雑談力を強くする時事ネタ・キーワード(第8回) 地方企業に追い風、国際展開支援の新組織、6月発足

地域活性化 雑学

公開日:2016.07.13

 地方には、独自の高い技術で世界的に活躍する中堅・中小企業が少なくない。

 山形県鶴岡市のワテックは超小型カメラのパイオニア的存在で、同社の製品はNASA、ルーヴル美術館、バッキンガム宮殿にも納められている。石川県白山市のオリエンタルチエン工業は、世界最小の産業用チェーンを造る技術を持った会社。内視鏡用チェーンでは、世界70%のシェアを持つ。広島県呉市のベンダ工業も、自動車のモーター動力をクランクシャフトに伝えるリングギアの製造で世界一のシェアを持つ会社だ。

 こうしたグローバルな存在感を見せる企業がある一方で、優れた技術を持ちながらも、需要をつかめず事業化できていなかったり、販路が開拓できなかったりといった理由でグローバル展開ができてない中堅・中小企業が地方にはたくさんある。

 2016年6月9日に経済産業省が発足させた「グローバル・ネットワーク協議会」は、このような課題を持った企業を支援し、地域経済をけん引する中核企業に育てることをめざすものとして注目を集めている。

ドイツ型、米国型ではなく日本型の支援を行う

 協議会は、世界のイノベーションセンターとして新産業群を創出するとすることを目的としており、政府の新経済戦略の一環に位置づけられるものだ。

 政府の「地域しごと創生会議」では、日本でイノベーションが育たない原因を「主体間の連携不足」に見ている。例えば、ドイツでは公的研究機関を中心に企業・大学間で資金や人材が共有されており、それに商工会議所などによる海外展開支援が加わることで、世界市場リードする企業が生まれている。

 米国では、大学に技術や資金、人材が集まる仕組みができている。大学の最先端技術を中心にベンチャー企業や豊富な支援ビジネス(ベンチャーキャピタルなど)が連携。プロの支援でベンチャーが世界市場で成長するフローができている。これが、地域しごと創生会議の分析だ。

 こうした現状に対し、新たに生まれたグローバル・ネットワーク協議会ではスタンドアローンになりがちな地方企業の連携を促進。ドイツ型でもアメリカ型でもない、新しい日本版イノベーション・エコシステムの構築を進める。

 具体的には、協議会が中心となって企業と内閣官房、文部科学省などの関係省庁をつなぎ、きめ細かに支援する体制を構築。JETRO(日本貿易振興機構)、中小機構(中小企業基盤整備機構)、AIST(産業技術総合研究所)、JST(科学技術振興機構)といった省庁以外の関係機関のリソースも総動員し、さまざまなプロジェクトからの要求に応えていく。

 金融機関や人材派遣会社などと連携し、利用可能なプロフェッショナルサービスを紹介。 プロジェクトごとに進捗管理を行い、事業化に至るまで継続的にサポートするという。

プロジェクトごとにコーディネーターを派遣

 協議会の目玉となっているのが25名のグローバル・コーディネーターだ。名を連ねるのは、シリコンバレーのベンチャーキャピタル、スカイライン・ベンチャーズの金子恭規氏、ドイツの経営戦略コンサルティング、ローランド・ベルガーの森健氏、エバーノートジャパン会長の外村仁氏など、世界を舞台に活躍するトップランナーたち。

 協議会では、当該案件に必要とされる知見を持つグローバル・コーディネーターをプロジェクトごとに派遣。コーディネーターが自らの豊富なノウハウ、知識、経験を元に、地域企業の優れた技術を世界市場につなぐためのサポートを行う。

 協議会の初年度は、200事業の採択がすでに決定。今後5年間で1000件を事業化する計画だ。

 過疎化、都市部との所得格差などから、地方創生の必要性がうたわれて久しい。また、日本のモノづくりの競争力の低下もさまざまなところで言いはやされている。地方の活性化には“働く場”を増やすことが不可欠。地方で埋もれたままになっている技術を事業化し、グローバルに展開していくことで地方の活性化、そしてモノづくり日本再生の起爆剤となるか。グローバル・ネットワーク協議会に寄せられる期待は大きい。

執筆=山本 貴也

出版社勤務を経て、フリーランスの編集者・ライターとして活動。投資、ビジネス分野を中心に書籍・雑誌・WEBの編集・執筆を手掛け、「日経マネー」「ロイター.co.jp」などのコンテンツ制作に携わる。書籍はビジネス関連を中心に50冊以上を編集、執筆。

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