システム構築のための調整力向上講座(第19回) 部下を動かし成長させる影響力を養おう

コミュニケーション

公開日:2017.04.13

 現場リーダーがメンバーをまとめるためにも調整力が必要です。具体的にはメンバーをやる気にさせ成長させるための影響力が求められます。メンバーあってのリーダー、リーダーあってのメンバーです。ワクワクする目的を設定し、時には衝突しつつメンバーの成長を促しましょう。

 多くの企業では、プロジェクトリーダーは同時に上司でもあります。プロジェクトを進めながら、部下を育成しなければならない。そんな難しい立場にあるのが、現場リーダーの現実です。そのため現場リーダーには「部下を動かし、成長させる影響力」が求められます。

 リーダーがメンバーに対して発揮するべき影響力は3つあります。1つ目は、「心を鼓舞すること」。 2つ目は、「ゴールを示して導くこと」。 そして3つ目が「フィードバックを与えて成長させること」です。

 プロジェクトでは多くの場合「やったことがないこと」に取り組むわけですから、困難の連続です。時には、心が折れそうになります。そんな中でも、リーダーは自分とメンバーを鼓舞しながらモチベーションを保ち、プロジェクトを前に進めなければなりません。

 メンバーが安心して仕事に打ち込むには、先が見えていることが大切です。労働時間が長く負荷が高いことよりも、むしろ先が見えないことのほうがキツイのです。「今、プロジェクトの状態はどうなのか」「この先どうなるのか」「何をどれぐらい頑張ればいいのか」――。ゴールが見えていなければ、メンバーは力を発揮できません。

 そして、リーダーとして最も重要な役割の1つが「メンバーを育てること」です。メンバーは勝手に育つものではありません。進むべき方向性を示し、フィードバックを与え、軌道修正しながら「育む」必要があるのです。

 特にシステム開発プロジェクトのメンバーは、その多くがエンジニアで構成されています。エンジニアは仕事に対して直接的な報酬よりも、成長を求める傾向があります。メンバーは、リーダーと一緒に仕事をして成長できると思えるからこそ、プロジェクトに進んで取り組むようになります。

リーダーと部下では動機の源泉が違う

 まず、現場リーダーとして知っておくべきことがあります。それはリーダーとメンバーの「モチベーションの源泉の違い」です。

 表1 は、生産性出版「入門から応用へ 行動科学の展開― 人的資源の活用」で掲載されたデータで、「仕事に何を求めているか」という問いに対し、マネジャーとメンバーに調査した結果です。この調査が面白いのは、メンバーには「自分はどう考えるか?」を聞いているのに対し、マネジャーには「メンバーになったつもりで、メンバーがどう思っていると考えるか」を聞いているところです。

 マネジャーとメンバーの回答を比べると、大きなズレがあるのが分かります。マネジャーはメンバーが「良い賃金」「安定した仕事」「会社での昇進と成長」などを求めていると考えています。

 これに対し、実際のところメンバーは「仕事を十分に認めてくれること」「仕事に打ち込めること」「個人的問題への理解と共感」などを挙げています。つまり、認めてもらうことや、理解されることを求めているわけです。

 ここに、現場リーダーとメンバーの擦れ違いがあるのです。特に3つ目の「個人的問題への理解と共感」については、うとい現場リーダーが多い傾向がみられます。

 例えば、メンバーが家庭の事情で早く帰らないといけないとします。本人はプロジェクトの状況を考えて「悪いな」と思いながらも、仕方なく「お先に失礼します」と帰ろうとします。そんなときに、上司であるリーダーは「進捗はどうなんだ?」「そんなに早く帰る余裕はあるのか?」などと言ってしまいがちです。仮にプロジェクトが終わったときに「みんなよくやってくれた」とリーダーが労をねぎらったとしても、メンバーの心は既に離れてしまっています。

 つまり、現場リーダーとメンバーでは、明らかにモチベーションの源泉が異なるのです。リーダー自身が「こうすれば喜ぶだろう」と考えていても、メンバーからすれば全くうれしくない場合があるのです。

 孔子は「論語」の中で「己の欲せざる所、人に施す勿なかれ」と言っていますが、リーダーに関していえば「己の欲する所、人に施す勿れ」といえます。現場リーダーはこの前提をまず知っておく必要があります。

執筆=芝本 秀徳/プロセスデザインエージェント代表取締役

プロセスコンサルタント、戦略実行ファシリテーター。品質と納期が絶対の世界に身を置き、ソフトウエアベンダーにおいて大手自動車部品メーカー、大手エレクトロニクスメーカーのソフトウエア開発に携わる。現在は「人と組織の実行品質を高める」 ことを主眼に、PMO構築支援、ベンダーマネジメント支援、戦略構築からプロジェクトのモニタリング、実行までを一貫して支援するファシリテーション型コンサルティングを行う。

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