ビジネスWi-Fiで会社改造(第44回)
ビジネスWi-Fiで"学び"が進化する
SNSの普及でマスメディアの地位が相対的に低下しているように、消費行動にも大きな変化が見られる。こうした多様化する顧客ニーズを捉えるための顧客分析の必要性が急速に高まっている。そこで注目されているのが、「VOC」だ。ここではVOCをどう実践するのか、具体例を交えながら考えていきたい。
VOCとは、Voice of Customerの略で、日本語では「顧客の声」だ。顧客の声に耳を傾け、マーケティングや製品開発、サービス開発に生かしていくことをさす。企業活動にとって基本とも言える活動だが、消費者の好みが多様化、短命化する中で、その重要性はますます高まっている。
VOC自体はネットの普及によって変化している。これまでコールセンターや営業担当者、アフターサービスなどに寄せられた、製品の購入者からのサービスの意見やクレームなどがメインだった。しかし今のVOCは企業に直接寄せられるものだけではない。個人のSNSやブログの記事、消費者コミュニティーなどもその対象に含まれる。そして、その活用のスピードも変わってきている。特定の商品のファンになって購入し続けるのではなく、SNSなどで話題になった商品を次々と購入していくスタイルが話題になるように、今の消費者の変化するスピードはどんどん加速し、VOC活動のPDCAサイクル自体にもスピードアップが求められている。
VOC活動はいくつかのステップから構成される。それは、「VOCを収集すること」「VOCをデータとして捉えて分析すること」「分析結果を考察してアクションプランに落とし込むこと」「アクションプランを実行する」ことだ。アクションプランの領域は、マーケティング、製品、サービス、アフターフローなど多岐にわたる。
VOC活動を支える体制が確立され、スピーディーなPDCAサイクルが実行できればメリットは大きい。顧客のニーズや不満がわかり、それに対応した製品やサービスが継続的に提供できるようになる。当然、顧客の満足度が向上し、業績も上がっていくはずだ。
実際にVOCによって業績を向上させた事例は多い。いくつか紹介していきたい。まず、あるクレジットカード会社では、コールセンターに寄せられた情報から仮説を立てて分析し、顧客の潜在的なニーズを把握して新商品開発に反映させた。次に、あるコンビニエンスチェーンでは、コールセンターに寄せられた不満体験から業務フローを見直し、不満によって起きていた商品のキャンセル率を低下させることに成功し、顧客ロイヤルティーを向上させた。
そして、ある食品メーカーでは、特定ブランドのコミュニティーサイトを運営。キャッチコピーの作成や商品キャンペーンを募集する企画を実施し、顧客からアイデアを募る手法でコミュニティーを盛り上げ、ロイヤルカスタマー作りに結びつけている。この他にも、ある通販メーカーでは、売り上げが伸び悩んでいる商品についてのVOCを分析。購入行動を阻害するキーワードを見つけ出し、そこから仮説を立てて顧客の不安を解消する施策を打ち出し、売り上げ回復を実現した。
VOCを収集する方法としては、コールセンターのやり取り、録音機能のあるビジネスフォンでのクレーム対応、対面によるインタビューなど音声ベースでの収集、メールや店頭でのアンケート、チャットボットなどのテキストベースのもの、ECサイトでのログなどのトランザクションベースのものがある。
以前は音声ベースのものを活用するのは大変だったが、音声認識技術が向上したことでテキスト化が容易になり、SNSやブログのデータもソーシャルリスニングツールでテキスト化できる。そこにテキストマイニングツールを使うことで、膨大なデータから素早くキーワードや傾向を抽出することが可能だ。さらに期待されるのが生成AIの活用だ。要約は生成AIの得意分野でもある。今後VOCのための便利なツールは次々と登場してくるだろう。常に情報を収集することでVOCへのハードルを下げ、マーケティングや製品企画、サービス開発に生かしていくことをおすすめしたい。
※掲載している情報は、記事執筆時点のものです
執筆=高橋 秀典
【MT】
ビジネスを加速させるワークスタイル
審査 24-S1007