ビジネスWi-Fiで会社改造(第44回)
ビジネスWi-Fiで"学び"が進化する
広島市に9店舗の美容室を持つラランジェでは、スタッフの業務効率化と美容技術の学習支援をめざしてIT環境を整備した。顧客情報を管理するため情報セキュリティーにも留意。全店舗を閉域網で接続するほか、インターネットの出入り口を本社にまとめ、そこにUTMを設置して強固なセキュリティーを確保した。さらに各店舗にWi-Fiも導入することで、お客さまサービスの向上を図りつつ、スタッフがスマートフォンを使って空き時間に研修用動画コンテンツを視聴できるようにして、美容技術のレベルアップも狙っている。
<株式会社ラランジェ>
1933年に東京・銀座で創業した歴史を持ち、現在、広島市に9店舗の美容室を展開する。「お客様の毎日を創る」をテーマに、専門性の高いスタッフが、顧客が快適で元気に過ごせるトータルビューティーを提供している。従業員数150人。
中藤弘樹常務取締役
ラランジェは「美容師の社会的地位向上」を経営理念に掲げ、高い技術力や接客などサービススキルに優れた人材の育成に力を入れる。常務取締役の中藤弘樹氏は「技術面、接客面の習得において、美容院は教育産業といえます。お客さまの滞在時間は長く、美容師の仕事はすべて手作業のため、人柄も出ます。そのため当社ではスタッフの教育・研修を重視して活動してきました」と語る。
美容室では1人の美容師がヘアカラーやカットを行うのが一般的だ。だが、ラランジェではカラーリストやスタイリスト、ネイリストなど、それぞれ専門的な技術や知識を備えたスペシャリストを育成している。「スタッフの専門性を高め、より深く、高いレベルの技術を習得するなど、お客さまに満足していただける美容院を運営しています」(中藤氏)
こうした企業方針を持つだけに、同社のスタッフは営業終了後に店舗で新商品の情報収集やスキルアップのための学習をしたり、メーカーの講習会に参加したりする機会も多い。また、毎月、全スタッフを広島市内の本通り店に集めて定例会議を開催していた。
ただ、その参加のために移動時間のかかる郊外の店舗では、営業時間を短縮しているケースもあった。「毎回、全スタッフが顔を合わせる会議を行う必要があるのか問い直しました。移動のための時間や経費、スタッフの負担を軽減し、業務をいかに効率化するかが経営課題でした」(中藤氏)
これまでも会議の内容はメールで各店舗に伝達していた。ただ、通信はISDN回線によるダイアルアップのため、画像など大容量データの送信に時間がかかっていた。それを改善するには、通信環境の整備も必要だ。
同時にスタッフの学習支援や定例会議に代わる情報伝達など、業務効率化の具体的な手段として動画配信に着目していた。動画投稿サイトに、新商品情報やスキルアップのための研修用動画コンテンツをアップすることにした。これにより、講習会に参加できなくても店舗の端末や自身のスマートフォンを使って、時間のあるときに動画コンテンツを視聴して学習できる。結果、効率的な勤務につながると考えた。
こうした動画コンテンツを活用するには、各店舗におけるインターネット環境の整備が前提となる。「当社では膨大な顧客情報を保有しています。各店舗にインターネット回線を導入するに当たり、まず顧客情報を保護する情報セキュリティーの確保が大前提でした。NTT西日本の提案はまさに当社の要件にぴったりでした」(中藤氏)
提案内容は次のようなものだ。本社と各店舗間は外部からアクセスできない閉域網の「フレッツ・VPN ワイド」※1で接続し、インターネットへの出入り口を本社にまとめる。そこにファイアウォールやアンチウイルスなどのセキュリティー機能を1台の機器に統合したUTM(統合脅威管理装置)「Biz Box UTM」※2を設置。これにより、各店舗は本社経由でセキュアにインターネット接続し、情報セキュリティー対策も本社に集約できる。この方法でコストを抑えながら重要な情報資産を保護する。
店舗間のネットワーク整備とともに、各店舗へWi-Fiを導入した。「お客さまは待ち時間にスマートフォンを操作したり、スタッフも研修に利用したりするなど、Wi-Fi環境の要望が上がっていました」と中藤氏は導入の経緯を説明する。
「当社は、お客さまに高級感のある店舗でおくつろぎいただきたいとの思いから、内装にはきめ細かな配慮を施しています。その点で配線する必要がないWi-Fiは店舗の設備にふさわしいものでした。内装のイメージを損なうことがないように、装置も壁面などではなく、お客さまから見えない所に設置してもらいました」(中藤氏)
パソコンやスマートフォンといった端末や通信キャリアを選ばずに利用できるNTT西日本のWi-Fiサービス「スマート光ビジネスWi-Fi」※3を導入。各店舗に設置する無線アクセスポイントなどのWi-Fi環境は本社で一括して設定し管理する。各店舗で社内用と来客用のSSIDを分けて、セキュリティーにも配慮した。
Wi-Fi環境が整備された店舗で情報活用を促進
ラランジェでは、店舗のIT環境が整備されたことでさまざまな効果が生まれた。まず当初の狙いでもあった業務の効率化。全社的な伝達事項や、全スタッフが集合する必要のない会議、講習会の様子は動画コンテンツとして配信している。スタッフは所属する店舗で動画を閲覧できるようになったので、会議のための移動時間やスタッフの負担が大幅に軽減した。
美容技術を学べる研修用動画コンテンツの例
スタッフは店舗のWi-Fiを介して、自身のスマートフォンで研修用動画コンテンツを視聴するケースも多い。Wi-Fi接続ならば、こうした動画を視聴してもデータ通信量の制限を気にする必要はない。
スキルアップのための集合研修に加え、研修用動画コンテンツも自社で作成し、全店舗に配信している。スタッフは自らのスキルに応じて動画で必要な美容技術を学べるようになった。「技術研修用の動画コンテンツを蓄積することにより、当社がスタッフに求めるスキルを見直すきっかけにもなっています」と中藤氏は副次的な効果を語った。
オンライン予約の改善という効果も得られた。従来は本通り店の端末で全店舗の予約を受け付け、予約内容を各店舗に伝えていた。インターネット環境の整備により各店舗でオンライン予約の受け付けが可能になった。「スタッフはお客さまの顔が分かるので、よりきめ細かな対応が行えます」と中藤氏は顧客満足度の向上を期待する。
手書き伝票で処理しているレジ会計業務についても、今後、Wi-Fiとタブレットを活用する方針だ。社内システムと連動して伝票入力や商品の在庫管理などに役立てれば、業務を効率化できると見ている。
NTT西日本の対応について、中藤氏は「情報セキュリティーの懸念を払拭する提案により、思い切った店舗の業務効率化を進められました。インターネット環境の導入に際し、既存の機器や社内システムに影響がないようにも入念な検証を繰り返してくれました」とサポートを評価する。
リピート客を増やすことによって経営安定化を図る美容室経営において、顧客情報管理の重要性はいうまでもない。また、文字ではなかなか伝わりにくい美容技術を学ぶには動画活用が効果的だ。つまり、美容業界において強みを出していくには、セキュリティーレベルが高く、大量の通信量にも耐えるネットワークが重要だといえる。それをラランジェでは、NTT西日本のサポートで実現できた。
IT環境の整備による業務効率化や、Wi-Fi導入による動画コンテンツを活用したスタッフのスキルアップ、顧客満足度の向上など、さまざまな取り組みを通じて中藤氏は「美容業界の地位向上のために貢献したいですね」とさらなる意欲を示した。
※1 フレッツ・VPN ワイドの利用には、フレッツ 光ネクストなどプロバイダーの契約・料金が必要
※2 すべてのセキュリティ脅威への対応を保証するものではない
※3 スマート光ビジネスWi-Fiの利用には、「フレッツ 光ネクスト」または「フレッツ 光ライト」もしくはコラボ光の契約・料金が必要
※掲載している情報は、記事執筆時点のものです
執筆=山崎 俊明
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