ビジネスWi-Fiで会社改造(第44回)
ビジネスWi-Fiで"学び"が進化する
週末の朝、新聞に折り込まれている数多くの分譲マンションの広告に、金色の星が並んでいるのを見たことはないだろうか。これは、マンションの省エネルギーレベルなどをチェックした「スマートマンション評価制度」で満点を取ったということで、省エネ設備をしっかりと盛り込んだ事実をアピールしている。果たしてスマートマンションとはどういうものなのか。
1990年代以降、地球温暖化をはじめとしたさまざまな環境問題が深刻化する中、省エネの意識は急速に高まってきた。その傾向を加速させたのが、2011年の東日本大震災である。東日本大震災では、広範な地域で電力の安定供給が危ぶまれるというかつてない事態となり、以降、省エネは企業・個人を問わず社会的に取り組むべき重要課題として認識されている。
政府も省エネに対して施策を打ち出している。その1つが、2012年から行われた「スマートマンション導入加速化推進事業」だ。スマートマンションとは、建物全体でエネルギー管理や節電および電力のピークカットなどを行って、エネルギーの効率的な使用や無理のない節電を実現するマンションのことだ。
スマートマンションのエネルギー管理は、MEMS(マンション・エネルギー・マネジメント・システム)を通じて行われる。MEMSは、マンション内で使用する電力消費量などを計測して見える化し、接続機器の制御や電力のデマンドピーク(最大需要電力)を抑制・制御する機能を持つ。エントランスや廊下といった共用部の空調や照明を制御するとともに、マンション内の各戸のHEMS(ホーム・エネルギー・マネジメント・システム)と連動して各家庭の空調・家電機器などの使用電力を管理することも可能だ。
スマートマンション導入加速化推進事業は、MEMS導入時にかかる費用の3分の1を国が補助することで、スマートマンションの普及を促進するのが目的だ。130億5000万円という予算額に達したため、2015年1月に交付申請は締め切られたが、1685棟・計18万3296戸のマンションに対して補助が行われた。
補助金の支給と合わせて、2013年にはスマートマンションに対する理解と認知を高めるために「スマートマンション評価制度」が創設された。「エネマネ」「DR(デマンドレスポンス)」「独自の料金メニュー」「創蓄連携」「家電制御」の5つの項目で評価を行う仕組みだ。それぞれの機能を備えていれば星印がつくので、最高レベルのマンションなら5つ星ということになる。
「エネマネ」というのは、MEMSを設置してエネルギー管理サービスを受けているかどうかがポイント。「DR」は、電力が逼迫(ひっぱく)したときなどに届く節電要請に協力できれば星がつく。節電行動によって電気料金が安くなる独自の料金体系があると、「独自の料金メニュー」を満たしたことになる。太陽光パネルや蓄電池が設置されており、緊急時・災害時の電力供給体制が整っていると「創蓄連携」、遠隔地からもHEMSの標準規格である「ECHONET Lite」によって制御できる家電が備わっていると「家電制御」に星がつく。
スマートマンション導入加速化推進事業によるMEMS導入に対する補助金は2015年に終わったが、スマートマンション評価制度は社会的な必要性が認められ、一般社団法人スマートマンション協議会が引き継ぎ、現在も評価が行われている。
導入加速化推進事業で補助金を受けたマンションは最終的に1685棟・計18万3296戸。中間時点のデータでは既築と新築の割合はおおよそ7対3だったので、最終時点でも傾向は変わらないとすれば、新築が約5万5000戸になる。近年のマンションの着工戸数は全国で年間11万~12万戸なので決して少なくない比率で、新築マンションがスマート化されたことになる。
スマートマンション認定を受けたマンションはそれを消費者にアピールしているケースが目立つ。新築マンションの広告で「5つ星認定のスマートマンション」といった表記を見た方もいるはずだ。
地価・建築費の高騰の影響もあって首都圏を中心に、新築マンション価格の高騰が著しくなっている。2015年末からは契約率も低下気味だ。そのような中で、価格以外の競争力強化策に対するマンションデベロッパーのニーズは高まる一方だ。その1つとしてのスマートマンション評価制度における“星”獲得は、省エネという社会的な潮流にも合致していて、消費者にも分かりやすく有力な手段といえる。
マンションデベロッパーは、すでに販売済みや販売中の物件より今後供給する物件の設備グレードを下げるという判断をしにくい。そのようなことをすれば、情報に敏感になった消費者にそっぽを向かれてしまう恐れがあるからだ。こうしたことを考えると、導入加速化推進事業による補助金がなくなったとしても、スマートマンション化の流れが止まる可能性は少なく、かえって標準仕様になるとすら考えられる。
スマート化を図らなければ、消費者のハートはつかめない――。そんな時代がすぐそこに来ているといえそうだ。
執筆=山本 貴也
出版社勤務を経て、フリーランスの編集者・ライターとして活動。投資、ビジネス分野を中心に書籍・雑誌・WEBの編集・執筆を手掛け、「日経マネー」「ロイター.co.jp」などのコンテンツ制作に携わる。書籍はビジネス関連を中心に50冊以上を編集、執筆。
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