一足お先に!IT活用でパワーアップ(第25回) 介護、福祉業の情報共有。セキュリティ確保に注力

データ通信 ITアウトソーシング運用管理・監視

公開日:2018.02.28

 介護、福祉、障がい児向けデイサービスといった事業を複数拠点で展開するハッピーライフでは、中堅・中小企業向けのセキュリティに関するトータルサポートサービスを導入。セキュリティ体制を強化した。セキュリティに関してはサービス事業者に任せ、安心して業務に注力できるICT基盤を確立した。

<ハッピーライフ株式会社>

 兵庫県神戸市で2008年に設立。在宅で生活している介護が必要な高齢者に対してホームヘルパーを派遣する「ヘルパーステーション御影」を運営。ダスキンと提携して介護サービスの一部として身の回りの世話や家事の手伝いなどをする「ホームインステッド事業」も展開している。2017年には障がいのある中高生を預かって療育を提供する「放課後等デイサービスみらい」を開設。その後、小学生を預かる「放課後デイサービスみらいキッズ」も開設するなど事業を拡張している。

 兵庫県神戸市に本社を置くハッピーライフは、「自立支援」と「利用者本位のケア」をモットーに高齢者介護事業を行っている。同社に転機が訪れたのは、2017年4月のこと。障がいを持った就学児を放課後受け入れて、療育を行う放課後等デイサービス事業の開始だった。

 そのサービス開始に当たって新たに事業所を開設。そこにもパソコンが設置され、利用者の個人情報の取り扱いが必要になる。そのため、情報のセキュリティをどう確保するかという課題が浮上した。

 代表取締役の矢野雅也氏は「私たちのサービス対象となるのは高齢者や障がい児の方たちですが、当社としてその個人情報について非常に配慮して扱わなければならないと考えています。これまでもセキュリティの確保は大きな課題でしたが、拠点が複数になることで、よりきちんと取り組む必要に迫られました」と語る。

 現状の多くの事業所と同じく、ハッピーライフでもさまざまな業務にICTは欠かせないものになっている。毎月の請求・支払業務、自治体への申請や報告、従業員の給与計算などに関して、パソコン上でデータを処理するだけでなく、ホームインステッド事業で提携するダスキン本部のシステムに接続して、事業報告を計上する業務もある。

 「危惧していたのは情報漏えいです。コンピューターウイルスによって被害を受けることもある話は聞いていて、どう情報を守れば良いか悩んでいました」と矢野氏は話す。会社を立ち上げた際に、ウイルス対策ソフトは導入していたが、更新が徹底していないなど、社内の情報セキュリティのレベルは高くはなかった。

 矢野氏はセキュリティの確保だけでなく、複数事業所で情報を共有するシステムの構築も同時に希望していた。具体的には、どの拠点からも本社のパソコンの情報を活用できる仕組みだ。矢野氏は拠点間を移動しながら仕事をすることが多い。どの拠点からも、本社のフォルダに格納しているファイルを使える環境が必要だった。

VPNでセキュリティ確保し情報を共有化

 高いセキュリティレベルを確保しつつ、情報の共有化を進めるには拠点間を結ぶ専用のネットワーク網を構築する手がある。しかし、同社にはそれだけの投資をする余裕はなかった。それに対してNTT西日本が提案したのは、VPN(バーチャル・プライベート・ネットワーク)で、仮想の閉域ネットワークを構築し、拠点間のセキュリティも確保するというものだった。

 「VPNを導入したことで、拠点から本社にあるハードディスク上のフォルダを共有できて、ファイルを呼び出して作業できます。これでどこでも同じように仕事ができるようになりました。まさに革命的に仕事がやりやすくなりました」と矢野氏はVPN導入の効果を語る。

 このときNTT西日本はUTM(※1)の導入を提案した。UTMは統合脅威管理のことで、セキュリティ監視やログの収集などネットワークを総合的かつ集中的に管理する仕組みだ。UTMを導入すれば、効率的に高度なセキュリティ体制が確立できる。

 ただ、この提案はいったん見送られることになった。「UTMを設置してセキュリティを向上させるという提案を受けたのですが、セキュリティ機器は移り変わりが激しく、長期間のリース契約には不安があって、踏み切れませんでした」と矢野氏は当時の判断を振り返る。

 その約半年後、事態は大きく動いた。同社が始めた「放課後等デイサービスみらい」は中高生を対象にしたものだったが、「もっと下の年齢の児童も預かってほしい」という声が上がっていた。それに応える形で、小学生を対象にした「みらいキッズ」を2017年11月に開設することになったため、利用者が増えて取り扱う個人情報も増加する見通しとなったのだ。

 ちょうどその準備を進めている10月、NTT西日本が「セキュリティおまかせプラン」(※2)の提供をスタートさせた。セキュリティおまかせプランは、主に中堅・中小企業の顧客向けのセキュリティ対策に加えて、防御から運用監視・対処までのトータルサポートを提供するサービスプランだ。遠隔から専用のクラウドサーバーを介してUTMを設置した企業に対してネットワークの通信状況を常時監視する。

 注目したポイントはUTMを月額レンタル(※3)で使用できるところだ。「長期にわたって契約するリースではなく、月額レンタル型でUTMを導入できるので、初期コストが抑えられるのが魅力的です。加えて、24時間365日(※4)の遠隔監視や有事の際の遠隔サポートといった、人による手厚いサポートがあることにも大きな魅力を感じ、『みらいキッズ』のスタートとともに導入を決定しました」(矢野氏)

セキュリティは専門家に任せて本来の仕事に集中

 従業員15人で3拠点の事業を展開する同社が、当プランを導入して、どんな効果があったのだろうか。矢野氏は「良い意味でセキュリティのことを忘れられるようになった」と語る。これまで端末一つひとつのセキュリティ対策のために、セキュリティソフトのインストールや更新にかかっていた手間が減った。本来の業務に時間が割ける。いざというときに連絡できる相手がいる安心感も大きい。

 「これまで自分で調べながらセキュリティ対策を考えてきましたが、常に不安がありました。もちろん、代表取締役としての本来の業務があるわけですから、日々セキュリティの心配ばかりもしていられません。そんな状況から、今は専門家に任せることができるようになりました。安心しています」(矢野氏)

 当初はセキュリティ上の制限のために、仕事上利用したいWebサイトにアクセスできないトラブルもあった。しかし、契約者専用のコールセンターに連絡すると、すぐに接続できるように遠隔で設定変更してもらえた。

 複数の事業所のどこからでも安心してシステムが利用できるメリットは大きい。矢野氏は「規模に関係なく、企業にとってこうしたサービスは必需品になる」と評価している。

※1 UTM機器はすべてのコンピューターウイルス、スパイウェア、不正アクセスなどへの対応を保証するものではない
※2 セキュリティおまかせプランの利用には、フレッツ 光ネクストなどプロバイダーの契約・料金が必要
※3 (ゲートウェイレンタルの場合)
(1)契約終了後、レンタル機器の返却がない場合、または毀損した場合、端末代金相当が請求される
(2)最低契約期間は1年間で、1年ごとに更新(契約更新月に解約の申し出がない場合は自動更新)される
(ゲートウェイ購入の場合)
(1)ゲートウェイセキュリティ機器の最長利用期間は7年間
(2)最低契約期間は1年間で、1年ごとに更新(契約更新月に解約の申し出がない場合は自動更新)される
※4 設備の保守・メンテナンスなどによりサービスを停止する場合がある

※掲載している情報は、記事執筆時点のものです

執筆=山崎 俊明

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