ビジネスWi-Fiで会社改造(第44回)
ビジネスWi-Fiで"学び"が進化する
働き方の多様化が加速している。「毎朝オフィスに出社して勤務する」大原則は崩れ、在宅・外出先での勤務が一般化しつつある。また、業態によっては多拠点化が進み、社員が分散している働き方もある。
しかし、一方で「近くにいない社員をどうマネジメントするのか?」というマネジメント上の課題が浮き彫りになりつつある。パソコンでの業務が増加する中、在宅や拠点にいる社員の業務がますます見えなくなっている。新常態におけるマネジメントの勘所を考えてみよう。
オフィス以外での勤務の影響については、さまざまな意見が出されている。よく聞くのは「通勤の負担が減って効率が上がった」「家族と過ごす時間が増えた」といったポジティブなイメージのもの。一方で「チームで行う業務の進捗状況が分かりにくい」「誰がどんな仕事をしているか把握できず、管理しづらい」などの声が上がっているのも事実だ。
文書の作成や整理など、一人でじっくり取り組む仕事にテレワークが適しているのは明らかだ。周囲の話し声や電話応対の声にストレスを感じていたオフィスワーカーにとっては、まさに理想的な環境だと言えるだろう。
ただし、大規模プロジェクトなど複数社員が共同で進める業務となると状況は一変する。これまで頻繁に対面ミーティングを行い、進捗状況を報告・確認してきたような場合、それぞれが自宅で自分の仕事をこなす環境では、「誰が何をしているか分からない」「コミュニケーション、情報共有が不十分」という形で新たなストレスを抱える。日本企業では全体的に「仕事は部署のメンバーが協力して進めるもの」という意識が強く、諸外国に比べて個人の裁量をあまり重視しない傾向がある。
また、企業によっては多拠点化が進む。成長のために拠点増加が必須の業種の企業や、働き方改革を進めたい企業が拠点を増やしている。
「管理職」が一人ひとりの社員をきめ細かく管理し、状況に応じて必要なサポートを行う体制だと、かえって企業の成長を阻害しかねない。目の前に社員がいない現在の状況は多くの管理職にとって悩みの種であり、どうすれば各自の仕事ぶりを把握できるかが大きなテーマになっている。
テレワーク中の部下の業務が把握できないだけでなく、そもそも個業化が進み、部下の業務がブラックボックスになっている
テレワークに取り組む社員にも悩みが生じている。テレワークを利用する際に「チームでのコミュニケーションが取りづらい」「自宅では仕事モードに切り替えにくい」「切り替えられず残業し過ぎてしまう」といった声が上がる。テレワークが便利なのは十分認めつつも、周囲の同僚、上司、部下と共に働く従来のスタイルをリモートで実現するのは簡単ではない。
テレワークでのコミュニケーションとして、まず挙げられるのはWeb会議だ。最近では映像・音声の高品質化が進み、「その場にいる(ような)感覚」で話し合える。ただし、実際に対面して行うコミュニケーションとは異なる。例えば、相手から伝わる微妙な雰囲気や感情の動きなどは、注意していなければ見逃してしまう。効率よくテキパキと会議が進められるのはいいが、その半面コミュニケーションの内容が薄く、結果として意思疎通が不十分になりがちだ。
また、出社を前提とした勤務に比べ、テレワークはどうしてもオン・オフの切り替えが難しくなる。長時間作業でも「まだやってるの?」と声をかけてくれる上司はいない。昼休みに定食屋へ誘ってくれる同僚もいない。食事は部屋で取り、仕事が終わってそのまま部屋でプライベートな時間がスタートする。これでは次第にオン・オフの区別がなくなり、生活全体のリズムが崩れてしまうだろう。働きやすさをめざして導入したテレワークで生活が不規則になり、体調を崩してしまっては本末転倒だ。すでにテレワーク実施中の企業も含め、改めてワークライフバランスを考える必要がある。
社員をサポートする管理職にとっても、テレワークで生じたこれらの課題解決は重要なテーマになっている。具体的にはテレワーク中の社員を、オフィスで顔を合わせていた状況に近い状態で「見る」のが可能な環境をつくるのがポイントだ。
テレワークがそれほど進んでいない企業もあるだろう。しかし、全般的にパソコンでこなす業務が増え、オフィスであっても一人ひとりの状況が見えにくくなっている。個業化が進み、業務がブラックボックスになっているのだ。
自分は効率的に頑張って仕事をしているつもりでも、他の社員や多拠点から比べると実は非効率的なケースがある。無駄な作業で頑張っているつもりになっているだけの可能性もある。サービス残業や体調・メンタルの不調を見逃せば、管理職の責任が問われる時代だ。迅速な対応が求められる。
在宅、オフィス、拠点にかかわらず、一人ひとりの業務が見える化できれば、他の社員や拠点の効率的なやり方を参考にできる。残業時間の削減にもつながる。業務の進捗をはじめ、情報保管や共有の状況、解決すべき問題点など業務の全体像を把握できれば、迅速かつ適切なマネジメントが行える。
目の前にいない社員のマネジメントにはITの活用が欠かせない。社員が目の前の1カ所に集まっていない状況に対応したマネジメント体制を構築するのに便利なツールやソリューションは積極的に活用したい。来るべき新たな時代を見据え、マネジメントの新たな在り方が問われている。
執筆=林 達哉
【MT】
“新常態”に対応せよ