ビジネスWi-Fiで会社改造(第44回)
ビジネスWi-Fiで"学び"が進化する
生産性の向上や人材不足の課題に直面する製造業。対策としてIoT(モノのインターネット)に着目し、製造現場への普及を加速させている。機械設備の稼働状況や加工データなどを見える化し、インターネットを介して納入先企業との間で共有する取り組みが相次ぐ。IoT導入に必須なのが、Wi-Fi環境の情報セキュリティー確保と管理負荷の軽減だ。石川県で産業・建設・環境機械などの設計・製造を行っているタガミ・イーエクスの事例を紹介する。
<株式会社タガミ・イーエクス>
建設・産業用機械をはじめ、社会インフラ整備や地球環境保全に役立つ機械装置を製造する中堅メーカー。1965年の創業以来、社是「無極」(知恵は極まることなく改善は無限である)の精神で、機械や装置の開発・生産・販売・サービス活動を通して国際社会のインフラ整備や地球環境保全に貢献することが使命と考え、新技術・新工法への挑戦し日々努力と研さんを積んでいる。本社は石川県能美市、従業員数は240人。
タガミ・イーエクスの工場内部
タガミ・イーエクスは、コマツやIHIといったグローバル企業向けに機械・周辺装置を製造する中堅メーカーだ。現在、海外を含む6カ所の事業拠点で、240人の従業員が設計・製造などに取り組む。
自前でWi-Fi環境を構築し、工場内でノートパソコンなどを利用して業務を行っていたが、2016年9月、さらなる生産性の向上を図るために、Wi-Fi機能を搭載した新型の機械設備を導入した。LAN経由で稼働記録などのデータを収集・管理し、納入先企業とも共有できるIoTの仕組みづくりをスタートさせた。
従来のWi-Fi環境はビジネスフォン用のFMCアンテナを利用する構成で、暫定的に構築していた。そのため、工場のIoT化にも使用する場合、音声系ネットワークに負荷がかかるなど、運用安定性の面で不安があった。また、Wi-Fi機器の老朽化も進み、更新する必要に迫られていた。
データ系の無線ネットワークがインターネットに直接つながることによる、情報セキュリティーリスクの増大も懸念された。こうした理由から、全6拠点で新たにセキュアなWi-Fi環境を整備する計画が持ち上がった。
この課題を解決する手段としてタガミ・イーエクスが導入したのは、NTT西日本が提供するビジネスWi-Fiサービス「スマート光ビジネスWi-Fi」※1である。
中島氏
「NTT西日本のサービスに注目したのは、社内ネットワークとインターネットにつながるネットワークを分離できる点に魅力を感じたからです。これを利用すれば、情報セキュリティーを確保した上で、機械設備の稼働データなどを収集・管理できるようになります。また、煩雑になりがちな保守管理やトラブル時のサポートを、一元的に任せられることにも魅力を感じました」(中島洋輔業務課長)
導入後、実際に工場で機械設備を運用する技術者は、社内ネットワークにつながった複数の機械設備に関する各種データが、手元のパソコンで確認できるようになり、本当に便利になったと効果を実感する。
社内の業務用端末だけがアクセスできるように制限をかけ、情報セキュリティーも向上。来客者から「インターネットを使いたい」という旨の要望があった場合は、Wi-Fiへの接続を来客者専用のIDで分けることによってセキュリティーを確保する。
スマート光ビジネスWi-Fiの導入は、運用管理の面でもメリットを生んでいる。「例えば、各拠点のWi-Fiに関する設定状況が本社で一括して把握・管理できるので、トラブルへの対応やパスワード変更などの際、現地に出向く必要がなくなりました。これにより、システム管理者の負担は格段に軽減されます」と中島氏は笑顔で説明する。
最近では、ノートパソコンを自席以外の場所に持ち運んで、他部門のスタッフと意見交換しながら業務を行うなど、IoT以外の面でも活用の幅が広がった。今後は、紙ベースで管理している各部門の業務実績を、現場のタブレットから直接入力できる仕組みも導入する意向だ。
工場内の各所に配置された無線アクセスポイント(左写真)、手元のパソコンで機械設備に関する各種データをすぐに確認できる(右写真)
中島氏は「NTT西日本は電波調査を徹底して行い、無線アクセスポイントの電波を外部から干渉しないようにしてくれました。新しいWi-Fiの操作説明も非常に丁寧でした。トラブルが発生した際に、遠隔サポートで一元的に対応する体制は何よりも心強いですね」と評価する。
IoTは活用の仕方次第で、タガミ・イーエクスのような中小・中堅メーカーの潜在的な成長力を底上げする有力な手段になる。しかし、その基盤となる情報ネットワークのセキュリティーが不十分であれば、悪意を持つ者にとって格好の標的になりかねない。だからこそWi-Fi導入に当たっては、価格や性能だけなく情報セキュリティー対策をまず重視すべきだ。
さらに人的資源が十分でない企業が、ネットワーク運用管理に人手を割くわけにはいかないことを考えると、サポート体制の充実度こそ、一番のポイントといえるかもしれない。
※1 スマート光ビジネスWi-Fiの利用には、「フレッツ 光ネクスト」または「フレッツ 光ライト」もしくはコラボ光の契約・料金が必要
※掲載している情報は、記事執筆時点のものです
執筆=田村 直人
ビジネス系ライター・企業広報支援ライター。主に企業のWebサイト、会社案内、商品導入事例、CSRレポート、社内コミュニケーションツールなどの取材・執筆を行っている。
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