システム構築のための調整力向上講座(第27回) ストレスは仕事のコントロール感覚の有無で変わる

コミュニケーション

公開日:2017.12.14

 プロジェクトのリーダー自身とメンバーが心の健康を保つための「ストレスマネジメント」の2回目。前回の内容と合わせて、ストレスの構造を理解し、ストレスとうまく付き合う方法を考えるきっかけにしてください。

●コントロール感覚の欠如

 プロジェクトリーダーは、メンバーよりも大きな責任を背負っています。そのため、メンバーよりもリーダーのほうが大きなストレスを抱えている印象がありますが、実はそうでもありません。メンバーのほうが大きなストレスを抱えている場合が多いのです。

 これは「コントロール感覚の有無」が関係しています。コントロール感覚とは「自分が結果に対して影響を及ぼしている」と思えるかどうかです。

 プロジェクトリーダーは、プロジェクト運営についてある程度の裁量権を持っています。メンバーのアサインなどは会社やプロジェクトスポンサーが決める場合が多いかもしれませんが、どのようなプロセスで進めるか、誰にどんな作業を割り当てるかなどは決められるため、コントロール感覚を持てます。

 一方、メンバーにはそのような裁量権はありません。リーダーの指示に従っているだけというケースも多いでしょう。そのような状況では、コントロール感覚を持ちにくいのです。コントロール感覚を持たず、「やらされ感」を感じながら仕事をしていればストレスが蓄積していくのです。

 リーダーであっても、上司の指示がなければ動けなかったり、すべての判断を上司に仰がなければならなかったりする状況では、やらされ感が募るばかりです。

 そのため、プロジェクトの組織構造もこのコントロール感覚に大きく影響します。プロジェクトの組織構造としては「機能型」「マトリクス型」「プロジェクト型」があります。マトリクス型組織は、部門を横断してプロジェクトが組織され、リーダーの権限もある程度の独立性を有します(図2)。

部門横断でプロジェクトを構成する。プロジェクトリーダーの権限は機能型よりも強い傾向がある

 一方、機能型の組織は部門の配下にプロジェクトが置かれます。プロジェクトの意思決定には部門長の承認が必要となり、プロジェクトリーダーにとってはコントロール感覚が持ちにくい環境といえます(図3)

部門の配下にプロジェクトが位置する。プロジェクトリーダーも部門長の配下に位置するため、権限が制限される

 

●人間関係

 人の心身に人間関係が与える影響は大きいものがあります。良い上司に恵まれれば、多少つらい仕事でも「がんばろう!」と思えますし、上司とうまくいってなければ少し気に入らないことがあっただけでも「辞めてやる!」と思う場合があります。仕事での人間関係の状態は、仕事の進め方に大きな影響を及ぼします。周りと良好な人間関係を保っていれば、何かあれば気軽に相談できますし、困ったときには支援を求められます。

 ビジネスとは人間関係そのものといえます。人間関係のない仕事はほとんどありません。良好な人間関係を持っていれば、引き起こされるストレスそのものが小さいでしょうし、ストレスを和らげられます。

●将来への不安

 「先行きが見えない」。こうした状況は大きなストレス要因となります。リーマンショックが発生したとき、企業は投資を抑制し、大きなプロジェクトが軒並み中止になりました。このとき「これから自分はどうなるんだろうか」と不安を感じた人も少なくないはずです。

 先行きという意味では、キャリアパスが見えない不安もあります。「自分の進むべき方向はどちらなのだろうか」「技術者としてやっていけるのだろうか」など、漠然とした不安を抱いているときはストレスを感じるものです。

●役割とのアンマッチング

 よく見られるのが「役割とのアンマッチング」です。日本のIT 企業の多くでは、エンジニアの延長線上にマネジャーや管理職のキャリアパスがあります。しかし、エンジニアの中には「人の管理はしたくない」「ずっと技術をやっていたい」という人もいます。会社としては能力の高い人にマネジャーになってもらいたいのですが、本人としては望まない場合があるのです。

 会社が期待をかけていても、本人が「マネジャーに向いていない」と思ったまま仕事をしていれば、ストレスはどんどん蓄積します。真面目な人ほど「なんとか適応しよう」「できないのは自分の努力が足りないんだ」と考え、余計にストレスをためる傾向があります。有能で真面目な人が、役割のアンマッチングで心の健康を保てなくなるのは、非常にもったいないことです。

執筆=芝本 秀徳/プロセスデザインエージェント代表取締役

プロセスコンサルタント、戦略実行ファシリテーター。品質と納期が絶対の世界に身を置き、ソフトウエアベンダーにおいて大手自動車部品メーカー、大手エレクトロニクスメーカーのソフトウエア開発に携わる。現在は「人と組織の実行品質を高める」 ことを主眼に、PMO構築支援、ベンダーマネジメント支援、戦略構築からプロジェクトのモニタリング、実行までを一貫して支援するファシリテーション型コンサルティングを行う。

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