“新常態”に対応せよ(第2回) ニューノーマル時代の新しい働き方“ABW”

テレワーク 働き方改革

公開日:2021.01.27

 政府が推進する働き方改革には、多様な働き方を実現するテレワークの推進が含まれる。ただ、そうはいってもテレワークの導入をためらう企業も少なくなく、目立って普及したわけではなかった。

 そんな状況を一変させたのは、新型コロナウイルスの感染拡大だ。“3密”を防ぐ目的などで、多くの企業がテレワークを採用した。その後、テレワークを行う頻度を減らしたり対象者を調整したりするケースが出て来たものの、企業の多くがテレワークの導入を継続している。

 依然として新型コロナウイルスの感染拡大が続き、収束の見通しは立っていない。そのため、コロナが収束しないのを前提とした“ウイズコロナ”、あるいは収束いかんにかかわらずアフターコロナを“新常態”とし、それに即した働き方に移行する動きが出ている。

 そんな時代に注目を集めているのが「ABW」という働き方だ。ABWは「Activity Based Working」の略。業務や気分に応じて、時間と場所を自ら選択できるワークスタイルを指す。ワーカー一人ひとりが多様な能力を最大限発揮でき、クリエーティブな発想を生み出すワークスタイルとして、今後、国内でも導入が進みそうだ。

ABWの2つの柱

 ABWはワーカーの時間と場所の自由度を高める。この2つが柱となる。まず、時間の自由度については、フレックスタイム制度や裁量労働時間制度の導入により、ワーカー自身が働く時間を調整することで自由度が高まる。

 次の働く場所の自由度については、冒頭のテレワークを想起するかもしれないが、ABWはそれにとどまるものではない。テレワークがオフィスから離れた場所で働く選択ができるようにして自由度を高めるのに対し、ABWはオフィス内での働く場所の自由度も高める。

 こう説明すると、オフィス内で働く場所を自由にするスタイル「フリーアドレス」を思い浮かべ、「うちでもすでに導入済みだ」と考える方がいるかもしれない。フリーアドレス制は、あくまでオフィス内で自席を固定せずワーカーが席を選べる制度だ。

 それに対しABWにおいては、自席は固定されていても固定されていなくても構わない。「こもって集中作業」「リラックスしてアイデアを練る」「周りの人と会話しながらブラッシュアップする」など多様なワークスペースを用意し、それを業務や気分に応じて自由に選択できるようにするところがポイントだ。

【ABW(Activity Based Working)とは】

ABW導入は経営者、ワーカー共に大きなメリットがある

 ABWを導入すれば、ワーカーは業務に最適な時間と場所を選択できるようなり、業務効率が高まることが期待できる。さらに、業務環境を選べるようになると、ストレス軽減の効果が見込まれワークライフバランスが取りやすくなる。

 経営者にとっては、多様なワーカーの能力を最大限に発揮しやすくなり、生産性向上が期待できるのがABWのメリットだ。また、多様な働き方をワーカーが選択できるようにすると、人材が確保しやすくなる効果も見込める。もちろん、テレワークやフリーアドレスの導入によって、オフィス賃借料の削減が可能になりコスト面でも業績に貢献する。

 このようなABWの導入の際にはポイントがある。まず必須なのが制度やツールの整備だ。ABWは働く時間と場所を自由にするため、就業規則などの労働場所、労働時間に関する諸規定を改める必要が出てくる。また情報共有、労務管理のルールを定め、それに沿った情報共有ツール、労務管理ツールを用意しなくてはならない。本人認証、端末認証といったセキュリティの整備も重要だ。

 ABWを導入すれば、部下が目の前にいるとは限らない。部下に適切なサポートを行うためには、“1on1ミーティング”を定期的に設定するなど、上司が意識的に部下とコミュニケーションを取ることが求められる。ABWではワーカー同士の多様なワークスタイルの許容が前提になり、個々のワークスタイルに対する理解もいる。例えばリラックススペースにいる、目を閉じて考えている光景を「サボっている」と捉える風土では、ABWの成果は出にくい。

 ABWの実現は一気に自由度を高めるのではなく、段階的に導入したり部分的に導入したりする手もある。例えば場所の自由度を高める場合、どんな部署にどこまで導入するのかを慎重に考え、自社に最適なABWを見つける。以下のようなレベル設定がある。

・フリーアドレスを導入し、オフィス内で自由に場所を選べる
・オフィス内に多様なスペースを用意され、自由に選べる
・オフィスのほか、自宅や会社が指定する施設(サテライトオフィス)も選べる
・オフィス内、オフィス外も含めてどこでも自由に選べる

 ABWの本格導入の際には、オフィス内に多様なスペースを用意しなくてはならないが、コロナ禍で少なからず業績に影響が出ている今、オフィス投資が難しい企業も少なくない。しかし、書類置き場になっているスペースがあれば片付けて集中ブースを作ってみる、ミーティングスペースをカフェ風にしつらえてソロワークでも使用可にするなど、それほどお金をかけずとも、ABW導入の第一歩にするのは可能だ。

 ウイズコロナ、アフターコロナ時代においては、それに合ったニューノーマルな働き方を実現しないと企業は生き残れない。ABW検討もその手段の1つだろう。

執筆=山本 貴也

出版社勤務を経て、フリーランスの編集者・ライターとして活動。投資、ビジネス分野を中心に書籍・雑誌・WEBの編集・執筆を手掛け、「日経マネー」「ロイター.co.jp」などのコンテンツ制作に携わる。書籍はビジネス関連を中心に50冊以上を編集、執筆。

【MT】

あわせて読みたい記事

連載バックナンバー