部下のやる気に火をつける方法(第24回) 「威張り屋」と「従順」の見抜き方、動かし方

人材活用

公開日:2021.02.09

 パフォーマンス心理学の最新の知見から、部下をやる気にする方法を紹介する連載。部下に対して効果的にメッセージを伝える方法を紹介する第14回は、威張り屋=支配欲求の強いタイプ、従順=服従欲求の強いタイプの見分け方と動かし方です。部下がどちらのタイプなのかを的確に判断して、それぞれにあった使い方をすることが大切です。

部下の感情にまで届くメッセージ発信の技術(14)


「威張り屋」か「従順」かを見抜き、指示の仕方を工夫しよう

 私たちの行動を突き動かしている2つの欲求があります。「支配欲求」と「服従欲求」です。部下も、どちらの欲求がより強いタイプかに大きく分かれます。

 支配欲求は「俺についてこい」という、人を従わせたい、人をコントロールしたいという欲求です。いわば威張り屋、俺様タイプです。このタイプは、見ていると簡単に分かります。とかく偉そうにふんぞり返って座り、偉そうに後輩に指示をするのです。相手ができるかどうかは見極めずに、次々と仕事を命じ、「とにかく言う通りにやってくれ」と一方的な物言いをします。

 例えば会議などでも、自分より先に後輩や同僚からいい意見が出ると機嫌を悪くします。他の人から「こうしませんか」と言われるのが不愉快で「いや、そうはいってもね」と難色を示しますが、同じ内容を自分から「こうしよう」と言うことには何の抵抗もありません。

 さらに特徴があるのは腕組みです。相手の説明を聞くときには腕を組んでいることが多く、特に腕を胸の「高い位置」に置きます。

 実に扱いにくそうな部下ですが、上司がこんな部下に物事を伝えるのは意外と簡単です。「意見聞かせてね」「ちょっと教えてほしいんだけれど」と下から出ること。何かうまくいったときには必ず名前を挙げて「○○さんのおかげでうまくいったよ、助かった」「○○さんのおかげで仕事がはかどるよ」と相手を尊重した表現を心掛ければいいのです。

 成功している上司は、自分より地位が下の人でも、その人に支配欲求があれば見抜いて、あえて敬語を使ったり、うまく褒めたりしています。その上で次のようなくぎを刺すと効果的です。「この調子で次のプロジェクトも成功させてくれよ」「君に任せておけば安心だ。今度の商談もきっちりまとめてほしい」

服従欲求型には明確な指示を出すのがポイント

 一方で「服従欲求」が強い人は、「ついていきます」「何でも言う通りにします」というタイプです。命令されることをいとわず、むしろ心地よいと思う人です。強い上司に弱い部下というのが良いコンビネーションになるのはこの例です。

 例えば社長が「さあ、今日は仕事が早く片付いたから何か食べに行こう。何が食べたい?と聞けば、「何でも」と彼は言うでしょう。同僚たちと食事に行こうというときでも、誰かが大きな声で「中華にしよう!」と言えば、服従欲求が強い人は「ランチも中華だったのに」などとは決して口にしません。服従欲求型は、違う意見を言って「従っていない」というサインを出すことは苦手です。

 さらに、彼らは一般的に声が小さく、アイコンタクトは弱く、どちらかというと猫背で、歩幅は小さめで、ゆっくり歩きます。上司はこのタイプへの言い方には工夫をしましょう。彼らには、何を、いつまでに、どうすべきか、明確な指示を出すことが大切です。

 「明日の朝までに○○の○○さんのところに行って、この書類を2部取ってきてくれ」。服従欲求型の人は必ず「はい承知しました」と言ってすぐに言われた方向に向かって動き始めます。たとえ指定された場所が遠くて明朝までに用意できるか自信がなくとも、「ノー」と言う習慣がありません。こうした点では、指導しやすいといえるでしょう。

 ただし、服従欲求型の人に何かを決めさせたり、「君の決断でこれをやってくれ」と言ったりすれば、彼らは頭を抱えて悩んでしまう可能性があります。決断を迫るような指示を出してはいけません。小さな決断をすることから慣れてもらい、徐々に大きな決断を任せるのも手です。彼らがやりやすいように「報告書を今週中にA4用紙3枚でまとめなさい」「オープニングの挨拶を1分程度するだけでいいよ」などと明確に内容を示すことで、「これならできる」と安心して働きやすくなります。

まとめ

部下の感情にまで届くメッセージ発信の技術(14)

◆ 支配欲求の強いタイプと服従欲求の強いタイプの部下がいます。前者には相手を尊重した表現を心掛け、後者には指示を明確に伝えましょう。

※本記事は、2017年に書籍として発刊されたものです

執筆=佐藤 綾子

パフォーマンス心理学博士。1969年信州大学教育学部卒業。ニューヨーク大学大学院パフォーマンス研究学科修士課程修了。上智大学大学院博士後期課程満期修了。日本大学藝術学部教授を経て、2017年よりハリウッド大学院大学教授。国際パフォーマンス研究所代表、(一社)パフォーマンス教育協会理事長、「佐藤綾子のパフォーマンス学講座R」主宰。自己表現研究の第一人者として、首相経験者を含む54名の国会議員や累計4万人のビジネスリーダーやエグゼクティブのスピーチコンサルタントとして信頼あり。「自分を伝える自己表現」をテーマにした著書は191冊、累計321万部。

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