ビジネスWi-Fiで会社改造(第44回)
ビジネスWi-Fiで"学び"が進化する
中小企業と一口に言っても、そのめざすところはさまざまです。やがては株式公開まで視野に入れている成長志向の中小企業もあれば、地域に根付いて堅実に生きていくことを選ぶ中小企業もあります。
後者の場合は、背伸びをしてメガバンクのような営業規模の大きい銀行と付き合うのではなく、信用金庫をパートナーにすることも、1つの選択肢です。
信用金庫の最大の特徴は「メンバーシップ制」を採用している点です。地域の中小企業は、信用金庫に出資すればメンバーとなり、信用金庫はそのメンバーのために融資を行っていきます。このような形態の金融機関を、協同組織金融機関といいます。
銀行は株式会社として経営しているため、株主のために利益を上げなければならないという宿命を抱えています。株主の利益を追求していくためには、リスクの低い大企業向け融資に注力する方が合理的であり、中小企業向け融資はどうしても後回しになってしまうのです。
一方、協同組織金融機関の場合、株主に当たる存在は地域の中小企業になります。このため、株式会社のような利益優先の考えではなく、出資者であり利用者でもある中小企業のために組織運営していくことが可能なのです。また、同じ協同組織金融機関である信用組合よりも、会員要件や利用条件が緩やかなため、取引が始めやすいというメリットもあります。
営業エリアを限定されているという点も、信用金庫の特徴の1つです。信用金庫は原則として、営業エリア内の中小企業にしか融資を行うことができません。
銀行には、信用金庫のような営業エリア制限はありません。このため、地場の景気が悪くなれば、東京や大阪といった大都市圏に営業攻勢をかけて、融資残高の確保を図ることができます。極論を言えば、地域の中小企業を見捨てて、大都市圏の大企業にシフトすることも可能なのです。
信用金庫は営業エリアの外に出ることはできません。地域の中小企業が元気になってくれないと信用金庫自身の経営基盤も揺らいでいきます。
例えば、兵庫県洲本市に本店を置く淡路信用金庫は、淡路島周辺の市町村を営業エリアと設定しています。たとえ同じ関西圏だとしても、大阪や京都の優良企業に営業をかけることはできません。あくまで淡路島周辺の中小企業に融資をし、その収益をもって組織を成り立たせなければいけないのです。このため、銀行以上の熱意を持って地域の中小企業に対する経営支援が行うケースが多いのです。
国内の中小企業数は1999年の483万7000社をピークに減少を続け、2014年時点で380万9000社にまで落ち込んでいます(中小企業庁調べ)。信用金庫にとって中小企業の減少は死活問題です。各地の信用金庫は、地域内の中小企業数の減少を食い止めるためにさまざまな取り組みを行っています。
例えば、京都市に本店を置く京都信用金庫では、インキュベーション施設(起業・創業活動を支援する施設)に入居している企業向けの融資制度を運用しています。また、市内に多く残る伝統家屋の「町家」を使った創業も支援しており、ベンチャー企業の呼び込みに一役買っています。ベンチャー企業の資金繰りを支援し、倒産を防止することで、地域内の企業数を維持していこうという狙いが見て取れます。
大阪市に本店を置く大阪シティ信用金庫では、さらに一歩踏み込み、「シティ信金PLUS事業」と銘打った取引先開拓支援を行っています。これは信用金庫が御用聞きとなって大手メーカーのニーズを収集し、ニーズを満たす技術を持つ顧客企業を引き合わせていくものです。展示会や商談会を主催する金融機関は少なくありませんが、ここまで具体的なマッチングまで行うところは珍しいでしょう。
広島県呉市に本店を置く呉信用金庫に至っては、顧客企業の支援に特化した公益法人を設立しています。この公益法人を通じ、新商品の開発や新サービスの展開をめざす中小企業に、最高250万円の助成金を支給するという、行政機関と見間違うかのような支援を行っています。
メーンバンクの選択に当たっては、その金融機関の目に、自社がどのように映るかを意識していくことも重要です。億円単位の融資も珍しくない銀行にとって、自社はお得意様といえるような存在なのか、苦しいときに支えてくれるだけの価値を認めてくれているのか、という点がポイントになります。
信用金庫にとっては、家族経営のような企業であっても、地域に根付いてさえくれれば大事な顧客です。なぜならば、地域の中小企業を守り育てていくことと、自身の経営基盤の強化は同義だからです。そういう意味では、地域志向の強い企業に最も適したメーンバンクは信用金庫である、ということがいえそうです。
執筆=水野 春市
経済関連の調査活動を行うミハルリサーチの一員。主に地域の伝統産業や企業行動に関するレポートを作成している。
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金融機関を味方にすれば企業は強くなる!