ビジネスWi-Fiで会社改造(第44回)
ビジネスWi-Fiで"学び"が進化する
ライブドアの元社長・堀江貴文氏が関わる北海道のベンチャー企業「インターステラテクノロジズ」は、7月30日、自社開発した全長10メートルの観測ロケット「MOMO」初号機の打ち上げ実験を行った。
残念ながら、打ち上げ直後に問題が発生してエンジンを緊急停止。打ち上げは失敗に終わった。しかし、日本初となる民間単独によるロケット開発の意義は大きい。民間ロケットの宇宙到達は次回以降の打ち上げに持ち越されたが、日本の宇宙ビジネスの加速が期待される。
インターステラテクノロジズは、ライブドアの元社長・堀江貴文氏が最大出資者として関与する北海道のベンチャー企業。もともとは堀江氏が仲間とロケット造りに挑んでいたが、事業化の見通しを得て株式会社として独立した。宇宙ベンチャーといえば先進的に聞こえるが、宇宙が好きでロケットが好きな十数人が集まる小さな“町工場レベル”の規模だ。だが、メンバーの抱く夢は壮大だ。
今回、北海道大樹町で行われた小型ロケット「MOMO」の打ち上げは、100キロメートルを超える最高高度に到達して宇宙空間に入る実験が目的。成功すれば日本初の民間単独によるロケットの宇宙空間到達になるはずだった。ところが、発射直後にロケットからの通信が途絶え、エンジンを緊急停止。打ち上げは失敗に終わった。
堀江氏は「無事ロケットは離床して飛んで行きましたが、残念ながら宇宙までは到達できませんでした。しかしながら貴重なデータが取れたのでリベンジして宇宙まで飛ばす日も近いです」とTwitterに投稿。再び宇宙をめざすと宣言した。
日本では、宇宙開発への民間の参入を促進する目的で、昨年11月に「宇宙活動法」を成立させた。人工衛星の打ち上げを許可制にするとともに、損害賠償保険への加入の義務付けや、保険を上回る損害に対する政府の補償などを定めた法律だ。これにより、宇宙開発の門戸を民間に開いたといえる。
インターステラテクノロジズのWebページ
民間による宇宙開発では、日本は世界に大きく後れを取ってきた。米国では30年前に法律が整備され、今では大型ロケットを打ち上げるまでに成長した。有名なのは起業家のイーロン・マスクが率いる宇宙開発ベンチャー、スペース・エクスプロレーション・テクノロジーズ(スペースX)だ。
欧米諸国では、ロケット・宇宙船の開発・打ち上げといった宇宙輸送や宇宙・惑星探索はもとより、小型衛星を打ち上げて位置情報や交通状況などのデータ提供や、衛星ベースの宇宙インターネット、宇宙空間で無重力状態を体験するツアーや宇宙旅行など、多様な宇宙開発ベンチャーがビジネスを展開する。
これに比べ、日本の民間、宇宙ビジネスはスタートしたばかり。ただ、今後の日本経済の発展分野とみられ、参入企業の増加が期待される。実際、8月にキヤノン電子、IHIエアロスペース、清水建設、日本政策投資銀行の4社は新会社「新世代小型ロケット開発企画」を設立している。
再び、インターステラテクノロジズの取り組みをみていこう。ロケットは、液体の燃料を燃えやすくするために霧状に吹き出して火を付けて燃やす、というシンプルな仕組みでできている。故に、エンジンの燃焼効率の向上は、ロケットの小型化とコストダウンにダイレクトにつながる。インターステラテクノロジズのサイトによれば、液体燃料を霧状に吹き出すインジェクタは、東京大学との共同研究で、独自に性能向上を実現しているという。
MOMOの燃料は、調達が容易で使い勝手がよく、実用化時のコストメリットに優れたエタノールと液体酸素だ。メーンエンジンは「ピントル型」という、ヘリウムガスの圧力で燃料のエタノールと酸化剤の液体酸素を燃焼室に送り込む形式を採用、安価で実績のあるシステムだという。
MOMOの素材は、調達がしやすい、加工がしやすい、安価である、を優先に選定。加工はほぼ自社工場で、どこの町工場にでもある機材を使って加工している。特別な誰かが、特別な機械を使って作る部品ではなく、誰もが簡単に作れる部品を使う。それが、「誰もが気軽に宇宙に行ける未来」につながる。
今後、衛星の打ち上げ需要は急激に増加すると見られる。例えば、最近話題の自動車の自動運転実現には高精度の測位システムが不可欠で、そのためには衛星利用測位システム(GPS)の構築が必要になる、といった具合だ。
大小さまざまな衛星打ち上げのため、インターステラテクノロジズでは世界一低価格でコンパクトなロケット造りをめざす。同社では、衛星をよりリーズナブルに宇宙空間へ運ぶことをミッションとして掲げる。“ロケット界のスーパーカブ”の開発に取り組む。
自動運転の例でも分かるように、衛星による情報通信は、今後さらに拡大する見通しだ。そうした意味において、宇宙開発は情報通信発展の基盤づくりといえる。その取り組みがローコスト化するのは、情報通信分野に好影響を及ぼすだろう。まだ産声を上げたばかりの日本の民間宇宙ビジネスが、その一翼を担えるのか注目だ。
執筆=青木 恵美
長野県松本市在住。独学で始めたDTPがきっかけでIT関連の執筆を始める。書籍は「Windows手取り足取りトラブル解決」「自分流ブログ入門」など数十冊。Web媒体はBiz Clip、日経XTECHなど。XTECHの「信州ITラプソディ」は、10年以上にわたって長期連載された人気コラム(バックナンバーあり)。紙媒体は日経PC21、日経パソコン、日本経済新聞など。現在は、日経PC21「青木恵美のIT生活羅針盤」、Biz Clip「IT時事ネタキーワード これが気になる!」「知って得する!話題のトレンドワード」を好評連載中。
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