部下のやる気に火をつける方法(第2回) 「ミミクリ」と「歩幅」で部下の心理をチェック

コミュニケーション

公開日:2019.04.11

 パフォーマンス心理学の最新の知見から、部下をやる気にする方法を紹介する連載。今回は、その前提となる、言葉に出ていない部下の心を見抜く技術の第2回です。部下の態度で、さまざまな心理を読み取ることができます。あなたは「ミミクリ(模倣)」と「歩幅」に注目していますか。

言葉に出ていない部下の心を見抜く技術(2)

「誰をミミクリしているか」でリスペクトの対象が分かる

 子どもたちは、すぐにお父さんやお母さんのまね(ミミクリ)をします。「ミミクリ(模倣)」を説明するのに一番分かりやすいのは、例えばお母さんごっこなどの、いわゆる「ごっこ遊び」です。ラグビーの日本代表として活躍した五郎丸歩選手のルーティンが話題になれば、すぐに小学生や中学生の男の子が、拝むように両手を組むポーズをまねし、人に見せ始めます。これもミミクリです。

 そもそもミミクリは、ミノムシなどの生物が木や枝の色・形に似せて敵を防ぐ、擬態を表す生物学の用語です。このミミクリが、人間の心の読み取りにとても役に立ちます。

 先日、私はあるIT企業に講演に行きました。そして、担当の20代の男性2人と話をしたところ、2人とも私が何か言った後に、「ですよね」という相づちを打つのです。

:「これについては皆さんに一度、きっちりと説明をしないといけないのですが」
Bさん:「ですよね」
:「ところで、その打ち合わせについてはCさんに念を入れないといけないし、プリントも必要なのかしら」
Cさん:「ですよね」

 「ハテナ、この会社の中で同じような反応を聞いたな」と思い返すと、すぐに分かりました。彼らの上司が相手の言葉に対して、よく「ですよね」と言ってうなずくのです。恐らく、Bさん、Cさんはこの上司を尊敬しているのでしょう。尊敬している人の物まねをする、これがミミクリです。

 こんなこともありました。外資系のP証券会社の幹部研修に行ったときです。会話の中で人事部人材開発課長さんが「さすが佐藤先生ですね」という言葉を2度言ったので、「さすが○○さん」というのが彼の癖なのだと気付きました。

 ところが、その後、研修が終わってアンケートを集め、解答欄にサッと目を通したら、そばにいた若手社員が、「さすが綾子先生、早いですね」と言ったではありませんか。これは「さすが〇〇さん」という言葉を文章の頭に付けるのを、先ほどの課長さんを尊敬しているあまり、彼がミミクリしたのだと思われます。こうしたミミクリは、語頭や語尾によく出る癖でもあります。

 言葉だけではありません。服装もそうです。スティーブ・ジョブズに憧れるあまり、IT系企業に勤務する人の中には、黒のタートルネックにジーンズというのがデキるITマンの象徴だと思っている人もいるようです。誰か活躍する人が自分の業界で出ると、その人の装いが一斉にはやっていく、これがミミクリです。

 ですから、よく知らない、日ごろあまり話したことのない部下、あるいは他部署の部下であっても、その上司の誰かとそっくりだと感じた場合、そこに「リスペクト」の関係があるということが分かるはずです。

 例えば自分が話して聞かせても相手によく伝わらない場合には、彼がリスペクトしている他の上司から一言、援護射撃をしてもらうといいでしょう。何しろミミクリするぐらい尊敬したり、関心を持ったりと、尊敬の対象になっているのですから、実によく効きます。

まとめ

言葉に出ていない部下の心を見抜く技術(2)

まねをするのは相手を尊敬している証拠です。
部下の言動が誰かに似ていると気付いたら、話題の中に尊敬する相手の事例を出したり、場合によっては、リスペクトの相手に援護射撃を頼んだりするのも効果的です。

やる気は歩幅に表れる

言葉に出ていない部下の心を見抜く技術(3)

部下のやる気計測は「歩幅60㎝(女性55㎝)」がヒント

 遠くから部下が歩いてきたのを見て、「元気がいいな」と思ったり、「疲れているな」と感じたりすることがあるでしょう。このときの判断基準は、背筋が丸く、力なく猫背になっているということもありますが、意外なことに、私たちは無意識に歩幅の大きさで相手の気力を測っていることが多いのです。

 例えばトランプ米大統領は70歳ですが、選挙会場の演壇に近づいてくるとき、スタスタと60〜65㎝の大股で歩いてきます。もちろん途中に階段があれば、そこでちょっと歩幅を狭くし、用心の気持ちが表れますが、平均的には彼の歩幅は60㎝以上です。

 日本の議員の中で歩幅の大きさで目立つのは、立憲民主党の蓮舫氏です。細身のスカートのときに大きな歩幅をキープするのは大変ですが、それでも登壇の際には約50㎝の幅でスタスタと歩きます。すると聴衆は、登壇する前から相手を見ていますから、元気がある、デキる、切れる、やる気がある、と感じるのです。

 攻撃的感情では歩幅が大きくなる一方で、悲しみや落胆で30㎝程度になることも、私の実験データで分かっています。部下の歩幅を見ることで、気持ちを理解するヒントになるのです。

 一般的な日本の建築で多いパンチカーペット、あるいはタイルカーペットの幅は50㎝が多いです。そのタイルをまたいで向こう側に足が出ている状態(私が計測した実験データ)に基づき日本人の平均身長でいえば、日本人女性で55㎝以上、男性で60㎝以上がいわゆる「元気がある」「決断力がある」と見ていいでしょう。

 これを部下の気持ちや元気を読み取るときに使ってほしいのです。部下が目の前に来て話し始める前、何気なく社内を歩いているとき、あるいは朝、会社に来るときの様子を観察してください。歩幅を見れば、その部下がやる気や元気にみなぎっている、あるいは会社で仕事をするのにあまり気が向いていない、逃げ腰である、といった内面がくみ取れます。

まとめ

言葉に出ていない部下の心を見抜く技術(3)

歩幅はその人の元気を表します。
歩幅が小さく、力の抜けた歩き方をしている部下には、プレッシャーではなく、温かい声がけや、応援の一言を。

※本記事は、2017年に書籍として発刊されたものです

執筆=佐藤 綾子

パフォーマンス心理学博士。1969年信州大学教育学部卒業。ニューヨーク大学大学院パフォーマンス研究学科修士課程修了。上智大学大学院博士後期課程満期修了。日本大学藝術学部教授を経て、2017年よりハリウッド大学院大学教授。国際パフォーマンス研究所代表、(一社)パフォーマンス教育協会理事長、「佐藤綾子のパフォーマンス学講座R」主宰。自己表現研究の第一人者として、首相経験者を含む54名の国会議員や累計4万人のビジネスリーダーやエグゼクティブのスピーチコンサルタントとして信頼あり。「自分を伝える自己表現」をテーマにした著書は191冊、累計321万部。

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