ビジネスWi-Fiで会社改造(第44回)
ビジネスWi-Fiで"学び"が進化する
顧問先2200社を抱える会計事務所を率いる公認会計士、古田土満氏が語る小さな企業の経営のコツ。前回の第25回は、朝礼について解説しました。これらは「会社の躾け方」のノウハウですが、今回からは、一転、社長の仕事について説明します。古田土氏は、社長は、商品・サービスについての方向性に関する戦略を立案することが一番重要な仕事なのだと説きます。
会社をしっかり躾(しつ)けたとしましょう。全社員はしっかり同じ方向を向いています。その中で、社長がすべきことは何だと思いますか?
経営コンサルタントの一倉定先生は、「社長の仕事は高収益型の事業構造をつくることだ」(『一倉定の経営学 経営計画・資金運用』、日本経営合理化協会出版局)とおっしゃっています。古田土会計では、社長の仕事は、「高収益型の事業構造をつくり、社員と家族を幸せにすること」と定義しています。
高収益型とは、毎年高額の経常利益を出し続けられる会社ということです。どうしたら経常利益を出し続けられるかというと、販売ではなく、商品・サービスで差異化することです。仮に、販売力で差別化することができても、1〜3年ですぐにまねされてしまいます。高収益力は長く続きません。一方、商品、サービスで差異化できれば、5〜10年、あるいは20年と長期にわたって高収益力を維持できます。他者がまねしづらいからです。
では誰が商品、サービスを開発するかといえば、中小企業では社長です。社長の仕事は、高収益の商品、サービスを開発することです。それ以外の仕事は役員でも、幹部でもできます。ただし、会社に良い商品、サービスが現在ない場合は、社長は先頭に立って営業をして、売り上げと粗利益をアップすべきです。
社長が戦略としての商品、サービスの選択を誤れば、また、会社の方向性の選択を誤れば、いかに社員が優秀でモチベーションが高くても会社は潰れます。
中小企業の社長は、「そんなに簡単に新事業や新商品・サービスは見つかれば苦労しないよ」と言います。しかし、それは本当に誰にも負けない努力をした後の言葉でしょうか?土曜も休日も、一年中考えているのでしょうか?同業者で良い経営をしているところがあれば行って教えてもらい、自社に取り入れているのでしょうか?自社の弱みを嘆くのではなく、自社の強みを自覚し、それを商品化して、営業をしているのでしょうか?
社長が会社の内部にばかり目を向け、コスト削減や内部組織づくりで、給与規定や就業規則などに力を入れても、会社の業績は良くなりません。よく聞く話に「社員が頑張れば頑張っただけ、報われる会社にしたい」というのがあります。
私は、これはおかしいと思っています。社員が頑張っても頑張らなくても、利益の出る会社は利益が出ます。赤字の会社は赤字です。どこの会社でも、頑張っていない社員はいません。仕事があれば、みんな一生懸命働いてくれます。
もうかっている会社ともうかっていない会社の違いは、社長が正しい戦略を採っているかどうかです。社長の戦略の誤りは、戦術ではカバーできないのです。その戦略は、商品、サービスの方向性です。販売にあります。コストや内部体制ではありません。
古田土会計は2015年に、経済産業省の「頑張る中小企業300選」に選ばれました。2016年には、中小企業庁から依頼があり、私は「はばたく中小企業300社」の審査委員になりました。審査委員のほぼ全員が大学教授で、一般企業の審査委員は私だけでした。
この賞では、応募した会社の技術・製品またはサービス、商品の革新性・優位性やビジネスモデルの革新性・優位性が競われます。すなわち、伸びている会社は、技術、製品サービス、商品が優れているということです。戦略に革新性と優位性があるわけです。
中小企業の社長に、社長の仕事とは何か分かっていただきたいと思っています。司馬遼太郎氏の小説『花神』の中で、日本陸軍建設の祖といわれる大村益次郎は、「戦術のみ知って、戦略を知らざる者は、ついに国家をあやまつ」と言っています。中小企業の社長も、戦略と戦術の違いを知らなければなりません。戦術のみで仕事をしていては経営を誤り、会社を潰します。
※本記事は、2017年に書籍として発刊されたものです
執筆=古田土 満
法政大学を卒業後、公認会計士試験に合格。監査法人にて会計監査を経験して、1983年に古田土公認会計士・税理士事務所を設立。財務分析、市場分析、資金繰りに至るまで、徹底した分析ツールによって企業の体質改善を実現。中小企業経営者の信頼を得る。
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