システム構築のための調整力向上講座(第24回) 目標設定理論を活用してモチベーションアップ

コミュニケーション

公開日:2017.09.14

 前回紹介したマズローの欲求5段階説が、最も知られた古典的なモチベーション理論であるのに対し、現代のモチベーション理論として広く受け入れられているのが「目標設定理論」です。

 前述のスティーブン・P・ロビンス氏によると、目標設定理論では「明確な目標は成果の向上につながり、難しい目標はそれに納得できると、簡単な目標よりも高い成果を生み出す」ことが分かっています。

 例えば、「できるだけ早く完了させてくれ」という曖昧な依頼より、「○月○日の17時までに終わらせてくれ」という具体的な依頼のほうが「どれぐらい頑張ればいいのか」が明確なため取り組みやすいでしょう。

 また、目標となる期限が「まだまだ先だし余裕だな」というものより、「少し頑張ればなんとかなる」ぐらいの期限であるほうが、生産性が高くなるのも容易に想像できます。

 さらに、目標を設定して終わりではなく、目標達成のプロセスでフィードバックが得られると成果が向上するといわれています。フィードバックを得ると、自分がどれくらい進んでいるのか、めざすところまであとどれくらいかが分かるからです。目標とのギャップが明らかでなければ、どれくらい頑張ればいいのか分からないのです。

 目標設定理論をうまく活用するには、プロジェクトリーダーとして日ごろから以下の4つのことを心がける必要があります(図1)。

図1:目標設定理論を活用するために心がけること

01■メンバーの実力値を見抜く

 目標が難し過ぎても、簡単過ぎてもモチベーションを高められません。本人にとって「少し難しいな」「やれるかな……」「頑張ればなんとかなるかな」と感じるくらいの目標を設定する必要があります。

 しかし、自分の実力値は、なかなか分からないものです。実力値に対して簡単過ぎる目標を立ててしまったり、とても達成できそうにない無理な目標を設定してしまったりします。プロジェクトリーダーが普段からメンバーの実力値を把握していれば、「ちょうどよい=実力値に対して少し難しい」目標を、メンバーと一緒に設定できます。

 ここで気を付けるべきは、普段のコミュニケーションが不足していて、本人の実力値を把握していないにもかかわらず「○○さんなら、これくらいできるよ」と難しい目標を設定してはいけないということです。「何を知っていてそんなことが言えるんだ」「何にも知らないのに、難しいことを押し付けられた」と思われ、逆効果になりかねません。

 「士は己を知る者の為に死す」という言葉があるように、人は「自分を知ってくれている」と思う人から「君ならできる」と言われれば、「やってみるかな」という気になるものです。そのためには、プロジェクトリーダーとして、普段からコミュニケーションを密にし、メンバーを知っている必要があるのです。

02■具体的な目標を設定する

 「成果を出せ」「努力しろ」と言われても、それだけでは「何を、どれぐらい」頑張ればいいのか分かりません。しかし、プロジェクトリーダーはそのようにハッパをかけてしまいがちです。 

 目標を効果的なものにするには、以下のような「SMART」な目標を立てる必要があるといわれています(図2)。

  • Specific:具体的である
  • Measurable:計測できる、数字になっている
  • Agreed upon:同意している、頑張ればできそう
  • Realistic:現実的である
  • Timely:期日が明確である

 

図2:目標を効果的にするためのSMART項目

 チームメンバーに技術力を高めてもらいたいのであれば、「技術力を高めてくれ」と曖昧に伝えるより、「月に1冊は技術書を読むこと」「月に1回、社内勉強会を開催して講師を務めること」など、具体的に設定すれば、すぐに取り組めます。「できたか、できなかったか」も明確に判断できます。

03■目標に意味を持たせる

 少し難しいくらいの目標が、成果を生み出すといっても、それはその目標に納得感がある場合です。理由なく難しい目標に挑戦させられても、納得感を得られないでしょう。納得感のある目標とするには、目標が持つ「意味」を理解する必要があります。このとき、プロジェクトリーダーとして伝えるべきは、「外的な意味」と「内的な意味」の2つです。

 外的な意味とは、目標達成で組織や顧客にどのような貢献ができるか、です。プロジェクトに課せられた難しいQCD(品質、コスト、納期)を達成すれば、クライアントに喜んでもらえ、結果として会社の業績にもつながる。目標達成がどのように自分以外のところへ影響を与えるのかを知れば、納得感を得られます。

 内的な意味とは、本人の成長にとってどのような意味があるか、です。本人の実力値に対して簡単なことに取り組んでも成長は見込めません。実力に対して「少し背伸びする」くらいの取り組みを続けること、言い換えれば「負荷をかけ続ける」ことで、最も成長を促せます。

 目標を達成するプロセスの中で、どのような能力を得られるのか、次のステップはどのようなものなのかを伝えると、目標に内的な意味を持たせられます。

04■結果ではなく、プロセスでフィードバックする

 目標に対して懸命に取り組んでいればいるほど、自分がどれくらい進んでいるのか、方向性は合っているのか、不安になるものです。このとき、進捗や方向性についてフィードバックが得られれば、いま自分がどこにいるのかを理解し、方向性が間違っていれば軌道修正できます。

 先ほどの例でいえば、「月に1 冊は技術書を読むこと」という目標を設定すれば、半年後や1 年後にできたかどうかを聞いても、すでに結果は出てしまっています。それよりも「今月読んだ1冊のレポート」を提出してもらえば、コメントしたり、次に読むといい本をアドバイスしたりできます。プロジェクトリーダーの役割は「メンバーが成果を出せる状況を作ること」です。そのためには、結果に対して評価するよりも、そのプロセスに働きかけるほうが重要です。

執筆=芝本 秀徳/プロセスデザインエージェント代表取締役

プロセスコンサルタント、戦略実行ファシリテーター。品質と納期が絶対の世界に身を置き、ソフトウエアベンダーにおいて大手自動車部品メーカー、大手エレクトロニクスメーカーのソフトウエア開発に携わる。現在は「人と組織の実行品質を高める」 ことを主眼に、PMO構築支援、ベンダーマネジメント支援、戦略構築からプロジェクトのモニタリング、実行までを一貫して支援するファシリテーション型コンサルティングを行う。

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