ビジネスWi-Fiで会社改造(第44回)
ビジネスWi-Fiで"学び"が進化する
福岡県を中心に九州で7店舗のバイクショップを展開するアンバーライトでは、店舗のIT環境を整備。本社・店舗など9拠点をVPN(仮想私設通信網)で結び、バイクの在庫状況などの情報を共有する。それとともに、インターネットの出入り口となる本社にUTM(統合脅威管理)を設置。各店舗は本社経由でインターネット接続し、情報セキュリティも強化している。
<株式会社アンバーライト>
1987年2月に創業。福岡県を中心に佐賀県、熊本県にヤマハスポーツバイクの正規ディーラーであるYSP(YAMAHA SPORTS PLAZA)を7店舗展開。オートバイの新車・中古車の販売、修理のほか、電動アシスト自転車の販売、レンタルバイク事業などを行っている。
アンバーライトの現在の経営理念は「人生を豊かにするために『楽しく・明るく・元気よく』仕事しよう」とシンプルなもの。しかし、つい最近まで、ユニークな経営理念を掲げていた。「お客様にオートバイや自転車等エコロジーな乗り物の便利さ、楽しさ、カッコよさを、安全と安心を基本に提供する。このことにより我々も楽しみながら生活を豊かにし雇用確保、納税、リサイクル等で社会貢献する」というものだ。
取締役の門松弘記氏
“カッコよさを提供”“我々も楽しみながら”が示す通り、同社で働くのは基本、オートバイ好きの人ばかりだ。社員はいずれ、自分のバイクショップを持ちたいと考えている。
だが、独立して店舗を出すのはそう容易ではない。「当社には社員が店長に立候補する制度があります。店舗を増やすことで店長になりたいという夢をかなえるとともに、九州一のバイクショップをめざしています」と取締役の門松弘記氏は話す。現在、本社のある福岡県内に4店舗(小倉、大濠、友泉、福重)、佐賀県内に1店舗(佐賀)、熊本県内に2店舗(熊本、菊陽)の計7店舗を展開する。
各店舗は、店長が中心になって個性あるWebサイトを作成する。例えば、未舗装の道を走るオフロードバイクが好きな店長は、それを中心に情報を提供する。店長の嗜好をWebサイトに反映させて顧客の興味を引く。
アンバーライトが店舗を一気に増やしたのは、2014年頃からだ。その際、課題になったのが店舗間の情報共有だった。例えば、顧客が小倉店のWebサイトを見て、自宅近くの別の店に来店する。そのバイクの在庫については、小倉店にいちいち電話で確認しなくてはならない。売れた時点で情報を更新できていればよいのだが、各店舗にWebサイト専任の担当者がいるわけではない。多くは店長が更新するため、タイムラグが生じるのは仕方なかった。
顧客からバイクの在庫状況を聞かれた場合、その都度、他の店舗に電話をかけなくても済む、素早い対応が取れる手立てが急務だった。また、当時は店舗ごとにインターネット接続サービスを契約し、店長がパソコンにウイルス対策ソフトを入れていた。更新に手間がかかることに加えて、これらを怠ったときのリスクも少なくない。
これらの課題を解決するため、新たな店舗がオープンするのを契機に、全社のIT環境を整備することにした。
本社と各店舗などを結ぶネットワークとして、NTT西日本の「フレッツ・VPN ワイド」を導入。フレッツ・VPN ワイドは、「フレッツ 光ネクスト」などを利用して複数の拠点を接続し、ファイルの共有やデータの送受信に利用できるVPNサービスだ。各店舗からのインターネット接続についても、VPNを介して本社経由で行い、プロバイダーとの契約を一元化した。
本社・店舗などを含む9拠点をフレッツ・VPN ワイドで接続する新たな情報ネットワークは、2015年に稼働。それによって、スムーズな情報共有が促進された。業務システムを各店舗の端末から利用可能なので、他店舗のバイクの在庫状況も簡単に確認できるようになった。
「お客さまが買いたいバイクがどの店舗にあるか、簡単に調べられます。商談中のバイクも確認でき、お客さまからの問い合わせにもすぐに対応できるようになりました」と門松氏。タイムリーな情報共有で、効率的に業務が行えるようになったと笑顔で話す。
全店舗の車両整備に関する情報についても、共有が思わぬ効果を生んだ。バイクの点検整備の際、通常のオイル交換に加え、プラグの交換を勧めるといったセールスノウハウが可視化したのだ。整備伝票に記載された情報を、他の店舗でも把握できるようになったからだ。「こうしたノウハウの広がりが、全社的な売り上げアップとサービス向上につながっています」(門松氏)
アンバーライトが本社に設置した「Biz Box UTM SSB30」 ※販売は終了しています
さらにアンバーライトでは、フレッツ・VPN ワイドと同時に情報セキュリティの強化にも着手した。同社は購入者の氏名や連絡先といった個人情報を保有し、取引先との決済の一部にはインターネットバンキングも利用する。情報セキュリティの強化は重要な経営課題だった。インターネットとの出入り口となる本社に「Biz Box UTM」(※1)(以下、UTM)を導入。UTMは外部からの不正侵入を防ぐファイアウォールや、コンピューターウイルスを検知・駆除するアンチウイルス機能など、複数のセキュリティ機能を1台の機器に統合した装置だ。さまざまな脅威に対応する。
「ちょうど、官庁や大企業で大規模な情報漏えい事件がニュースで取り上げられていました。問題が起こってからでは遅いと判断し、NTT西日本の提案でUTMの導入を決めました。24時間365日(設備の保守メンテナンスなどによるサービス停止の場合を除く)の強固な遠隔監視が行われ、ウイルス検知結果などのレポートも用意されます。何も問題が発生していないことが確認でき、安心しています」(門松氏)
その結果、店長は業務に専念できるようになった。ウイルス対策ソフトの導入や更新の手間が不要になり、情報セキュリティを気にすることなく安心して仕事に打ち込める。まさにUTMは、「ビジネスにおける縁の下の力持ちの存在」(門松氏)のようだった。
同社はオフィスのICTをサポートする「オフィス安心パック」(※2)も利用している。サポートは、日曜・祝日も夜の21時まで(年末年始12月29日から1月3日までを除く)、電話で受け付けている。「バイクショップは土日の客も多いので、何かトラブルがあっても対応してもらえるのはとても心強かった」(門松氏)
本社・店舗の情報ネットワークが整備された現在、検討課題は今後のさらなるIT活用だ。例えばバイクの点検整備時に、その場でタブレットやノートパソコンから無線LANを介してデータを収集。そのデータの共有化も検討するという。ITを活用した店舗間の情報共有や業務効率化で、アンバーライトはさらなる顧客へのサービス向上をめざす。
※1 UTM機器はすべてのコンピューターウイルス、スパイウェア、不正アクセスなどへの対応を保証するものではない
※2 オフィス安心パックの利用には、フレッツ 光ネクストなどプロバイダーの契約・料金が必要
※掲載している情報は、記事執筆時点のものです
執筆=山崎 俊明
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