金融機関を味方にすれば企業は強くなる!(第2回) 銀行、信金、農協…どこと取引するのが一番お得?

資金・経費

公開日:2016.10.24

 どのようなビジネスであっても、金融機関との取引は発生します。融資取引をはじめ、売り上げや仕入資金の決済、税金や公共料金の引き落とし、従業員の給料の振り込みなど、金融機関との取引なくしてビジネスは成り立ちません。

 必ず付き合わなければならない金融機関ですが、多数ある中でどこを選択するのかは経営者の判断次第です。メガバンク、地方銀行(地銀)、信用金庫、信用組合、農協など、さまざまな金融機関がありますが、実はどれも同じというわけではなく、その差は意外にも大きいので、慎重に選ぶ必要があります。

 それぞれにどんな違いがあるのか、そしてどこと取引するのが一番お得なのか。今回は、ビジネスの発展に大きな影響をもたらす金融機関の選択基準について考えます。

設立目的の違いで経営方針も異なる

 企業の業種などによって、金融機関の選択がある程度決まる場合があります。例えば海外との取引が多く、しばしば外国送金や貿易決済が必要であったり、海外進出に迫られてそのためのアドバイスや情報が必要な企業であれば、必然的に国際的な営業基盤を持つメガバンクでの取引が有利です。農業や漁業に関わるビジネスを行っている企業は、農協(JAバンク)や漁協(JFマリンバンク)のネットワークやノウハウが魅力でしょう。

 このように金融機関ごとに得手、不得手はありますが、基本的にはどの金融機関でも同様の金融サービスを受けることができます。しかし、金融サービスは同じでも、設立の目的によって組織のあり方や経営方針は異なります。

 例えば、銀行は「株式会社」であり、株主の利益が優先されます。信用金庫は、地域の人々が利用者・会員となって相互扶助を目的とした協同組織の金融機関です。利益第一主義ではなく、会員である地域の人々の利益が優先されます。さらに、営業地域も一定の地域に限定されています。

 信用組合は、信用金庫と同じ協同組織の金融機関ですが、根拠となる法律や会員(組合員)資格が異なります。また、預金の受け入れにおいて、信用組合は原則として組合員が対象ですが、信用金庫は制限がないといった点で違いがあります。農協や漁協はあくまで組合員の生活を守り向上させることが目的で、利潤を追求する組織ではないという点が根本的に銀行との相違点です。

 最近では、それぞれの金融機関の垣根は低くなっていますが、その設立目的には大きな違いがあるほか、根拠法が異なることを知っておきましょう。

メガバンクが渋る案件に、地銀が積極的な融資

 では、実際にどの金融機関と取引すべきなのでしょうか。銀行員としてさまざまな企業を訪問して、経営者に向けて各金融機関がどんな提案を行い、どんなソリューションを提供しているのかを比較した結果、かなり個別性が強いということが分かってきました。

 以前、航空機ファイナンスに高い関心を持っている顧客がいました。航空機ファイナンスとは、航空会社が航空機を購入するための代金を融資する金融商品のこと。その顧客は、利益の繰り延べ(利益を来季へ繰り越す)効果だけではなく、金融商品として積極的に航空機ファイナンスを利用したいというニーズを持っており、投資資金の一部を銀行借入で調達したいと考えていました。

 こうした複雑な金融商品は、高度な金融知識を持つ人材豊富なメガバンク向きと考えていました。しかし、メガバンクはこの話に消極的で、他の多くの銀行も同じ態度でした。そもそも投資である航空機ファイナンスに、銀行融資は適さないというのが理由です。

 そんな中で、瀬戸内海沿岸の地域を基盤とするある地方銀行が名乗りを上げ、見事大きな融資契約を結ぶに至りました。メガバンクが渋る案件に対して地銀が積極的に応じたのは、その土地柄からでした。

 その地方銀行が基盤とする地域では、造船が盛んでした。そのため、以前から船舶ファイナンス融資の経験が豊富だったのです。船舶ファイナンスと航空機ファイナンスには似ている点が多くあり、船舶ファイナンスで蓄積したノウハウを、航空機ファイナンスにも生かせるため、融資に応じることができたのです。地銀の担当者が「船も飛行機も同じですよ」と話していたのには、企業風土の違いを感じずにはいられませんでした。

 この例は少々極端かもしれません。しかし、もう少し一般的なケースでみると、不動産投資に積極的な銀行と消極的な銀行、融資リスクを大胆に取る銀行と石橋をたたく銀行といったように、金融機関により特徴があります。経営方針により、特定の業種に対して積極的に融資推進を行うということも珍しくありません。つまり、ある金融機関では断られてしまったような案件でも、他の金融機関には案外歓迎してもらえるケースが実際にあるのです。

付き合うべき金融機関の見つけ方

 どの金融機関を選ぶべきかは、その企業が金融機関を利用する目的によって変わります。「身の丈を超えた融資でも検討してほしい」「金利の低さを重視したい」「特定業界の情報提供をしてほしい」など、企業によって要望は異なるはずです。そのため、どの金融機関で取引するのが一番お得かという問いの答えは企業によって変わります。まずは金融機関との取引において何を優先するのか、経営者があらかじめ決めておくことが、金融機関の選択のポイントになります。

 また、金融機関との付き合いは、組織としてだけではなく、担当者個人にも大きく左右されることも覚えておきましょう。優秀な担当者であれば、仮に勤め先の金融機関では取り扱いできない案件でも、「残念ながらウチでは対応できませんが、この案件なら〇〇銀行に声をかけてみれば道が開けるかもしれません」といったアドバイスをくれることがあります。

 こうした優秀な担当者がいる金融機関は、たとえ希望した案件では取引ができなくても付き合っておいて損はありません。「どの金融機関と付き合うべきか?」という問いに対する答えとしては、ちょっとずるい言い方になるかもしれませんが、「どの金融機関がお得か」と相談できるような関係を金融機関の優秀な担当者と構築することが一番お得だといえるでしょう。

執筆=南部 善行(studio woofoo)

1991年、関西学院大学経済学部卒業。同年、地方銀行に入行し、長年にわたり地域に密着した経済活動を支援。支店勤務では営業統括部門の責任者として経験を積む。資産運用、税務、財務など幅広い分野の経験、知識を生かし、現在は富裕層を対象に資産運用、コンサルティング業務を行う専門部署で活躍。その他、豊富な実務経験を生かし現在は不動産、相続対策など、関連分野においてフリーのライターとして活動している。

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