ゼロ円販促(第3回) 旧来のマーケティング手法はもう通用しない

顧客満足度向上 コミュニケーション販路拡大

公開日:2022.03.04

 お金をかけずにSNSによる情報発信を活用して売り上げを伸ばす方法を紹介する本連載。第3回は、近年のマーケティング手法の変化を解説して、なぜ、現在はSNSによる情報発信が必要なのかを説明します。

 前はよく使われていたけど、今では通用しなくなったマーケティング用語に、「AIDMA(アイドマ)」というのがあります。これは……

 【A】Attention(注目)
 【I】Interest(興味)
 【D】Desire(欲求)
 【M】Memory(記憶)
 【A】Action(購入)
 の頭文字です。

 まず、「笹木郁乃さんっていう人がいるんだ」とか「笹木さんはペンを売っているんだ」と知って、「注目」してもらうのが「Attention」。その次に、「笹木さんのペン、どういう機能があるんだろう」と「興味」を持ってもらうのが「Interest」。さらに「このペン、ちょっと欲しいな」と、「欲求」を持ってもらうのが「Desire」。そうこうするうちに、ペンのことが頭に残ります。こうして「記憶」してもらうのが「Memory」です。そして、実際に「購入」という行動に至るのが「Action」。

 これが一昔前まで、マーケティング業界の教科書的な考え方でした。ところが、今はこのAIDMAという理論が、どうも現状と合わなくなってきました。

 かつては、このAIDMAに基づく「セブンヒッツ理論」というものもありました。人は、同じ商品の情報に7回接すると、購入の確率が格段に上がる、ということです。このAIDMAとセブンヒッツ理論に基づいて、雑誌や交通広告、テレビなど、いろんなところで何回も広告を打ちましょうというのが、広告業界でかつてよく使われていたロジックだったのです。

 つまり、「自社商品の情報との接点をとにかく増やせば、記憶に残り、購入に至る」という理屈が通用していたのです。しかし、今では「特定商品の情報に何回接しようが、記憶に残らないものは残らない」ということになってしまいました。

「検索」―「購入」―「シェア」の流れ

そこで、新たに広告代理店やマーケティング業界でいわれているのが、「AISAS(アイサス)」という理論です。これは、AttentionとInterestまでは、AIDMAと同じなのですが、その次が、「Search(検索)」で……

 【A】Attention(注目)
 【I】Interest(興味)
 【S】Search(検索)
 【A】Action(購入)
 【S】Share(シェア)
 と、続きます。

 今の消費者は、商品やサービスに興味を持ったら、まずネットで「検索」してみる。これが、「Search」。例えばAmazonで、レビューを見て星がいくつ付いているのかをチェックして、4.5といった高い評価が付いていたら迷わず購入します。「記憶(Memory)」になくても、瞬時に判断して買います。

 このように今の消費者は、第三者の意見やクチコミを非常に重視します。情報や選ぶ商品、サービスが多過ぎて、自分の頭だけでは処理し切れないのですね。だから、ネットに蓄積された「第三者の評価」というデータベースに基づいて、この商品で間違いないと思ったら、すぐに購入(Action)します。そして、その商品を買ってみて、使ってみてどうだったかということを、SNSに書き込みます。これが「Share」です。

 「この商品はよかったよ」ということはもちろん、「この商品はダメだった」「この店のサービスはひどかった」ということまで、シェアされて、クチコミされて、拡散されてしまうのが今の時代です。だからこそ、今の時代はこれまでよりもごまかしが利かなくなっている。本物の商品だけが生き残っていく時代、ということです。

執筆=笹木 郁乃

山形大学工学部卒業後、アイシン精機で研究開発に従事。その後寝具メーカーのエアウィーヴの第1号正社員として転職し、PRに注力。売上高を5年で1億円から115億円に伸ばす急成長に貢献。鍋メーカー・愛知ドビーでもメディア露出により注文殺到でお届けまで12カ月待ちに貢献。その後、2017年ikunoPRを設立、2019年LITAに社名変更。企業のPR支援のほか、経営者や個人事業主、広報担当者などにPRスキルを伝える「PR塾」も主催し、約1000名が長期講座で学ぶ。これまで5年間常に満員御礼開催。2021年7月に2冊目となる著書「SNS×メディアPR100の法則」(日本能率協会マネジメントセンター)を上梓。発売日即日重版。プライベートでは一児の母。

【T】

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