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パフォーマンス心理学の最新の知見から、部下をやる気にする方法を紹介する連載。今回は、その前提となる、言葉に出ていない部下の心を見抜く技術の第5回です。部下の態度で、さまざまな心理を読み取ることができます。中でも重要なのは部下の嘘を確実に見破ることです。あなたは部下の嘘を見抜くことができますか。
言葉に出ていない部下の心を見抜く技術(7)
政治家から経営者、タレントまで、いったいどれだけの人の「嘘」を、私は表情や声、わずかな動作から見抜いてきたことでしょうか。恐らく、テレビ局と新聞社の依頼だけで500件は超えているでしょう。「嘘発見器」という不思議なあだ名も付いています。
時に部下も上司に嘘をつくことがあります。叱られたくないあまり、指示通りに仕事が進んでいなくても「できています」と言うこともあるでしょう。
嘘をつくときの特徴がいくつかあります。分かりやすいのがまばたきの回数が異常に増えるときです。そんなとき、部下は何か隠し事をしているか、嘘をついていることが推測されます。
また、私が専門的に嘘を見抜くことができるのは、非常に微細な動きを見せる「3つのズレ」からです。
第1に、その人が言葉で表している感情と表情のズレ。第2に、表情の印象が顔の上半分と下半分でズレている場合。第3に、まず口の周りがにこやかに動いているのに目の周りは動かず、ほんの0・5秒ほど後になって目の周りが動きだす場合です。
これは表情統制(フェイシャル・コントロール)と呼ばれる、人間が自分の心理を隠そうと思うときの表情筋の動きによる分析で分かります。この分析には「ASFACS(Ayako Sato Facial Action Coding Systems)」という特殊なシートを使います。上段にその人が話している言葉の記述が入り、その下にパソコンに取り込んだ画像を使って眼輪筋、頬骨筋、口輪筋、まばたきの回数、アイコンタクトの方向と時間、頭部の振りの回数と方向などを0.5秒単位で計測して記入するものです。アメリカの心理学者P・エクマンのFACSを原型として私が開発し、既に18年間使って成果を出しています。
ここまで細かな計測をしなくても、相手の顔を上下に2分割して観察すると、皆さんも微妙な表情が読み取りやすくなります。先ほどの部下の例でいえば、「できています」と言ったとき、顔の下半分にある口の周りの筋肉はよく動きほほ笑んでいるのに、顔の上半分にある目の周りの筋肉がまったく動かず止まっているように見える場合です。
こうしたズレのある表情は、口の周りの「口輪筋」と呼ばれる筋肉群のほうが自由自在に操ることができ、目の周りの眼輪筋と呼ばれる筋肉群は遅れて動くために起こります。顔の上下で表情が違っていたり、時間差があったりするときには嘘をついている可能性があります。
例えば、上司が部下の表情で嘘を見抜きやすいのは、部下が昼間営業から帰社したのを見て、「この時間までずいぶん頑張ったね」とねぎらったときの部下の表情でしょう。思わず目と頰の筋肉がフリーズしているのに、「まったく、今日は大変でした」と答えた場合、その実、彼はどこかで寄り道していたはずです。
上司は常に部下の顔の3つのズレを見てください。言葉だけに耳を傾けて信じ込まずに、表情も見るようにしましょう。言葉と表情のズレは、何度かやっているうちに誰でも見抜くことができるようになるはずです。嘘を早く発見することになり、早く手も打てます。
言葉に出ていない部下の心を見抜く技術(7)
◆嘘は表情で分かります。
◆まばたきが増えたり、顔の上半分と下半分の動きが異なったりする場合は、嘘をついているかもしれません。万が一見抜いても、追及はせず、部下の仕事の助けとなるアドバイスに変えましょう。
※本記事は、2017年に書籍として発刊されたものです
執筆=佐藤 綾子
パフォーマンス心理学博士。1969年信州大学教育学部卒業。ニューヨーク大学大学院パフォーマンス研究学科修士課程修了。上智大学大学院博士後期課程満期修了。日本大学藝術学部教授を経て、2017年よりハリウッド大学院大学教授。国際パフォーマンス研究所代表、(一社)パフォーマンス教育協会理事長、「佐藤綾子のパフォーマンス学講座R」主宰。自己表現研究の第一人者として、首相経験者を含む54名の国会議員や累計4万人のビジネスリーダーやエグゼクティブのスピーチコンサルタントとして信頼あり。「自分を伝える自己表現」をテーマにした著書は191冊、累計321万部。
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