ビジネスWi-Fiで会社改造(第44回)
ビジネスWi-Fiで"学び"が進化する
ここ数年、ビジネスパーソンの大きな関心事となっている政策がある。それが「働き方改革」だ。働き方改革とは、2015年に安倍首相が発表した「一億総活躍社会」を実現させるための取り組みのこと。多様な人材が自分の力を発揮し、誰もが生きがいを持って活躍できる全員参加型社会の実現をめざしている。
こうした取り組みが生まれた背景には、超高齢化社会による深刻な労働力不足がある。不足する働き手を補うには、さまざまな人の社会参加を促す環境整備が欠かせない。
多様な人材が社会参加・活躍するには、そのニーズに合うように働き方を見直す必要がある。例えば未就学児を育てている世帯や、家族の介護などで通勤時間の確保が難しい世帯には在宅勤務を許可するなど、ライフスタイルに即して各人が最も活躍できるように、働く環境そのものを改革するわけだ。
一方で、生産性の向上も必要だ。2017年12月に政府が発表した「新しい経済政策パッケージ」では、2020年までの3年間を「生産性革命・集中投資期間」とし、年2%の生産性向上という目標を掲げている。労働人口が減少する中、これまでと同じ仕事のやり方では経済成長はおぼつかない。生産性の向上を抜きにして今後のビジネスは考えられないのだ。
戦後、日本が大きな経済成長を遂げた要因の1つに、マニュアル化による生産性向上がある。大量消費、大量生産の時代には、高品質な製品を大量かつ迅速に製造することが求められた。
しかし時代は変化し、今は大量生産よりも「付加価値の高い新しいサービスをどう開発するか」という考え方にシフトしつつある。マニュアル化された定型業務ではなく、企画や発想の創造性が価値を生み出す時代になった。
だが、長年マニュアル化を進めてきた企業は、逆にそれがさらなる生産性の向上を阻害している可能性もある。また、マニュアルそのものの管理・運用が大きな負担となっている場合もあるのではないだろうか。
実際、「経費精算や有給休暇の申請、業務システムの操作などの業務について、マニュアルを探したり、経理部や総務部に問い合わせたりして、解決までに多くの時間を費やした」という経験は誰しもあるだろう。
問い合わせを受ける経理部や総務部、情報システム部にしても、本来なら会計データの分析やオフィス環境の課題解決、ビジネスに直結するIT活用に取り組むべきところではあるが、ひっきりなしに来る問い合わせ対応に時間を取られてしまう。
こういった状況が、問い合わせをする側、される側双方の生産性向上を妨げる1つの要因となっている可能性がある。解決するためには、いくつかの手段が考えられる。
1つ目は、業務プロセスをより簡易化し、マニュアルがなくても、多くの人が理解しやすく、使いやすいものにしてしまうこと。これにより問い合わせなど付帯作業の削減効果は期待できる。しかし、社内の業務プロセスを見直し、浸透させることには多くの労力と時間を要する場合が多い。
2つ目は、社内FAQ(問い合わせ内容と回答の一覧化)を充実させること。FAQ自体の管理が煩雑になるという欠点はあるが、問い合わせ件数を減らすには有効な策の1つだ。
こういった解決策をさらに効率化させるものとして注目されているのが、ITツールだ。
例えば、業務への問い合わせを、AIチャットボットで自動化することなどが考えられる。チャットボットとは、テキストによる問い合わせに対して自動応答のメッセージを返すプログラムのこと。今はAIを活用した高精度のチャットボットが実用化されている。FAQをAIチャットボットに覚え込ませて問い合わせ対応を自動化することができれば、問い合わせを受ける側の負荷が減り、問い合わせるほうも問い合わせ前にいろいろと調べたり探したりする手間を削減できる。結果、問い合わせにかかる時間を減らせる。すなわち、業務の効率化を実現することで、双方の生産性向上に寄与することが可能となるのではないだろうか。
組織というルールの中で仕事をする以上、実施頻度は高くないが、決まった方法やシステムで行わなければならない業務は避けられない。ただ、AIチャットボットのようなITツールを有効活用すれば、そういった業務に関わる人の時間を大幅に削減し、生産性を高めていくことは難しくないはずだ。
執筆=岩崎 史絵
【MT】
働き方再考