部下のやる気に火をつける方法(第9回) 男女で視線の意味が違うことを知っておこう

人材活用

公開日:2019.11.14

 パフォーマンス心理学の最新の知見から、部下をやる気にする方法を紹介する連載。その前提となる、言葉に出ていない部下の心を見抜く技術の第9回です。ダイバーシティが叫ばれる中、部下には男性も女性もいるでしょう。男性と女性では対応に違いがあることを覚えておきましょう。

言葉に出ていない部下の心を見抜く技術(14)


同じ“見つめ”でも男女で視線の意味が違う

 見つめるという動作には、その時のその人の感情が確実に反映されます。「EPPS(Edwards Personal Preference Schedule)」という心理テストと、相手を見つめる時間とを組み合わせると面白い結果が出ました。

 下の図を見てください。相手を長時間見つめている男性の欲求傾向を取ると、顕示欲求と変化欲求の強いことが分かったのです。自分を見てほしい、あるいはどんどん情報を吸収して自分が変化していきたい、そんな男性たちが長時間相手を見ています。

 一方、女性は養護欲求と異性愛欲求、つまりあなたを守ってあげたいという気持ち、あるいは異性を愛し愛されたいという欲求が強い人はアイコンタクトが長いことが分かりました。男性同様、情報を吸収して自分を変えていきたいという欲求の高さも見て取れます。

 さて、こうなると、男性上司が女性部下に話をするときの注意点があります。答えは明らかでしょう。あまり女性の部下の顔をしげしげと長時間見つめないことです。「今日はきれいな顔だな」とか「変な顔だな」と思っても、あからさまに視線に出てしまうと、女性は敏感に反応します。女性の意識の中では「あら、嫌だ。あんなに長く見つめていて」と感じるわけです。

 逆に、女性が長時間、男性上司の顔を見ているときに、それが「仕事熱心だ」と断定してしまうと間違ってしまうケースもあります。異性愛欲求だったり、「うちの上司は危なっかしいから私が守ってあげなくちゃ」と思って見つめていたりする可能性もあるわけです。女性の見つめと男性の見つめは意味が違うということを、グラフを見てちょっと頭に入れておくと、上司と部下の関係でも男女の組み合わせの中で失敗が少なくなるでしょう。

まとめ

言葉に出ていない部下の心を見抜く技術(14)
◆男性と女性では、見つめる意味が違います。
◆特に女性部下をじっと見つめ続けることはNG。話の要点部分などのポイントで確認の意味を込めてアイコンタクトを取るといいでしょう。

 

男性部下より女性部下の方が分かりにくい

言葉に出ていない部下の心を見抜く技術(15)


男性部下より女性部下の方が表情読み取り能力は高い

 男性の経営者たちが集まったときに一様に口にするのは、女性の部下が何を考えているか分からないからやりにくい。さらに、そんなに深い意味があって言ったわけではないのに、女性部下がひどく落ち込んでしまって扱いにくい。ついには、「何でこんなに自分がご機嫌を取らなくてはいけないのか」と、不満を言う男性上司もいます。

 実は、ここには大きな男女の性差、自己表現の意識と表れ方の性差があるのです。ところがそれを忘れてしまうと、つい相手が同性だと思って、言葉を発してしまい、思うような反応が得られないのです。

 女性と男性は生まれた時から、特に母親が性差を持って育てます。特に女の子に対しては、「かわいいわね」とか、「きれいね」という叙情的な言葉掛けをしながら育てることが多いものです。一方、男の子を育てる場合、「ちょっとしたことで泣くんじゃない」などと言い聞かせることが多いでしょう。女の子は女の子らしく、男の子は男の子らしくと育てるわけです。

 結果、会社に入ってから、女性社員は自分の感情を表情に出すことにためらいがありません。男性はその逆です。さらに、自分が表情に出しているだけでなく、相手の表情の読み取り能力も女性の方が発達していくのです。これを心理学では「非言語表現読み取り能力」といいますが、私のリサーチで非言語表現読み取り能力は女性の方が上であることが分かっています。

 男性の方はそんなことを気にしてはいません。女性部下の顔色をいちいち見たりせずに、やってほしい仕事を事務的・論理的に言うわけです。ところがそれを聞いた女性部下の方は、今上司がイライラして急いでいるとか、上司が口で「頑張れ」と言っているけれどそれほど緊急ではなさそうだというように、顔色から真意を読み取っています。

 女性は男性上司の顔色から心情を読み取るだけではありません。さらに、読み取った心情に対して、時に不満や反抗心も含めて正直に自分がどう感じているかという感情を表に出すので、男性から見ると、もうお手上げという状況になるわけです。上司がきつく注意すると女性部下が一瞬眉間に縦じわを寄せるのもこの例です。

 こうした女性部下とうまく関係を築く方法があります。日ごろから女性部下とは、なるべくコミュニケーションを取るようにしましょう。一番良いのは、小さなことでも互いに共有して、「共感関係(ラポール)」を形成することです。一旦ラポールが形成されていれば、多少厳しい言葉でも大丈夫です。

 その女性部下が困ったとき、あるいはちょっと怒っているときなど、彼女の方から正直に「ご相談があります」とか「助けてください」とか言ってくるようになります。あるいは「それは緊急過ぎて今の自分の手持ち時間では無理です」といった発言をしてくるようになるでしょう。そうなれば急に理解しがたい行動や態度に出ることも減ります。

 女性部下は表情読み取り能力が高い、男性上司は低いという前提を頭に置いてください。その上で、早く共感関係をつくり率直な言葉でのやり取りができるようになれば、何を考えているのか分からないといった悩みはなくなります。

まとめ

言葉に出ていない部下の心を見抜く技術(15)
◆女性の部下とは共感関係(ラポール)を築きましょう。
◆細かな情報共有や気持ちの共有を口にすることが大切。何を考えているか分からなかった女性部下とも次第にコミュニケーションが取りやすくなります。

※本記事は、2017年に書籍として発刊されたものです

執筆=佐藤 綾子

パフォーマンス心理学博士。1969年信州大学教育学部卒業。ニューヨーク大学大学院パフォーマンス研究学科修士課程修了。上智大学大学院博士後期課程満期修了。日本大学藝術学部教授を経て、2017年よりハリウッド大学院大学教授。国際パフォーマンス研究所代表、(一社)パフォーマンス教育協会理事長、「佐藤綾子のパフォーマンス学講座R」主宰。自己表現研究の第一人者として、首相経験者を含む54名の国会議員や累計4万人のビジネスリーダーやエグゼクティブのスピーチコンサルタントとして信頼あり。「自分を伝える自己表現」をテーマにした著書は191冊、累計321万部。

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