販路拡大のキモ(第11回) 情報過多時代のお店“らしさ”発信法

IT・テクノロジー 販路拡大

公開日:2022.06.28

 インターネットの普及によって、新聞、雑誌、テレビ、ラジオといったマスメディアとリアルな口コミがメインだった情報の入手手段は大きく多様化している。誰もが手軽に情報を発信者できるようになり、情報はあふれかえっている。こうした中では、店舗が発信する情報が埋もれがちになってしまうのは当然だろう。

ブランディングでお店“らしさ”をつくる

 あふれかえる情報に埋もれることなく、伝えたい人に店舗の良さを伝え、来店してもらうために重要になるのが“ブランディング”である。ブランディングとは、店舗や商品の持つブランドに対して共感や信頼を得て、企業が提供する価値を高める取り組みともいえる。マーケティング戦略の重要な活動の一端だ。消費者に働きかける売り手目線の活動とは異なり、消費者の中に自社のイメージを抱いてもらう買い手目線の取り組みとも表現できるだろう。

 ブランドは多くの要素から形成される。店舗で言えば、「ショップの名称」「エントランスや壁や窓などの外観」「照明や商品棚など店内の様子」「店員の服装や接客態度」「商品の品ぞろえや提供されるサービス内容」など、あらゆる点から消費者が持つイメージを通してブランドが作られていく。ブランドを考える上で、重要になるのが“らしさ”だろう。ブランディングで言う“らしさ”とは届けたい価値を見える化したものだ。それが一貫したものになっていないと、さまざまな要素・場面から情報を受け取る消費者は、頭の中で混乱が生じる。

円滑なコミュニケーションにもブランド形成は有効

 例えば、“ゆとりのある贅沢な時間を楽しめる美容院”というブランドを作りたいと考えているのに店員の言葉遣いが乱暴では、ブランディングは成立しない。逆に“身近で気軽な飲食店”というブランドを作ろうとしているのに、やたらと立派な店構えではお客さまは入りづらい。

 だからこそ“らしさ”が重要になる。らしい店構え、らしい接客、らしい品ぞろえ、らしいサービスに共感する顧客が店舗を信頼するようになり、次第にコアなファン層が構築される。ブランドが形成されて生じる最も大きな効果は、顧客とのコミュニケーションが太くなるところだ。らしさに共感してくれている顧客に対してはマッチングが成立しやすく、集客や販促、PRの費用対効果も高まる。戦略的に”差異化”が図れるわけだ。

 インターネット上での情報発信でも同じことが言える。TwitterやFacebook、InstagramなどのSNSでの情報発信でもこの“らしさ”が大切になる。Webサイトのデザインやキャッチコピーもリアルの店舗と同様に、トーン&マナーを“らしさ”に沿ったものにしておきたい。

Webなどでの情報発信でも“らしさ”を意識

 

 SEO対策やMEO対策のための検索用キーワードを決める上でも、“らしさ”に共感してくれそうな層に伝わりやすいものであることが重要だ。検索というテクノロジーは、よりきめ細かに“らしさ”を伝えるフィルターの役割を担うともいえる。高級品を扱っていないのに、高級なイメージを訴求するワードを使うのは、ブランディングの観点からもマーケティングの観点からも的外れだろう。

 ブランディングにつながる“らしさ”を意識したビジネスをリアルな世界で実行する。そして、これらに対応した販促やマーケティングを行うことでコミュニケーションを効率化すれば、情報過多の時代にあっても情報を受け取ってもらいたい相手に店舗の良さを伝えられるはずだ。インターネットでの販促やマーケティングには気軽に相談できる事業者がたくさんある。やり方が分からなければ相談してみるのも良いだろう。“らしさ”の追求にぜひ生かしたい。

執筆=高橋 秀典

【MT】

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