ビジネスに生かす中国古典の言葉(第4回) 高い志を掲げるとともに、絶え間ない努力を続ける

歴史・名言

公開日:2015.09.04

「功の崇きはこれ志、業の広きはこれ勤」(『書経』)

 IT業界の雄・ソフトバンクの孫正義社長は先ごろ、元米グーグル最高幹部のアローラ氏を後継者にする意向を明らかにしました。米スプリント買収で米国に進出、さらに敏腕経営者を迎えてグローバル市場へ果敢に挑むようです。孫社長が起業するきっかけは子供の頃に読んだ『竜馬がゆく』(司馬遼太郎)だったそうです。坂本龍馬の生き方から志の大切さを学び、実行してきたと語っています。

 もちろん、中国古典にも志の大切さについての記述は数多くあります。儒教の経典である四書五経の一つ、『書経(しょきょう)』には、こんな言葉があります。

こうたかきはこれこころざしぎょうひろきはこれつとめ

(訳)高い功績は志があってこそ得られるものであり、大きな業績は勤勉であってこそもたらされる。

 大きなことを成すには、まずしっかりした志がなければなりません。これは個人の人生においても、ビジネスにおいても、ビジョンや目標がなければならないと教えています。古今東西、いわゆる大事を成した人物の多くは大きく明確な志を抱いていました。

 孫社長は15歳で渡米し米国の大学を卒業後、帰国してから会社を興すまで約1年半考え続けたそうです。「自分にとっての事を成す、それは何だろうか」と。そして得た結論は「デジタル情報革命で知恵と知識の共有を推進し、人類に貢献する」でした。2011年に行われた講演で孫社長はこう振り返っています。

 「デジタル情報革命を通じて、多くの世の中の人々に、世界中の人々に、知恵と知識を共有できるような、そういう何かでっかいネットワーク、プラットフォーム、そういうサービス、そういう事業を作って、人々の知恵と知識がすごい大きなデータベース、ネットワーク、そういうものに収められて、それをみんなで共有することができて、人々がより幸せになれる。より幸福になれる。より仕事の生産性が上がる。楽しくなる。病気の人が助けられる。そういうような仕事、それであれば人生を賭けるにふさわしい、というふうに思ったわけですね」

志を現実のものにするには、努力の継続が不可欠

 こうした志を明確にした孫社長は、1981年、福岡の小さな町で日本ソフトバンクを設立しました。資本金は1000万円。アルバイト2人を雇った孫社長は小さな事務所でミカン箱の上に立ち、彼らを前にその志を高らかに歌い上げたのです。「世界中の人々に情報革命を提供するんだ。30年後のわが社を見よ!」。その熱い“演説”は1時間に及んだといいます。

 その後のソフトバンクの成長はご存じの通りです。孫社長が会社を設立するに当たり高い志を掲げたことは、その後の成長と無縁であるはずはありません。

 ただ、『書経』では、「功の崇きはこれ志」の後に「業の広きはこれ勤」と続けているのを忘れるべきではありません。大きな業績は、勤勉であってこそもたらされるのです。高い目標を現実のものにするには不断の努力が必要です。

 最初に高い志を掲げても何の実績もないわけですから、ホラ話に受け取られてしまう場合も多いでしょう。実際、孫社長の演説を聴いた2人のアルバイトも、1週間で辞めてしまったといいます。

 しかしその後、孫社長の志を現実のものとしたのは、ビジネスにかけ続けた膨大なエネルギーです。孫社長のハードワークぶりは有名です。睡眠時間は1日、3~5時間だといいます。高い志を実現するのかホラ話で終わらせるのか。孫社長の例をみるまでもなく努力の継続にかかっています。

【T】

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