ビジネスWi-Fiで会社改造(第44回)
ビジネスWi-Fiで"学び"が進化する
最新ITを活用して業務効率化や働き方改革を実現したいものの、初期費用を捻出できない――。このような悩みをかかえる企業にお勧めしたいのが、中小企業・小規模事業者のITツール導入を支援する「IT導入補助金」の制度だ。連載第3回ではこの補助金の目的を解説した。今回は具体的な申請方法を紹介する。
IT導入補助金は、経済産業省の肝煎りの事業だ。国が補助金を通じて、中小企業・小規模事業者のIT導入を後押しすることで、業務効率化と売り上げアップをサポートするという制度だ。補助の対象はソフトウエアやクラウドサービス利用費など。補助率は1/2以下、補助額の下限は15万円、上限は50万円となっている。
政府・自治体の補助金制度を利用するには、通常、複雑な申請作業が必要になる。このIT導入補助金は、ITベンダー・サービス事業者(IT導入支援事業者)が代理申請を行う仕組みになっている。手続きはITベンダー・サービス事業者と相談して行えば、面倒な申請手続きの負担も少ない。
それでは補助金申請のために、企業は具体的に何をしなければならないのだろうか。
申請準備のステップは4つと考えればよい。(1)「経営診断ツール」で課題を把握(2)ITベンダー・サービス事業者とITツールを選定(3)「SECURITY ACTION」の宣言(4)申請書類の作成だ。
第1ステップは、IT導入補助金サイト内の経営診断ツールで自社の課題を把握する。診断の結果が申請に必要なので、必ず診断しておこう。
第2ステップでは、IT導入支援事業者検索ページから「営業エリア」「取り扱い業種」などを絞ってITベンダー・サービス事業者を検索する。ただ、目的と一致した事業者がすぐに探し出せないかもしれない。その場合は、先に導入したいソフトウエアやクラウドサービスのめどをつけよう。例えば、小売業なら外国人対応のための翻訳サービスや多言語対応のホームページ制作ソフトなどが挙げられる。グループウエアや顧客管理といったソフトも補助対象だ。
IT導入補助金サイトでは、業種や機能別にITツールを検索できる「ITツール選定ナビ」も提供している。過去に、活用してみたかったが費用の面で導入をためらっていたITツールがあれば、ぜひ検索してみてほしい。補助金申請の対象になっている可能性がある。
次の第3ステップは、決して忘れてはいけない重要な条件だ。
第3ステップとして、IT導入補助金を申請するには、情報処理推進機構(IPA)が創設したSECURITY ACTIONへの取り組みを宣言する必要がある。SECURITY ACTIONとは、中小企業自らがセキュリティ対策の取り組みを自己宣言する制度だ。「一つ星」と「二つ星」がある。自己宣言に必要な実施項目は、高度なIT知識を必須とするものはないので、宣言がまだの企業はすぐにでもSECURITY ACTIONを自己宣言しよう。詳しくは連載第2回を参考にしてほしい。
第4ステップでは、ITベンダー・サービス事業者へ連絡する。活用したいITツールが見つかったら、ITツール検索結果の下に記載されている「ITツール詳細」ボタンをクリックしてみよう。費用も含めた詳細ページに移動する。そのページの下には「事業者詳細」ボタンがある。クリックすると問い合わせ電話やメールアドレスが記載されたページが表示される。ITベンダー・サービス事業者から見積もりを取る際にIT導入補助金を利用したい旨を伝えれば、事業者も補助金の代理申請を迅速に行いやすい。申請には「申請マイページ」への情報登録などが必要だ。事業者に相談しながら進めれば、より正確な手続きが可能となるだろう。
気になる補助金の公募期間は、下記の3回となる。
●4月20日~6月7日(一次)
●6月20日~8月3日(二次)
●8月中旬~10月上旬(三次、予定)
申請できるのは1回のみだが、前回の公募で不採択になった場合は次回以降に再申請も可能だ。なお、申請には準備作業が必要なので、日数の余裕はたっぷりと取っておきたい。
ここで気を付けなければならないのは、申請が採択される前にITツールを導入してはいけないということ。事務局からITベンダー・サービス事業者に通知があった後、定められた期間内に納品・導入しないと補助金は受けられない。一刻も早く活用してみたいのはやまやまだが、導入スケジュールをしっかり把握しておきたい。
無事にIT導入補助金を得てITツールを利用できたら、その効果を5年間(計5回)にわたって事務局に報告する義務がある。報告が求められているのは、売り上げ、原価、従業員数、就業時間などの情報。いずれも、企業が自ら業務改革をするためにも不可欠な指標だ。効果が上がればIT活用をより一層進められるだろう。
執筆=山口 学
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