ビジネスWi-Fiで会社改造(第44回)
ビジネスWi-Fiで"学び"が進化する
お金をかけずにSNSによる情報発信を活用して売り上げを伸ばす方法を紹介する本連載。第3回の最後で現在は本物の商品だけが生き残っていく時代であると述べました。しかし、本物の商品だからといって売れるとは限りません。第4回はどのように誰が売り込むべきなのかを説明します。
前回説明したように、これからは本当にいい商品、いいサービスしか生き残れない。つまり、商品を売るためには、いい商品を作ることが絶対条件になるわけです。一方で、いい商品であっても、膨大な情報の中で埋もれやすいのも現実です。
いい商品、いいサービスで、きちんと売り上げを伸ばす。
いい商品、いいサービスを持っているのに、売り上げが伸びない。
両者の差を分けるのは「認知」です。中でも、クチコミの認知の力がどんどん強くなっています。では、現代のクチコミとは何かというと、そのほとんどがSNS、ということです。SNSによるクチコミを広めること。それがすなわち、今、企業が行うべきこと。言葉を変えれば、「PR」です。
私が、現代社会で「あらゆる会社が持つべきスキル」と考えるのが、PRの技術です。フリーランスや個人事業主が増えていくことを考えれば「あらゆる個人が持つべきスキル」と、言い換えてもいいでしょう。
ここでもう一度、PRの特徴を確認しておきましょう。広告は一方通行のプロモーションです。私がペンを作っているとしたら、「このペン、いいよ!」と不特定多数に訴えます。PRでは、それを自分以外の誰かに言ってもらいます。実際に使った誰かが「このペン、いいね!」と、応援してくれる(下図参照)。そんな声が集まりやすい環境を整えます。
かつてPRの仕事といえば、テレビ局や新聞社、出版社などに自社の商品、サービスなどを売り込むことでした。売り込む相手は、少数のマスコミ関係者に限られていました。しかし、SNS時代は、消費者1人のつぶやきが大きなヒットを生みます。つまり、売り込む価値のある相手が無数に存在します。だから、「SNS時代=PRの時代」なのです。
売り込む相手が激増したなんて、今のプロモーションは大変だなあ……。そんなふうに思った方は、考え方を改めてください。むしろ、PRの技が生きる場面がグッと増えたことは、企業にとってチャンス到来なのです。
高いお金を出した広告には、あまり効き目がなくなってきた。一方で、コスト0円から始められるPR活動には大きな可能性が広がっている。時代に敏感な企業はますます「SNSによるクチコミ=PR」に着目しているのです。
実績に負けず劣らず重要なのは、「誰がPRを担当するか」です。小さな会社ならば、社長自ら担当することが多く、会社が大きくなれば、PR担当者を置くことになるでしょう。いずれにせよ、PRを担当する人には、ふさわしい資質と基本的な心得というものがあります。
第一に、そのPR担当者が、心から自社の商品、サービスを理解し、愛して、魅力を熟知しているということ。担当者自身が商品に自信を持てなくて、その素晴らしさを伝えていくことができるはずがありません。
加えて、自己開示が得意な方、ミッションを語れる方が、PRに向きます。PRとはすなわち、人の心を動かすこと。人の心を動かして、ほかの人から、この人の会社を応援したい。一緒に取り組みたいと思ってもらえるようにすることです。そのような活動に必要不可欠なのが、自己開示とミッションです。つまり情熱を届けることができる方こそ、PR担当者に向いていると思います。
だから、PR担当者にはできるだけ自社の社員を任命してほしいと思います。自社の商品を愛し、そのミッションを語るのに向くのは、自社の社員です。PR会社を利用することはあまりお勧めしません。どうしてもPR会社を使う場合は、「会社」ではなく、「担当者」に注目してください。担当者が、一人の人として、自社のビジョンに共感してくれるかどうか、その商品を、そのサービスを、心から好いてくれる人かどうかを、慎重に見極めることが大事だと思います。
PR担当者に大切なことは、つっかえないで流ちょうに話せるとか、パワーポイントのプレゼン資料を作るのが上手だとか、そういうことではありません。情熱を持ってその商品のことを人に伝えられるか。そのために、自分の内面も開示できるか。それこそが一番大事になっていきます。経営者が自ら担当されるなら、自社への愛とビジョン、情熱が問われます。
今回の最後に第2回から4回を通じて、絶対に押さえておいていただきたいポイントをクイズ形式で質問します。
Q:SNSの普及で、商品の売り上げアップに、あまり効果がなくなったことは?
A 商品そのものの質が高いこと
B 商品の情報を大量に流すこと
C 商品に対する経営者の情熱
A:私の考える正解は「B 商品の情報を大量に流すこと」です。情報過剰な今、大量の情報を一方的に流してもダメ。クチコミが売り上げに最も貢献します。経営者が情熱を持って質の高い商品を提供するという基本が問われます。
執筆=笹木 郁乃
山形大学工学部卒業後、アイシン精機で研究開発に従事。その後寝具メーカーのエアウィーヴの第1号正社員として転職し、PRに注力。売上高を5年で1億円から115億円に伸ばす急成長に貢献。鍋メーカー・愛知ドビーでもメディア露出により注文殺到でお届けまで12カ月待ちに貢献。その後、2017年ikunoPRを設立、2019年LITAに社名変更。企業のPR支援のほか、経営者や個人事業主、広報担当者などにPRスキルを伝える「PR塾」も主催し、約1000名が長期講座で学ぶ。これまで5年間常に満員御礼開催。2021年7月に2冊目となる著書「SNS×メディアPR100の法則」(日本能率協会マネジメントセンター)を上梓。発売日即日重版。プライベートでは一児の母。
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