企業を元気にする人事評価システム(第2回) 人事評価次第で生産性は30%アップする

業務課題 人材活用雇用・研修

公開日:2016.03.15

 連載2回目は、人事評価システムを導入した場合の効果を、あしたのチームの高橋恭介社長に語っていただく。導入にはコストがかかり、面倒に感じるかもしれないが、大きな効果があると高橋社長は説明する。

コップに水をためたいときは、まず穴を塞ぐ

 日本企業は一般的に採用するときには、大学卒業生を一括で大量採用します。これだと、結局いつまでも学歴がついて回ります。しかし、その会社、もしくは同業での優秀な人材のエビデンスを分析すれば、採用のときに効率の良い方法を取ることが可能です。

 終身雇用制が失われた現在では、採用した人材は入社から3年で3~5割が辞めます。このため、採用コストは従来の2~3倍もかかってしまいます。もし、採用のときにミスマッチがなく、これまでのデータから辞める確率の低い人材を採用することができるのであれば、企業はこの情報を購入すると思いませんか?

 よく言うのは、コップに水をためたいときには、まず水を注ぐのではなく、最初にコップの穴を塞ぐべきということです。この穴を塞ぐということが、既存社員への人事評価。注ぎ込む水が採用や教育研修です。穴を埋めない限り水はたまりません。しかも、優秀な人材から出て行ってしまいます。

中小企業にこそ、第三者が作った人事評価が大切

 では、私たちが提供する「人事評価のPDCA」が回り始めると、効果はどのように出るのでしょうか?

 ずばり、「労働生産性が30%向上」します。

 例えば、営業社員が100人、全体で社員数200人くらいの会社だとします。営業社員を増やしたいけれどコストの関係で採用できない、または採用しても辞めてしまう場合、採用コストは高くて大変です。

 そんなとき、私なら会社の経営者にこう言います。「社長、うちの制度を導入すれば、採用コストゼロで既存営業社員100人が130人分になります」と。

 つまり採用コストがかからずに、30人を採用したのと同じ計算になります。それくらい人事評価によって従業員の生産性が変わるのです。私たちのサービスを導入すれば、1年で効果が出始めて、2年続ければ3割生産性がアップしているのを体感できるはずです。

 中小企業の社長にとってみれば、ずっと自分の願っていたことが実現してくるでしょう。ルーティンワークしかしてこなかったセクションが、自分たちで物事を考え改善して新しいサービスを生み出すという流れをつくれます。

 従業員100人以下の中小・ベンチャー企業は、緻密に作り込まれた評価制度をほとんど持っていません。それならば、最初はあえてこだわりを持ってシステムをカスタマイズしたりせず、まずはこちらが持っている「勝ちパターン」に沿って作られた人事評価のパッケージをそのまま使って、2~3年した後で希望があれば費用と時間をかけて作り込みましょう。そのほうが圧倒的に効率的です。

 「平等という名の不平等」という言葉がありますが、仕事の成果に関係なく、一律ボーナスとして100万円をもらえるとなると従業員の誰が損をするのでしょうか。

 簡単です。頑張って高いパフォーマンスを上げた人が損をして、頑張らずにぬくぬくと過ごした人が得をします。だから行き過ぎた平等は生産性を確実に下げてしまいます。それをなくすためには、「人事評価のPDCA」を経営側がコミットして実施し続けなければなりません。

 これまで、企業が人事評価にコストと手間をかけなかった理由は、人材の買い手市場が長く続いていたからです。企業は「採用してやっている」「正社員として雇ってやっている」という立場に立っていました。

 しかし、このところは人手不足が深刻化しており、このまま改善しなければ人材の獲得競争に負けてしまいます。この傾向が強くなったのは、まさに2014年に入ってからのことです。今、対応すればまだ間に合います。

 景気回復の局面においては、資金調達に苦労する企業は少なくなり、目先の利益を求めてしまいがちです。しかし、本当の意味でここから先も長く生き抜いていくことを考えているのであれば、顧客を創造していく外向きの活動=「アウターブランディング」に100%使っていくよりも、ここで立ち止まって、10%でもいいので社員のやる気を向上させる内向きの活動=「インナーブランディング」に投資してはいかがでしょうか。

 既存社員のやる気を引き出す仕組みをつくるほうが、未来の顧客を創造するより最終的には永続的な成長には近道です。広告やプロモーション活動を行う資金があれば、その一部を社内施策に使うことが今の時代は特に必要です。そのほうが、企業として強くなっていくでしょう。また、そうすれば会社全体の離職率を引き下げることもできます。

中小企業がこれからの日本を元気にする

 2014年春、大手企業では15年ぶりに平均で2%を超える賃上げがありました。その背景には、人材不足の深刻があります。

 企業は経営計画から採用計画まで立てても、採用する人材が集まらないという課題に直面しました。さらに、採用できないだけではありません。魅力のない会社から従業員が辞める「人剥がし」が起きて、少しでも条件のいい会社へと雪崩を打って移動しているのです。こんなとき、どんな人から辞めていくのでしょう?

 もちろん優秀な人からです。今は「転職すれば給料が3割上がる」といわれる時代です。ちなみに、有効求人倍率は全国平均で1.10倍ですが、これはあくまでも平均値です(平成26年6月 厚生労働省・労働統計より)。都内の一部IT企業でいえば、2倍を超えています。さらには20代男性の51%が転職を検討しているそうです(2014年8月19日付日本経済新聞)。

 人を引きつけることのできる会社は、資金があって、その資金をきちんと使いながら従業員を大切にしていると伝えています。これまで従業員の育成をなおざりにしてきた企業は、新しい人材を採用できず、また優秀な人もいつ辞めるかも分からない状況に陥っています。

 そうかといって、ただ賃上げをするだけではダメです。賃上げに至る過程が大切なのです。最もベーシックなところでは昇給昇格制度がしっかりしていることです。根幹となる昇給昇格の人事評価の制度が、繊細に作り込まれていて魅力的に感じれば従業員はついてきます。そして、経営陣の意思が反映できる制度になっていることが重要です。

 ほとんどの経営者が潜在的にこうした仕組みを求めています。日本の全企業400万社のうちの25%、100万社くらいは私たちのサービスを望んでいるという試算をしています。

 金額にすると1件300万円くらいのサービスなので、単純計算で300万円×100万社=3兆円のマーケットがあるのではないかと試算しています。これまでだったら見向きもされなかった「人事評価」という無形商材が、今、まさに脚光を浴びていると実感しています。

 今後、政府がアベノミクスの「第3の矢」の政策を進めると、私たちのサービスを必要とする企業は増えるでしょう。市中にはお金は出回っていますが、実際に融資を受けられるのは社会に貢献し、利益を出して法人税を払っている企業だけです。そうなるには、どうにかして良い人材を引きつけて、会社としても成功・成長しなければならないのです。

日経トップリーダー/森部好樹

執筆=森部 好樹

1948年佐賀県生まれ。東京大学を卒業後、旧日本興業銀行に入行。香港支店副支店長などを経て興銀証券へ出向。ビックカメラで取締役を務め、2002年、格安メガネチェーン「オンデーズ」を設立し社長に。2007年共同広告社に移り、2008年同社社長に就任。2013年に退社して独立し、顧問業を専門とする会社、ロッキングホースを創業。現在代表取締役。

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