ビジネスWi-Fiで会社改造(第44回)
ビジネスWi-Fiで"学び"が進化する
業務に紙の書類は付きものだ。商品の注文書や納品書、請求書から、顧客や住民からの申込書まで、物理的な書類は多種多様で簡単にはなくならない。書類に頼らず完全にデジタル化できる仕組みを整えられればスッキリ問題解決なのだが、なかなかそうはいかない。
ファクスで注文書を送ってくる取引先に、これからはパソコンやスマホで注文情報を入力してほしいとは言いにくい。店頭で住所氏名の登録を求めるときも、デジタルツールに慣れないシニア層のことを考えると、書類への手書きの記入はなくせない。これから当分の間、書類と格闘せざるを得ないだろう。
管理も大変だ。場所を取るのはもちろん、安全に管理するための体制も整えなければならない。そして、いざ必要になったときに情報を探し出す手間といったら、大変なこと。これは完全デジタル化されたオフィスでなければ、誰もが共感することだろう。
業務で必要な情報をすべてデジタル化するのは現実的でないとしても、情報の保管や活用を紙からデジタルに置き変えることはできる。書類の情報をデジタル化すれば、ビジネス変革を実現するデジタルトランスフォーメーション(DX)の第一歩にもなり得る。
まずは紙の書類の束をどうするかを考えよう。蓄積された書類を、必要とする業務に応じてICTを活用したシステムをつくり、そこにデジタル化したデータとして入力、登録できればそれに越したことはない。しかし、一足飛びにシステム化するのは時間もコストもかかる。なにより、紙に記載された文字を手入力する手間は無視できない。すでにシステム化されている業務で、毎日のように長時間かけて書類の文字を読み、キーボードで打ち込んでいる担当者がいるケースでは、単純作業の繰り返しという労働実態も認識されているだろう。
紙の書類は、まずはスキャンしてデジタルデータに変換しておくのが重要だ。これだけでも、保管の場所の問題や、書類を探し出す手間が省ける。スキャンしたファイルの日付で書類を探せるようになるだけでも、紙の書類を束ねたファイルを引っ張り出して、紙をめくりながら目的の書類を探すことを思えば圧倒的に効率が高い。
スキャンしたデータをさらに有効に活用するには、デジタル情報として利活用できるテキストデータとひも付けるとよい。スキャンしたファイルに取引先企業名などの情報を付加してタグ付けできれば、それだけでも情報の視認性が高まる。もう一段レベルアップして、書類の内容もデジタルデータとして取り扱えるようにできれば、活用の方法は格段に広がる。
スキャンして画像としてデジタル化したデータから、テキスト情報に変換するツールとしては、OCR(光学的文字認識)が用いられている。OCRで紙の書類の文字をパソコンなどで扱えるテキストデータに変換しておけば、その先の活用度合いは格段に上がる。検索が可能になるし、データをリスト化したり成形したりしやすい。その後分析し、ビジネスの改善や業務改革につなげられる。
しかし、「OCRは大してうまく読み取ってくれない」経験値から、導入に二の足を踏む企業も少なくない。活字ならばまだしも、手書きの文字を書類から読み取るとなると、人手で修正しなければならず、結局は手間がかかるからだ。ところが最近そうでもないのだ。大きな技術革新が起こっていることも知っておきたい。
何かと話題に上る人工知能(AI)が、OCRの性能を大きく向上させているのである。最新技術だけに、一般の企業にはあまり関係ない成果も少なくないが、OCRにAIを組み合わせると、手書き文字を含めた文字の認識精度が格段に向上するのだ。すぐに実務に役立つ成果が上がっている。
スキャンした書類のデータをAI×OCRで読み取っていけば、デジタル化のために書類から文字入力する人間の作業は激減する。結果をチェックして、たまの間違いを修正する程度に抑えられる。人間も繰り返し同じ入力作業をしていればミスをする。だとすれば、チェックと修正の業務は変わらず、入力作業分を機械に任せられる分、楽になるといえる。
書類をデジタル化できれば、それらに含まれる情報が生きた情報として使えるようになる。例えば注文情報から受注量の季節変動を分析すれば、これまで勘に頼っていた生産量の最適化も可能になる。紙の書類が束になっていても、それは場所をふさぐ“モノ”でしかない。デジタル化を進めれば、大きな“情報資産”へ変換できる。あなたの会社にある紙の束をデータにするところから、会社のデジタルトランスフォーメーションの第一歩にしてはいかがだろうか。
執筆=岩元 直久
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