部下のやる気に火をつける方法(第26回) リーダーの表現力は3つのポイントで向上する

人材活用

公開日:2021.04.13

 パフォーマンス心理学の最新の知見から、部下をやる気にする方法を紹介する連載。どんなに苦労してもへこたれないリーダーのメンタル講座の2回目です。上の立場に立てば立つほど、大きなプレッシャーやストレスを感じることも増えるでしょう。リーダーの心を支える考え方と技法をお伝えします。

どんなに苦労してもへこたれないリーダーのメンタル講座(2)


リーダーの表現はパフォーマンス心理学のABC理論が基本

 すでに30年間ビジネスパーソン向け研修をやってきました。その中ではっきりと気付いたことがあります。一流のリーダーに欠かせない表現力の基本は「ABCの原則」だということです。

 Aはappearance(目に見える行動)、Bはbelief(信念・判断基準)、Cはcommunication(コミュニケーション)です。これら3つのうちの1つがなくても、部下がついて来る上司にはなれないでしょう。例えばAとBの元気はつらつとしたルックスがあり心の中に素晴らしい信念があっても、その表現形として自分の思いをうまく部下に伝えられなければ、部下は決してついて来ません。

 例えば、優秀な部長が「私にはパワーと信念がある」と言えば言うほど部下は「そうですか。でも僕たちは部長とは違いますから」と心の中で引いていることはよくあるケースです。

 また、リーダーのbelief(信念・判断基準)は、appearance(目に見える行動)とcommunication(コミュニケーション)の両方に影響します。これはカウンセリング学の「論理療法」という技法ですが、何かが起きたときにどんな信念で物事を判断するかで行動が変わるからです。

 例えば、ある部下の仕事が遅いとしましょう。それを見て「この部下は先天的にのろまなんだ」という判断をすれば、口から出る言葉は、「君はどうしてそんなのろまなんだ。いつからなの?」と心ない発言になります。

 もし、これが「部下はまだ仕事に慣れていないからだ」という判断になれば、「分からないことがあったら聞いてね。僕が具体的に教えるから」という支えの言葉や行動に至るのです。

リーダーの条件と能力

 自己表現力を高めるパフォーマンス心理学では、まずリーダーのbeliefが明るく前向きなものであることを重要視しています。なぜなら、それが顔つきや姿勢、歩き方、声などのappearance(目に見える行動)にはっきり出るからです。

 communicationについては、適切な言葉で部下に伝えることが一番大切ですが、場合によっては、言葉はなくとも、しっかり目を見てアイコンタクトを取ったり、そっと肩に手を触れたりする非言語表現だけでも、思いを伝えることができます。

 私のビジネスセミナーでは、8人が円になって座り、そのうちの1人がスターターになって誰かにアイコンタクトを送り、送られた人がまた次の誰かに送る「アイコンタクトリレー」を時々やりますが、これをきちんとやると「山田君」と呼びかけなくても山田君が「ハイ」と答えることができています。しかも、さらに練習するとアイコンタクトだけでも「怒りや叱責」と「励まし」を分けて伝えることもできます。まさに「目は口ほどにものを言う」なのです。リーダーの表現力はこのABCの基本を常に意識することで鍛えられていきます。

まとめ

リーダーのメンタルを支える方法(2)

◆ 何かが起きたときに、暗くネガティブな思いにとらわれるのではなく、明るく前向きな受け取り方を選択しましょう。その信念が部下に対する顔つきや話し方、話す内容にまでいい影響を及ぼします。

※本記事は、2017年に書籍として発刊されたものです

執筆=佐藤 綾子

パフォーマンス心理学博士。1969年信州大学教育学部卒業。ニューヨーク大学大学院パフォーマンス研究学科修士課程修了。上智大学大学院博士後期課程満期修了。日本大学藝術学部教授を経て、2017年よりハリウッド大学院大学教授。国際パフォーマンス研究所代表、(一社)パフォーマンス教育協会理事長、「佐藤綾子のパフォーマンス学講座R」主宰。自己表現研究の第一人者として、首相経験者を含む54名の国会議員や累計4万人のビジネスリーダーやエグゼクティブのスピーチコンサルタントとして信頼あり。「自分を伝える自己表現」をテーマにした著書は191冊、累計321万部。

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