ビジネスWi-Fiで会社改造(第44回)
ビジネスWi-Fiで"学び"が進化する
連載第2回から4回において、PRと広告の違いと消費者の購入プロセスの変化を解説しました。そして今回から、それを前提とした具体的なノウハウを紹介していきます。まずは一番大事な、顧客に何を伝えるべきかについて解説しましょう。
連載第3回で、SNS時代になって消費者が何かを「購入する」までのプロセスが、どのように変わったかをお伝えしました。かつて王道だった、しつこく情報をプッシュする「AIDMA」が通用しなくなり、クチコミのシェアの影響力が大きい「AISAS」の時代になったというのがポイントです。
その結果、広告的な販促が効きにくくなり、PRの技術が決定的に重要になりました。広告は必ずコストがかかりますが、PRはコスト0円から始められます。小さな会社やフリーランスで働く個人には大きなチャンスです。だからぜひ、すべての人にPRの技術を身に付けていただきたいと思います。
そこで、ここから先はひたすら実践編。具体的なノウハウをお伝えしていきます。
連載の第5回から7回では、「どんな物語」を伝えるか。あなたの商品、サービス、会社の魅力をどのような言葉で表現するのがいいのか。「PRの基本設計」を作っていただきます。書き込むスペースも多く用意したので、ぜひ活用して実践につなげていただきたいと思います。
そしてその後に、「何を使って」伝えるか。今の時代のPRに必須なSNS活用法をお伝えします。まず、SNSにおけるコミュニケーションの本質とコツ。そして個別のSNSの特徴。一口にSNSといっても、ツイッターとフェイスブックでは、PRで果たせる役割が違います。「AISAS」モデルでそれぞれの機能の違いを明確にし、売り上げにつながる活用のノウハウをお伝えします。
さらに次は、「どう伝えるか」。SNSにメルマガ、店頭での告知などを組み合わせて顧客を引きつけ、購買活動につなげるプロセスをお伝えします。私がめざすのは、VIP顧客を起点とした反響が反響を呼ぶ「段階的プロモーション」です。
それでは、「PRの基本設計」を作る前に、「広めるべき情報」を確認しておきましょう。これからの時代は、高いコストをかけた広告よりも、コスト0円から始められるPR活動。SNSでクチコミの評判が拡散する時代だからこそ、PRの技が生きる。そんなことをお伝えしてきました。では、PRの技を使って最初に広めるべき情報は何か。
それはズバリ、「実績」です。「このペン、いいよ」「この鍋、いいよ」と、自社の製品をひたすら自画自賛しているみたいなPRには、あまり意味がありません。おしゃれだけど、何を伝えたいのか意味の分からないイメージ広告みたいなPRもあまり効果はありません。
重要なのは、あなたではない第三者が、いかにあなたの売る商品、サービスを評価して、買ってくれるかなのです。それが「実績」です。
次の2つの文章を読んでください。2つとも、私が実際に寝具メーカー・エアウィーヴの第1号社員として、看板商品「エアウィーヴ」を〝自己PR〟するために書いた文章です。
【1】極細繊維状樹脂が3次元に絡み合った中素材を使用した、高反発マットレスパッド「エアウィーヴ」。名前の通り、空気を編んだような構造で、雲の上に寝ているような感触です。今お使いの布団の上に重ねてご使用いただけます。ぐっすり眠れるため、女性のアンチエイジングにもオススメです。
【2】フィギュアスケートの浅田真央選手、テニスの錦織圭選手、歌舞伎俳優の坂東玉三郎さんはじめ、多くのトップアスリート・著名人がこぞって愛用するマットレスパッド「エアウィーヴ」、高反発のため、腰をしっかり支え、寝返りが打ちやすく翌朝に疲れを残しません。JALファーストクラス、NO.1旅館の加賀屋など、一流企業が続々と採用するのも納得の寝心地です。
ここまで読んでいた方なら、どちらが優れた自己紹介か分かっていただけますね。そうです。現実に反響が大きかった自己PRは、【2】。【1】を使っていたときにはまったく売り上げが上がらなかったのに、後者に改善したら顧客の反応は劇的に変わりました。しかし……
「【2】は商品をほとんど紹介していないではないか。いくら何でも、もう少し商品の特徴を説明したほうがいいのでは?」と、思われた方もいるでしょうか。でも大丈夫。極論を言えば、商品そのものをまったく紹介しなくても何とかなります。ただ、その商品がどれだけほかの顧客に受け入れられているかという「実績」を示せば、興味は持っていただけます。
正確に言えば、改善前の【1】は、商品の「特徴」が文章の7割を占めます。一方、改善後の【2】は「実績」が7割です。これくらいのバランスがいいと思います。つまり、商品の特徴より実績のアピールを優先した。それだけで顧客の反応は劇的に変わりました。
●図1「実績」を伝えよう
ほかにも、例えば「一流ホテルの客室にわが社の製品が置かれている」とか、「有名シェフも使っている」「芸能人も使っている」「楽天ランキング1位獲得」とか。これらは、決して自分一人では作ることができない。評価してくれる第三者がいて、初めて作れるPRの文章です。
「第三者の評価」という実績は、顧客から見て最も信頼できる品質保証です。情報過多の現代、BtoCの消費者向けの商品でも、BtoBの企業間の取引でも、このような実績が購入への意思決定の決め手になります。
PRが上手な企業は、必ず自己PRにこの実績を詳しく入れてきます。通信販売の広告などに、よく「累計販売数65万本突破」とか、「81%のお客さまが続けています」といった数字が入っていますよね。これらはまさに実績。広告というよりPR的な手法です。それらは実際、多くの顧客の心をつかんでいます。
先ほどのエアウィーヴの例で、改善後の【2】の文面を思い出してください。商品の特徴が3割入っているとはいえ、実績ばかりで具体的にどういう商品なのかよく分からない方も多いと思います。
それでも、フィギュアスケートの浅田真央選手、テニスの錦織圭選手、歌舞伎俳優の坂東玉三郎さん、そして加賀屋にJALファーストクラス。これらの人たちや企業に支持されている実績を並べれば、エアウィーヴという名前など聞いたこともなければ興味もなかったという人が、「何だろう、そのマットレス。ちょっと試してみようかな」と、ホームページを検索してみる。マットレスパッド1枚の値段が6万円以上もすることが分かっても、「そんな一流の人たちが使うのなら、それだけの値段が付くだけの価値がある、素晴らしい商品なのではないか」と思ってくれたりします。
だから、自己PRに載せるべきは、1に実績、2に実績。これを読んだ皆さんには、分かっていただけると思います。
執筆=笹木 郁乃
山形大学工学部卒業後、アイシン精機で研究開発に従事。その後寝具メーカーのエアウィーヴの第1号正社員として転職し、PRに注力。売上高を5年で1億円から115億円に伸ばす急成長に貢献。鍋メーカー・愛知ドビーでもメディア露出により注文殺到でお届けまで12カ月待ちに貢献。その後、2017年ikunoPRを設立、2019年LITAに社名変更。企業のPR支援のほか、経営者や個人事業主、広報担当者などにPRスキルを伝える「PR塾」も主催し、約1000名が長期講座で学ぶ。これまで5年間常に満員御礼開催。2021年7月に2冊目となる著書「SNS×メディアPR100の法則」(日本能率協会マネジメントセンター)を上梓。発売日即日重版。プライベートでは一児の母。
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