ビジネスWi-Fiで会社改造(第44回)
ビジネスWi-Fiで"学び"が進化する
「天のまさに大任をこの人に降さんとするや、必ずまずその心志を苦しめ、その筋骨を労し、その体膚を餓えしめ、その身を空乏にし、行いにはその為すところを仏乱す」(『孟子』)
名経営者には、倒産や病など幾多もの逆境や試練を乗り越えて事業にまい進した人が少なくありません。いやむしろ、それらをバネにしたからこそ、名経営者と呼ばれるほどの成功を収めることができたのだといえるでしょう。
ビジネスにおいて、また人生においても予想もしないような大きな困難に遭遇することがあります。そんなとき不遇や不運を嘆き、前に進むのを諦めてしまいがちです。しかし、そんな壁を乗り越える意欲を与えてくれる言葉を紹介します。大きな壁を前にして、落ち込む我々を勇気づける言葉が、『論語』『中庸』『大学』と並ぶ四書の一つ、儒教の必読書とされた『孟子』にあります。
「天のまさに大任をこの人に降さんとするや、必ずまずその心志を苦しめ、その筋骨を労し、その体膚を餓えしめ、その身を空乏にし、行いにはその為すところを仏乱す。心を動かし、性を忍び、そのよくせざるところを曽益するゆえんなり」
(訳)天が人に重大な任務を与えようとするときには、必ずまずその人の精神を苦しめ、その筋骨を疲れさせ、その肉体を飢え苦しませ、その行動を失敗ばかりさせて、空回りするような大苦境に陥らせるものである。それは、天がその人のこころを鍛え、忍耐力を増大させ、大任を負わせるに足る人物に育てようとしているからである。
天が人に大きな仕事を任せる場合には、必ずその人を奈落の底に突き落として厳しい試練を与える。それは大きな仕事を成し遂げる人物に育てようとしているからだ。こう考えればくじけそうな困難にぶつかったときでも、それは次のステップへの試練であり、逆に成長のチャンスなのだと前向きに捉えられるでしょう。
世界初のインスタントラーメン「チキンラーメン」を開発した日清食品創業者の安藤百福さんも、何度もの苦難を乗り越えて成功を収めた名経営者の一人です。
幼い頃に両親を亡くした安藤さんは、商売を営む祖父母のもとで育ちました。独立心旺盛な安藤さんは、22歳のときメリヤス販売会社を立ち上げ大成功。その後、炭焼き事業やバラック住宅の製造、学校の設立などさまざまな事業に乗り出します。しかしそうした事業は、大阪大空襲によってすべての事務所や工場を焼失し頓挫します。
戦後、安藤さんは製塩事業などを手がけて復活を果たします。ところが1957年、理事長を務めていた信用組合が破綻。弁済のため全個人資産を失い、再びドン底に突き落とされてしまうのです。
このとき安藤さんは、「失ったのは財産だけ。その分、経験が血や肉となって身についた」と前向きに考え、自らを奮い立たせます。そしてある光景を思い出したそうです。終戦直後の混乱期、戦地から多くの人が帰還し、人々は争うように食べ物を探し求めていました。大阪駅近くの屋台では、一杯のラーメンを食べるために長蛇の列ができたのです。この光景を思い出し、日本人は無類の麺好きであると考えた安藤さんは、即席メンの開発に取り組みました。
自宅裏に小屋を作り、“お湯があれば家庭ですぐ食べられるラーメン”の開発に没頭。試行錯誤の結果、「チキンラーメン」を生み出しました。安藤さんは「事業と財産を失い裸一貫、絶対の窮地からの出発であったからこそ、並ではない潜在能力が発揮できたのではなかろうか。逆説的に言えば、私に事業失敗がなければこれほどの充実した瞬間は持てなかっただろうし、即席メンを生み出すエネルギーも生まれなかっただろう」と振り返っています。
天が人に大きな仕事を任せる場合には、必ずその人を奈落の底に突き落として厳しい試練を与える。しかもそれは、大きな仕事を成し遂げる人物に育てようとしているから。言葉を換えれば、逆境や試練は乗り越えられる人にしか訪れないとも考えられます。大きな困難にぶつかった際こう思えば、どんな苦しみも乗り越えるパワーが湧いてくるはずです。
【T】
ビジネスに生かす中国古典の言葉