地はまだまだ残されている。
三裕工業の、ファイルサーバーによるCADファイルの一元管理システムの構築は、コスト面でも納得のいく内容となっている。これにより、かつて手掛けた類似案件の設計情報を共有しうまく活用することができれば、設計に要する時間を短縮し採算性の向上が図れるはずだ。さらに、情報共有によって新たに創出された時間を生かし、設計業務の標準化に取り組むことなどで、さらに生産性を上げることもできる。費用対効果の高い投資にできるか、今後の取り組みに注目だ。
※掲載している情報は、記事執筆時点のものです
執筆=田村 直人
ビジネス系ライター・企業広報支援ライター。主に企業のWebサイト、会社案内、商品導入事例、CSRレポート、社内コミュニケーションツールなどの取材・執筆を行っている。
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