どんなときでも稼ぐ社長の経営習慣(第12回) 先頭に立つ覚悟、責任を取る覚悟

経営全般 スキルアップ

公開日:2022.12.26

 「人を動かす」ことについて考えてみたいと思います。これは、何をやるか、やめるかという「方向付け」「資源の最適配分」に並ぶ経営の重要要素だと、皆さんも簡単にお分かりになるはずです。

 経営者の一部の人は、人は理屈で動くと思っているのではないでしょうか。けれども、人は理屈では動かないと思ったほうがいいというのが私の持論です。そんな理屈があるなら、その理屈でまず自分を思うように動かしてみればいいでしょう。そこで私が経営者の方によくお伝えするのが、人を動かすためには2つの覚悟が必要だというお話です。繰り返しますが、理屈ではないのです。

 1つ目は「先頭に立って行動する」という覚悟です。戦前の海軍兵学校では、「指揮官先頭」といわれ、指揮官たるべきものは先頭に立って行動するよう厳しく求められました。これは、経営者の皆さんに「部下がやることをすべてやれ」と言っているわけではありません。それなら、そもそも部下はいらなくなりますからね。そうではなくて、重要な方針や危機の対応に関わる重要なことほど、経営者が先頭に立って行動する姿勢が必要だということです。

 皆さんの中には、「自分は頭がいいのに、なぜか部下がついてこない」と悩んでいる人がいるかもしれません。それは恐らく、リーダーではなくティーチャーの役割をしているというのが原因ではないでしょうか。

 例えば私は経営のアドバイスをしたり講演したりするときは、相手には面と向かって「ああすればどうですか」「こうすればどうですか」とお伝えしています。それはティーチャーの仕事です。ところがそんな私も自分が経営する会社に戻れば、十数人の社員を部下に持つリーダーです。スタンスは180度変わって、先頭に立って行動するようにしています。

 「リーダーは背中を見せる」とよくいわれますが、そもそも先頭に立てば背中を見せるしかないんですね。口先ばかりのティーチャーの役割をずっとしてきた人は、社員たちに背中を見せる場面がなかったといえます。そうした口を動かすだけの経営者は、社員たちの目にどう映っているでしょうか。「さあ頑張れ」と言ったところで、「あなたこそ頑張れよ」と思われているのではないでしょうか。

 海軍の連合艦隊司令長官だった山本五十六の有名な言葉に、「やってみせ、言って聞かせて、させてみて、褒めてやらねば人は動かじ」というのがあります。ここで経営者の皆さんに注目してほしいポイントは、出だしの「やってみせ」なんですね。人を動かすことができないリーダー、つまりティーチャーばかりしている人は、いきなり「言って聞かせて」から入ってしまっている。だから人は動かないのです。ですから、経営者はまず自分が先頭に立って行動する覚悟が必要だと思うのです。

いざというときに備えて普段から2つの覚悟を持つ

 2つ目の覚悟は「責任を取る」という覚悟。経営者は自分の責任範囲で起こっていることについて、すべての責任を負うという強い決意です。経営コンサルタントの大先輩である故・一倉定先生は、「リーダーとして成功したければ、電信柱が高いのも、郵便ポストが赤いのも、全部自分のせいだと思え」というふうに言っておられました。

 電信柱が高いのは電力会社によるものですし、郵便ポストが赤いのは日本郵政の判断でしょう。そこまで責任を取るのは無理でも、ここで大事なのは責任を取る覚悟、もっと言うと自分の責任範囲で起こったことに関してはすべて責任を負う覚悟を普段から持っておく必要があるという厳しい戒めだと思うのです。

 普段からと申し上げたのは、1つ目の覚悟である「先頭に立つこと」にも共通するのですが、普段から責任を取ることができていないと、いざとなったときにもできないのです。いざとなったらどうにかなるのではないかと思っている方がいらっしゃるかもしれませんが、それは難しいです。皆さんは自動車を運転していて危ないと思ったら、とっさに足をアクセルペダルから離してブレーキペダルを踏むでしょう。しかしそのとき、きっと何も考えていないはずです。「危ないから足を動かさないといけない」なんて考えていたら、事故を起こしてしまいます。

 これが習慣のなせるわざで、無意識のうちに体が動く状態になっていることがとても大事です。人を動かす2つの覚悟、つまり先頭に立つこと、責任を取ることを普段からやっていないと、いざというときにはできません。ですから皆さん、普段から先頭に立って行動してください。繰り返しになりますが、何でもやれと言っているわけではありません。まずやることです。先頭に立つ。それから責任を取る。クレーム対応のような日常の出来事でも積極的に取り組んでください。いざというときには何も考えずに体や心が動くはずです。

●経営習慣の確認ポイント
先頭に立って動くことと責任を取ることができていますか

執筆=小宮 一慶

経営コンサルタント。株式会社小宮コンサルタンツ代表取締役CEO。十数社の非常勤取締役や監査役、顧問のほか名古屋大学客員教授も務める。1957年、大阪府生まれ。京都大学法学部卒業後、東京銀行(現・三菱UFJ銀行)入行。米ダートマス大学タック経営大学院に留学、MBA取得。1991年、岡本アソシエイツ取締役に転じ、国際コンサルティングに従事。1996年に小宮コンサルタンツを設立。

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