人に語れるようになる“ITのツボ”(第11回) 知らないと損。複合機×クラウドストレージの実力

ネットワークセキュリティ クラウド・共有

公開日:2023.06.29

 オフィスにはまだまだ、紙で処理している業務が残っている。大手のIT企業などなら業務システムが完備されていて、会議資料は電子データで配布され、伝票や領収書、各種申請もシステム上で処理できるだろう。しかし中小企業においては、取引先からFAXで届く注文書や、手書きの申請書は簡単にはなくならないだろう。業務の基本に書類があるだけに、変革は容易ではない。

 そうは言っても業務効率化の掛け声は大きく、地球環境との共存を考えるとペーパーレス化も進めたいところだ。特に、業務効率化という点では、紙の書類が業務プロセスの起点になっていては大きな変化を起こしにくい。せめて書類がデータ化されていれば、物理的なファイルがある場所にいなくてもデータを確認して業務を進められる。取引先から届いたFAXの注文内容を確認したり、出先で書類データを確認し問い合わせに応えたりできる。

複合機とクラウドストレージで業務プロセスを変革

 パソコンなどで作成したデータを蓄積する場所としては、長い間ファイルサーバーやNAS(ネットワーク接続ストレージ)などが使われてきた。しかし、社内のネットワークにつながっているこれらの機器は、オフィスでの利用ならば有効に活用できても、社外からの利用を考えると不自由さが否めない。社外からスムーズにデータにアクセスできて、セキュリティも確保したいと考えたとき、データの蓄積場所はクラウド型ストレージサービス(以下、クラウドストレージ)が最も適している。インターネットにアクセスできる環境があれば、パソコンのデスクトップ操作と同様の簡単な操作で安心してデータを活用できる。

 そして、紙の書類が原因で業務プロセスを変革できない場合に、クラウドストレージと組み合わせると有効に機能するものとして複合機がある。複合機はプリンターとスキャナーの機能を備え、FAXの送受信などでも活躍するオフィスの必需品だ。複合機を使えば、紙の書類をスキャンして簡単に電子データに変換できる。これをクラウドストレージに格納すれば、紙を主流にした業務を比較的容易にデジタル化した業務に置き換えられるのだ。

 紙の書類をデジタル化してクラウドストレージに格納すれば、場所や時間に縛られずに業務を遂行できるようになる。情報を確認できず、外出先や出張先からいったん帰社して処理しなければならなかった業務も、クラウドストレージにアクセスできるパソコンがあればその場で閲覧して処理できる。パソコン以外に、スマートフォンやタブレットでもアクセスが可能だ。有効期限付きの共有リンクを発行するなどして社外との情報共有も容易になる。

 クラウドストレージはペーパーレス化にも貢献する。新たに作成する書類は紙に印刷せずにファイルをクラウドストレージのフォルダーに格納すれば、パソコンやスマートフォンからすぐに参照できる。FAXで届く注文書などは、FAX受信と同時に複合機がクラウドストレージの特定のフォルダーに転送する設定にすれば、電子データで注文書をすぐに確認できる。外出先でも在宅勤務でも、今届いたFAXの注文に対して次のアクションを起こせるのだ。

セキュリティにも十分に配慮

 クラウドと聞くと、心配なのはセキュリティだろう。顧客の情報や企業の重要方針などの書類を保管するのだから、リスクは抑えたい。だが、最新のクラウドストレージは、セキュリティの観点からもオフィスに設置するファイルサーバーやNASを上回る性能、機能を備えている。

 その1つがフォルダーごとのアクセス権の設定だ。部署や役職、ユーザーごとに、フォルダーへのアクセスの可否や、ファイルの閲覧/修正の権利を設定できる。アクセスするためのユーザー認証機能も豊富だ。スマートフォンなどのSMSを使った2段階認証や、閉域網だけからアクセスを可能にする回線認証などの設定が可能で、なりすましを防げる。さらにクラウドストレージには、セキュリティが高い国内の複数のデータセンターを利用し、更新したファイルは自動バックアップを行うといった手厚いデータ保護の環境を提供するサービスもある。これにより災害などを想定したBCP(事業継続計画)対策にもつなげられる。

 複合機とクラウドストレージの組み合わせで、多くの性能・機能を有効に活用した多彩なメリットが得られる。それだけに、目的の用途に対してどのような設定や機能の活用が必要なのかといった導入サポートや、運用開始後の使いこなしといった運用サポートが不可欠だ。複合機×クラウドストレージを業務効率化やペーパーレス化の第一歩として検討するならば、複合機とクラウドストレージの双方の知見を持つ専門家のいる事業者に相談してみるといいだろう。

※掲載している情報は、記事執筆時点のものです

執筆=岩元 直久

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