ビジネスWi-Fiで会社改造(第44回)
ビジネスWi-Fiで"学び"が進化する
タテ見出しについて、もう少し詳しく見ておきましょう。タテ見出しは1本だけのこともありますが、トップ記事などでは複数に分かれています。この辺はネットの見出しと大きく異なります。
紙の新聞の場合、見出しは複数が一体となって記事の内容を要約しています。見出しを読めば、本文を読まなくても概要が理解できるようになっているともいえます。新聞では、見出しそれ自体が「読み物」なのです。
これは当たり前のようですが、新聞を紙で読む場合と、ネットで読む場合で大きく異なる点の1つです。
もちろんニュースサイトの見出しも、ある程度は記事の内容を伝えているのが普通です。ただ、ネットの場合はクリックが増えるほど広告収入が増える仕組みなので、「読者にクリックさせる」ために付けているという面があります。このため、見出しを読んだだけでは肝心なところが分からないよう、あえて内容を「小出し」にしているケースもあるのです。
みなさんも、見出しに興味をそそられてクリックしてみたものの、期待したような内容ではなくて、「だまされた」と思った経験があるのではないでしょうか。
こうしたネット記事のテクニックを「釣り見出し」といいます。紙の新聞では本文と中身が一致していない見出しは「カラ見出し」と呼ばれ、原則として付けてはいけないことになっています。記事を書き直したときに見出しの側を修正するのを忘れて起きる「ミス」なのです。
こうした紙とネットの違いは、最初に説明した「重要度の格付け」にもあります。そもそもネットの見出しには、こうした役割はありません。紙面から転載された記事であっても、「これはベタ」「これは3段」といったランク付けは分からなくなってしまいます。
代わりにあるのが「よく読まれた記事ランキング」です。ネットの場合、「記事の格付け」は新聞社の判断ではなく、読者による一種の投票で決められているといえるでしょう。サイトのトップに載せる記事も、「ネットで読まれそうな記事」を選ぶ傾向があります。
このため、新聞の紙面では1面のトップ記事なのに、同じ新聞社が運営するニュースサイトでは目立たない、というケースは少なくありません。同じ新聞社の同じ記事でも、紙面で読むのとネットで読むのとでは、こうした違いがあるのです。
執筆=松林 薫
1973年、広島市生まれ。ジャーナリスト。京都大学経済学部、同大学院経済学研究科修了。1999年、日本経済新聞社入社。東京と大阪の経済部で、金融・証券、年金、少子化問題、エネルギー、財界などを担当。経済解説部で「経済教室」や「やさしい経済学」の編集も手がける。2014年に退社。11月に株式会社報道イノベーション研究所を設立。著書に『新聞の正しい読み方』(NTT出版)『迷わず書ける記者式文章術』(慶応義塾大学出版会)。
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情報のプロはこう読む!新聞の正しい読み方