システム構築のための調整力向上講座(第29回) リーダーに必要なのは「カウンセリングマインド」

コミュニケーション

公開日:2018.02.08

 前回は「心の健康の3つのC」のうち、「Cognition(認知)」について述べました。今回は「Control(コントロール感覚)」「Communications(コミュニケーション)」について解説します。

Control(コントロール感覚)

 Control(コントロール感覚)は、既に述べたように「結果に対して自分が影響できているかどうか」です。

 自分の行動に対する影響が分かれば、仕事の意味を理解できます。しかし、ただ作業するだけで、自分の作業が良かったのかどうか、その作業の成果がどのように利用されるのかを把握できなければ、気力が失われます。これが「燃え尽き症候群」です。

 メンバーがコントロール感覚を持てるようにリーダーができるのは「プロジェクトの全体像を示す」ことです。そもそもプロジェクトが会社全体の戦略の中で、どのような意味を持っているのかをメンバーに説明するリーダーは多くいません。メンバーが自分たちの仕事の意味を理解し、コントロール感覚を持つためには、プロジェクトが持つ意味と、各メンバーがどのような役割を担っているのかを明確に説明しなければなりません。

 また、プロジェクトの意味をリーダー自身がよく理解していない場合は、プロジェクトスポンサー、上級管理職に聞いてみましょう。リーダー自身もコントロール感覚を向上させられるはずです。

Communication(コミュニケーション)

 米国労働安全保健研究所(NIOSH)の職業性ストレスモデル(図1)で分かるように、仕事のストレッサーに触れてから、うつなどの心の健康を損なうまでには、個人要因、仕事以外のストレッサー、緩和するもの、という変数があります。人それぞれに環境が異なるわけです。プロジェクトリーダーは、普段からのコミュニケーションで、各メンバーがどのような環境にあるのかを知っておく必要があります。また、自分の状況や悩みについて話したり、聞いてもらったりするだけでも、気が楽になったり視野が広がったりします。コミュニケーション自体が、緩和するものになるわけです。

 ここでリーダーに必要となるのが「カウンセリングマインド」です。カウンセリングマインドとは、成果の前に、相手に1人の人間として向き合い、人間関係の構築を第一に優先する心がけを意味します。リーダーは責任ある立場ですから、どうしても「成果思考」に陥りがちになります。しかし、プロジェクトが成果を上げるためには、メンバーの1人ひとりの頑張りが必要です。そして、メンバーは1人ひとり、心を持った人間なのです。

「程よいいい加減さ」を持つ

 エンジニア出身のリーダーは、細かい点が気になる完璧主義者の人が多いようです。クライアントや上司が求めている品質よりも、自分が納得できる品質であることを大切にしたり、少しでもミスがあれば気にしたりします。これは長所ですが、自分に厳し過ぎれば、その分、ストレスを感じることも多くなります。

 また、自分に厳しいリーダーは部下にも厳しい傾向があります。本人の基準が高いわけですから、部下に求める基準も高くなります。しかし、有能なリーダーが持っている高い基準を求められるメンバーはたまったものではありません。リーダーの能力あっての基準ですから、メンバーが同じ能力を持っていなければ、実現のしようがありません。実現できない要求にさらされることは、メンバーにとっては大きな負担です。

 リーダー自身と、メンバーの心の健康を保つには、「程よいいい加減さ」を持ったほうがよいのです。完璧主義は素晴らしいものですが、それで自分やメンバーを傷つけては意味がありません。

 程よいいい加減さを持つには、自分がメンバーや自分自身に高い要求を突きつけているのに気付いたときに「ま、いっか」と口に出してみることです。私もかつて、部下に厳しい要求を突きつけていることに気が付いたときに「ま、いっか」と口に出してみると、不思議なほどに力が抜けて、「考えてみれば、そんなにこだわることじゃない」と思えました。自分だけではなくメンバーの表情も和らいで、笑顔で「難しいですが、やれるだけやってみます」と言ってくれたのでした。

 ここ数年、コーチングやカウンセリングがマネジャーの必須スキルとして注目を浴びていますが、テクニックだけ収集しても全く意味がありません。それは相手を操作しようとしているだけです。人は操作しようとされていることには敏感に気が付きます。これでは人間関係の構築など難しいでしょう。リーダーにとって、何よりも大切なのは「相手と向き合う心」です。

 まとめ
●低次の欲求が満たされなければ、責任感や創造性は生まれない
●明確かつ、一定以上の難易度を持つ目標を設定する
●自分はできるという「自己効力感」がモチベーションを維持する
●理論-方法-文脈の3点セットで指導する
 

執筆=芝本 秀徳/プロセスデザインエージェント代表取締役

プロセスコンサルタント、戦略実行ファシリテーター。品質と納期が絶対の世界に身を置き、ソフトウエアベンダーにおいて大手自動車部品メーカー、大手エレクトロニクスメーカーのソフトウエア開発に携わる。現在は「人と組織の実行品質を高める」 ことを主眼に、PMO構築支援、ベンダーマネジメント支援、戦略構築からプロジェクトのモニタリング、実行までを一貫して支援するファシリテーション型コンサルティングを行う。

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