ビジネスWi-Fiで会社改造(第44回)
ビジネスWi-Fiで"学び"が進化する
連載第1回では、笹木郁乃氏の経歴とSNSによる情報発信を使ったPRの実績を紹介しました。第2回からはいよいよ、「ゼロ円PR」の具体的な方法について解説していきます。そのスタートとして、まずはPRと広告の違いから説明していきます。
皆さんは商品やサービスを買うとき、何を基準に選んでいますか。今は手のひらの中のスマホで、何でも調べてから購入する時代。だからこそ、どのように自社の商品、サービスの情報を発信するかが、これからの企業にはますます大事になってきます。
これまで、企業のマーケティング担当者は、あれこれ知恵を絞って、テレビや新聞、ネットの広告、チラシなど、さまざまな媒体に広告を出稿してきました。しかし、広告の出稿料は上がっているのに、広告の費用対効果は下がっています。払った広告料の分さえ、売り上げがアップしないことも珍しくないのです。
そんな時代に生まれているヒット商品の中には、広告などほとんど打っていないのに、ツイッターやフェイスブック、インスタグラム、LINE(ライン)などのSNSを通じて、爆発的に情報が拡散され、爆発的な購入動機につながっているものが多くあります。
例えば、新しいタピオカミルクティーのお店ができて、たまたま買った人が「いいね!」と思って、「#タピオカミルクティー」といったハッシュタグを付け、写真をインスタグラムに載せて拡散する。お店は広告費を一切払っていないのに、お客さんが勝手に情報を広めてくれ、不特定多数の人の購買意欲をかき立て、購入につながる。そしてこれが大ヒット、大ブームにつながるのです。
これが、広告とPRの決定的な違いです。広告というのは、会社が自分で広告料というお金を出す代わりに、好きなように情報を伝えます。「うちの商品は、こう見えてほしい」という願望を、広告で表現するのです。売り手の会社が情報をすべてコントロールして発信することができますが、それはあくまで会社から個人への一方通行のコミュニケーションです。
それに対して、PRというのは、自分以外の第三者に「いいね!」と言ってもらうこと。自分が知らない、どこに住んでいるかも分からない不特定多数が、「この商品、いいね!」「この人、いいね!」「この会社、いいよ!」と言ってくれる状況をつくり出す活動のことです。そこには、基本的にお金は介在しない。「いいね!」と思う気持ちと、人の心と心のつながりだけが存在するのです。
皆さんは、私たちが1日に接する情報がどのくらい増えているか、知っていますか? 手のひらにはスマホ、街を歩けば至る所に看板や広告。電車の中でも動画CMが流れるようになっていますし、YouTubeを見ても広告が挿入されていますよね。総務省の統計(「平成18年度情報流通センサス報告書」)によると、1996年から2006年の10年間で、テレビやパソコン、携帯電話などを通じて、私たちが接する情報量は、なんと530倍になったといいます。
情報量が10年で530倍。これはインターネットが普及した2000年前後のことですが、その後も身の回りを流れる情報量はどんどん増えています。そのため今は、あらゆる情報が人の記憶に残りづらい、情報を伝えようとする人にとっては非常にハンデのある時代になっています。
なにしろ530倍ですから、すべての情報をまともに受け止めていては神経が参ってしまう。自然と、私たちは情報が視界に入ってもスルーするようになってしまっているのですね。発信されたのはいいけれど、見向きもされない情報が、どんどん増えているのが今の時代なのです。
そんな中でも、人間の記憶に残る情報とは何か。それは企業が一方向に伝えてくる情報ではなく、自分の知り合いや、自分が好きな人が薦めてくるクチコミ情報なのです。だから、皆さんの会社でも、「インスタグラムでこんな人が取り上げている」「ツイッターでこんな人がリツイートしてくれた」「アマゾンでこんなレビューがある」。そういう状況を自分でつくり出し、自社の商品やサービス、ブランドの認知度を上げてほしいと、私は思うのです。
SNSに流れるクチコミは、自分で完全にコントロールすることはできません。それでも、いい評価をもらいやすくしたり、広げやすくしたりするノウハウはあります。忘れてはいけないのは、SNS時代に最終的に評価されるのは、質のいい商品、サービスを提供する会社だということ。会社が大きいか小さいかとか、お金をどれだけ投入したかといったことは関係ありません。フェイクレビューなど、途中で雑音が混じるのは難しいところですが、クチコミが力を持ったことで、広告が主流だった時代より圧倒的に、誠実な会社が評価されやすくなっているはずです。
もしかしたら、この連載を読んでいただいている皆さんの中には……「うちの会社は、昔からの顧客と、紹介だけで仕事が取れているから、面倒くさいPRなんてしなくても大丈夫だよ」と、思っている人もいるかもしれません。しかし、今まではそれで回っていた会社も、これから先の社会では、どんどん会社の名前や商品を認知してもらいにくくなっていくはずです。
昔ながらの顧客も年を取っていく。紹介される人も少なくなっていく。結果として、あなたの会社の情報は、10年間で530倍に膨れ上がった圧倒的な情報量の中で埋もれていってしまう。認知されなくなり、選ばれなくなってしまう。そんな中で、人々にあなたの会社と商品、サービスを認知してもらい続けるためには、PRが絶対的に必要になってくるのです。
逆に言えば、これまで特段の販促をしなくても紹介だけで仕事が取れていたというのは、それだけいい商品、いいサービスを持っている証拠です。さらにそのうえ、PRをするようになれば、あなたの会社がグングン伸びていくことは間違いありません。SNS時代は、最後は品質が勝つ時代です。あなたの会社を急成長させる打ち出の小づち。しかもコスト0円からチャレンジできます。試してみなくてはもったいないと思いませんか?
執筆=笹木 郁乃
山形大学工学部卒業後、アイシン精機で研究開発に従事。その後寝具メーカーのエアウィーヴの第1号正社員として転職し、PRに注力。売上高を5年で1億円から115億円に伸ばす急成長に貢献。鍋メーカー・愛知ドビーでもメディア露出により注文殺到でお届けまで12カ月待ちに貢献。その後、2017年ikunoPRを設立、2019年LITAに社名変更。企業のPR支援のほか、経営者や個人事業主、広報担当者などにPRスキルを伝える「PR塾」も主催し、約1000名が長期講座で学ぶ。これまで5年間常に満員御礼開催。2021年7月に2冊目となる著書「SNS×メディアPR100の法則」(日本能率協会マネジメントセンター)を上梓。発売日即日重版。プライベートでは一児の母。
【T】
ゼロ円販促