デジタル化に向けた次の一手(第8回) 御社の経理業務、滞っていませんか?(後編)

業務課題 人手不足対策経営全般

公開日:2024.02.29

インボイス制度から働き方改革まで制度への対応が重荷に

 経理部門に関連するトピックとしては、インボイス制度と改正電子帳簿保存法への対応が大きな話題だった。システムやツールを導入したり、業務フローを改定したりと、対応や移行のための負荷が少なからず発生した。さらに、定常的に新しい業務として安定した運用を行うためにも負荷がかかる。経理職員の負担は増え、人員が増えない環境下では労働時間が延びてしまう。

 一方で働き方改革の推進も求められる。時間外労働の上限規制が中小企業にも施行されてから早くも数年が経過した。特に経理部門などのバックオフィス部門は、毎月の締め日や、年末調整、決算などのタイミングに繁忙期があり、長時間の残業で業務が成り立っていた企業も少なくない。

 こうした状況から、ワークライフバランスを保てるような働き方への変化が求められるようになってきた。歴史的な人手不足、採用難の時代であり、いわゆる「ブラック」な働き方を強要するような実態が明らかになると、採用にも大きなダメージを与える。働きやすい環境も、企業による従業員への提供価値の1つとして強く認識しないといけない。

バックオフィス業務の変革に経理のシステム化が有効

 バックオフィスには多くの業務がある。直接の売り上げなどに影響がないために業務改善のメスが入りにくいこと、人事交流が少なくタコツボ化しやすいといったことから、旧態然とした業務が継続して行われているケースが少なくない。もともと、紙の伝票や請求書、納品書などを取り扱っていたことからデジタル化も遅れを取ることが多く、システムが導入されていてもデータの手入力が必要だったりする。

 経理業務だけを見ても、経費精算の起票から伝票処理、システムへの投入、請求書発行、発送、消込、会計処理のための仕訳など、多くの業務が紙と旧来型システムを行き来するような形で処理されている。

 しかしこうした業務は、近年のクラウド型のシステムや業務ツール、RPAなどの自動化ツールを組み合わせることで、定型業務部分ならば、かなりの自動化が可能だ。請求書発行業務を請求書の電子化システムに移行すれば、手書きなどで作成した請求書を、印刷して押印して、封筒に入れて郵送するといった毎月の業務が、請求金額と日付を入力するだけで電子的に完結する。ペーパーレス化も進められ、環境にも優しい取り組みになる。請求金額を業務システムから転記する作業は、RPAなどを使って夜中に自動実行させれば手間いらずになる。

 これらは一例にすぎない。バックオフィス業務にはかゆいところに手が届くようなシステムやツールが多く提供されている。自社の課題が整理できたら、専門の事業者などに問い合わせてみることで、自社に見合ったコストで課題解決につなげる方法を紹介してもらえる可能性は高い。

社員のモチベーションと健康、そして企業競争力を担保する

 経理部門の業務だけを見ても、自動化の可能性は多くある。自動化によって時間圧縮できる業務は、主に定型業務であり、毎日、毎月のように繰り返し誰かが作業しなければならないといった性質のものだ。こうした業務は、経理職員自体のモチベーションを下げている可能性がある。出社して、毎日ルーティンのように同様の処理をしていたら、仕事に対する興味関心を失ってしまう。モチベーションが低い状態ではミスをしやすくなる傾向もあり、叱られたらやる気を失うといった悪循環を招く。

 システムやツールを導入して、定型業務を一部でも自動化することができれば、人間である経理職員の仕事の仕方が変化していく。ルーティンの業務は、システムやツールにまかせてボタン1つ押すだけになり、結果を確認すればOKになる。物理的な時間の余裕ができることで本来業務に取り組みやすくなるだけでなく、ミスが許されない定型業務を遂行しなければならない精神的なプレッシャーからも解放される。人間の判断が求められる業務へのシフトや、これまでできなかった新しい業務へのチャレンジも可能になるだろう。

 デジタル化やAI化による自動化が進むと、従業員が不要になって解雇されるのではという不安も従業員の中にはあるかもしれない。しかし人手不足は深刻で、従業員を減らすための自動化よりも、少ない労働力で定型業務を回しながらより生産性の高い業務に手をつけていくための自動化が求められている。長時間労働をせず、創造性のある業務を行えるようにすることで、従業員の健康的な暮らしを守ることもできる。そうした取り組みは巡り巡って従業員のモチベーションを高め、企業の持続性や競争力の向上につながっていくことになる。

執筆=岩元 直久

【MT】

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