雑談力を強くする時事ネタ・キーワード(第21回) 人ごとではない「カーボンニュートラル」

時事潮流

公開日:2022.03.30

 近年、環境問題への意識が世界的に高まりを見せています。そうした話題の中でもよく耳にするのが、「カーボンニュートラル」という言葉です。

 そもそも、このカーボンニュートラルとはいったい何でしょう?

 カーボンニュートラルとは、「温室効果ガスの排出量を全体としてゼロにする」こと。二酸化炭素(CO2)を中心とする温室効果ガスの排出が、地球の温暖化を進めていると指摘されています。そこで地球温暖化を食い止めるため、温室効果ガスの排出量をゼロにする取り組みとして進められているのがカーボンニュートラルです。

カーボンニュートラルのポイントは「全体としてゼロ」

 ポイントは、「全体としてゼロにする」。温室効果ガスは、石炭、石油、天然ガスといった化石燃料を燃焼させると発生します。経済活動を行う限り、温室効果ガスの排出を完全にゼロにするのは現実的には困難です。そこで、再生可能エネルギーへの転換、二酸化炭素を吸収する樹木の植林、二酸化炭素を地中に封じ込める二酸化炭素貯留(CCS)などを行い、排出する量から削減する量を差し引いて全体としてゼロにするのを目標としています。

 2021年11月時点で140カ国以上が2050年までのカーボンニュートラルを表明し、カーボンニュートラルは世界的な課題になっています。カーボンニュートラルの実現には政府だけでなく企業の取り組みが欠かせないため、世界の企業がこの課題に挑んでいます。

 2015年9月、国連で「持続可能な開発目標(SDGs)」が採択されました。SDGsには17のゴールと169のターゲットが設定され、「持続可能(サステナブル)な世界を実現する」ことがうたわれています。持続可能な世界を実現するには、温室効果ガスの削減が欠かせません。

 また、SDGsの流れの中でESG投資ということがいわれるようになりました。ESGは、「環境(Environment)」「社会(Social)」「企業統治(Governance)」の頭文字。これまで、企業への投資は売上高や利益、保有財産といった財務情報を重視して行われてきました。しかし、環境問題などの社会課題に取り組む姿勢を投資家が重く見るようになり、企業経営・ファイナンスの観点からもカーボンニュートラルへの取り組みが重要になっています。

カーボンニュートラルに取り組み例。三菱重工、東急不動産、NTTなど

 カーボンニュートラルが世界的な課題となっている中、日本の各企業も取り組みを進めています。

 例えば三菱重工グループは、2030年までにグループ内のCO2排出を50%(2014年比)、バリューチェーン全体での排出を50%(2019年比)削減し、2040年にはグループ内、バリューチェーン全体の両方でカーボンニュートラルを実現する「2040年Net Zero」ミッションを進めています。

 その取り組みの1つが、ゴミ焼却設備からのCO2分離です。ゴミの焼却により発生するCO2を排ガスから分離・回収し、循環利用するプロジェクトを横浜市、東京ガスと協働して行っています。

 東急不動産は、不動産業で初めて再生可能エネルギーに関する国際的イニシアチブ「RE100」に加盟。2025年度までに、事業活動で消費する電力の100%再生可能エネルギー化を進めています。また、北海道松前町と「再エネによる地域活性化」に関する協定を締結し、自社の風力発電所を活用して松前町の電力を100%再生可能エネルギーにする試みを進めるなど、街づくりと連動した取り組みも行っています。

 NTTグループは、革新的技術を取り入れたネットワーク・情報処理基盤である「IOWN構想」で電力消費量を削減し、2040年までに温室効果ガスを45%削減。再生可能エネルギーの利用拡大による45%、省エネによる10%と合わせ、2040年にグループでカーボンニュートラルを実現する目標を掲げています。

 またNTT西日本グループは、食品関連事業者が廃棄物として処分していた食品残渣を完熟堆肥・土壌改良材に再生させる「地域食品資源循環ソリューション」を提供。輸送や焼却にかかるエネルギーを減らし、従来の廃棄処分と比べてCO2排出量を約52%削減するなど、情報通信の分野以外でもカーボンニュートラル実現に向けて取り組んでいるのが目を引きます。

中小企業にもカーボンニュートラルに取り組むメリットあり

 カーボンニュートラルは世界的な潮流で、多くの大企業が取り組んでいます。ですが、カーボンニュートラルが求められるのは大企業だけではなく、中小企業にも広がりつつあります。そこで、カーボンニュートラルに取り組むメリットを5つ紹介します。

(1)優位性の構築
近年、環境への意識の高い企業を中心に、サプライヤーに対して温室効果ガスの排出量削減を求める傾向が強まっています。カーボンニュートラルに取り組むと、こうした企業への訴求力が高まり、売り上げ・受注の拡大につながることが期待されます。

(2)光熱費・燃料費の削減
カーボンニュートラルに向けてエネルギー消費や設備の見直しを行えば、光熱費・燃料費を抑えられます。

(3)知名度・認知度の向上
今、社会全体でカーボンニュートラルへの関心が高まっています。温室効果ガスの排出量を大幅に削減したり、再生可能エネルギーの導入を先駆的に進めたりする企業は、メディアに取り上げられたり、国・自治体からの表彰対象となったりするなど、知名度・認知度の向上につながり得ます。

(4)社員のモチベーション向上や人材獲得力の強化
社員のモチベーション向上や人材獲得力の強化です。自社がカーボンニュートラルに積極的に取り組んでいる意識が、社員のモチベーションとなります。そうした取り組みは共感・評価を呼び、人材獲得力のアップにもつながります。

(5)資金調達への効果
資金調達への効果です。金融機関は、融資先の選定基準に環境への取り組みを加味するようになっています。温室効果ガス排出量の削減状況に応じて貸出金利が変動するローンも現れるなど、資金調達の上でカーボンニュートラルへの取り組みは欠かせないものになりつつあります。

 社会からの要請というだけでなく、経営上の観点からもカーボンニュートラルへの取り組みは重要性を増しています。「意識の高い上場企業の話では?」「CO2を排出する業種ではないから関係ない」と思っているなら、その考えは改めたほうがよいでしょう。気付けば、周りの企業に取り残された状況になっているかもしれません。すぐにでも企業活動の中でカーボンニュートラル実現に向けた取り組みや情報発信をすべきフェーズにきている、と認識しておきましょう。

執筆=山本 貴也

出版社勤務を経て、フリーランスの編集者・ライターとして活動。投資、ビジネス分野を中心に書籍・雑誌・WEBの編集・執筆を手掛け、「日経マネー」「ロイター.co.jp」などのコンテンツ制作に携わる。書籍はビジネス関連を中心に50冊以上を編集、執筆。

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