ビジネスWi-Fiで会社改造(第44回)
ビジネスWi-Fiで"学び"が進化する
パフォーマンス心理学の最新の知見から、部下をやる気にする方法を紹介する連載。部下に対して効果的にメッセージを伝える方法を紹介する第8回は、部下の話の聞き方です。いくら報・連・相を求めても、なかなかうまくいかないのは上司の聞く態度に問題があるケースもあります。部下が積極的に情報を伝えようとする上司の聞き方を紹介します。
部下の感情にまで届くメッセージ発信の技術(8)
「困ったことがあったり、いいことがあったり、いずれの場合でもホウレンソウだよ」と上司はよく言います。報告、連絡、相談をしてこいというわけです。「ホウレンソウ」と壁に貼ってある会社もあります。ところが、実際に話しに来ると、ろくに聞かずに「あ、そう」と言ったり、部下の提案などどうせ大したことはないだろうと、フムフムと聞き流したりする上司がいます。
なんともったいない。上司の聞き方ひとつで、さらに情報が集まったり、部下の意欲が高まったりするものなのです。そのために必要なのが、積極的傾聴技法(アクティブリスニング)の3つの技法です。詳細は私の『「察しのいい人」と言われる人は、みんな「傾聴力」をもっている』(講談社α新書)を読んでもらうとして、絶対外せない要点は次の3つです。
(1)感情移入して聞く
(2)感情コントロールして聞く
(3)聞いて訊(き)く
(1)感情移入して聞くとはどういうことでしょう。もし部下が悲しい顔で来たら、上司も悲しい顔で聞いてあげることです。シュンと背筋を丸めて来たら、こころもち体をかがめて自分自身もその悲しみを共有している動作をし、声のトーンもそろえましょう。
(2)さらに、上司に最も必要なのは、感情コントロールです。上司は仕事が多く、抱えている案件も複数にまたがるので、つい焦りやイライラ、時には怒りが顔や言葉の端々に表れやすいものです。そうなれば、部下の言葉が耳に入りにくくなり、部下も上司のイライラや怒りを察知して、自分の言葉を控えてしまいます。喜びをコントロールする必要はあまりありませんが、否定的感情(怒り、いら立ち、無念、悔しさ、悲しさ、軽蔑など)は抑制して、表情に出さないことが肝心です。
あの横綱稀勢の里が、「自分は自分の感情をコントロールして困ったときでも表情を動かさないようにしています」と何度も言っていますが、その通りです。実はこの言葉に刺激を受けた勢(いきおい)が、「表情にあまり感情を表さないようにして平静を保ったら勝ちました」と2017年3月の春場所で述懐していました。自分の怒りや焦りなどの否定的感情をコントロールして聞くのは上司の仕事です。
(3)聞いて訊(き)くとは、部下の話を聞いて疑問があれば、質問するということです。そうでなければ、お互い分かったつもりで、違う話が進んでしまうことがあります。後で問題にならないように部下にその都度具体的な質問をしてください。例えば職場報告の話を聞いていて「本当に工期は予定通り進んでいるのかな」とふと感じたら「それでコンクリート打ちは何日に済んだの」と具体的な数字を聞いてみるのが一番です。
質問にはもう1つ効果があります。特に部下が成果を報告するときには、上司に聞いてもらいたいポイントがあるものです。「それはどうやったの?」と問いかけることによって、部下が生き生きと話し出し、話すことに喜びを感じられるのです。聞いてもらえた部下は、上司が自分を理解してくれているという信頼関係にもつながります。もちろん、その中に部や会社にとって有益な情報があることも多いでしょう。
さらに上司の聞き方として、「SOLER原則」を頭に入れておくといいでしょう。米国のイーガンというビジネスマンが提唱したものです。
SOLERは、Squarely(まっすぐに)、Open(心を開いて)、Lean(上体を前傾させ)、Eye contact(アイコンタクトをしっかりして)、Relaxed(リラックスして)の頭文字です。何か部下が言ったとき、顔と顔とを正対して聞く。腕組みをしたり頰づえをついたりせず、迎え入れる姿勢で耳を傾けましょう。大事な部分では、前傾して聞きます。そして、柔らかな目線で部下を見ることです。自分自身のいら立ちや忙しさ、緊張した空気は見せずに、温かなイメージで部下の話を聞きましょう。
このように、アクティブリスニングができると、話が面白くつながっていきます。部下の「言葉による情報(ナラティブ)」も入ってきます。メールや報告書よりも意味のある貴重なナラティブ情報の収集がどこまでできるか、これも上司に欠かせない自己表現能力の1つです。
部下の感情にまで届くメッセージ発信の技術(8)
◆ 話を「聞く姿勢」を部下に見せましょう。
◆ 相手の正面に立ち(座り)、顔を合わせ、時に前かがみになって聞き入り質問をしましょう。部下が話しやすくなり、より多くの情報を得られる場合もあります。
※本記事は、2017年に書籍として発刊されたものです
執筆=佐藤 綾子
パフォーマンス心理学博士。1969年信州大学教育学部卒業。ニューヨーク大学大学院パフォーマンス研究学科修士課程修了。上智大学大学院博士後期課程満期修了。日本大学藝術学部教授を経て、2017年よりハリウッド大学院大学教授。国際パフォーマンス研究所代表、(一社)パフォーマンス教育協会理事長、「佐藤綾子のパフォーマンス学講座R」主宰。自己表現研究の第一人者として、首相経験者を含む54名の国会議員や累計4万人のビジネスリーダーやエグゼクティブのスピーチコンサルタントとして信頼あり。「自分を伝える自己表現」をテーマにした著書は191冊、累計321万部。
【T】
部下のやる気に火をつける方法