懐かしのヒット商品(第2回) ゲーセン文化まで生んだ「インベーダーゲーム」

雑学

公開日:2016.12.20

 1978年(昭和53年)に発売され、日本中に大ブームを巻き起こした「インベーダーゲーム」。単なるヒットゲームではなく、昭和の文化史では必ず取り上げられるほどの社会的影響力がありました。

 このゲームの人気により、日銀関係者が硬貨の流通量に右往左往し、さらに街中の風景に「ゲームセンター」が定着。それまでマイナーなビジネスだったゲーム産業が、社会的に認知されるきっかけにもなりました。

なぜインベーダーゲームはそこまで人々の心をつかんだのか、大ヒットに至った要因を探ります。

ゲーム機がレジャー施設の定番になるまで

 インベーダーゲームが生まれた背景には、米国でのゲーム人気がありました。米国では1962年に、マサチューセッツ工科大学の学生によって「スペースウォー(2機の宇宙船が互いに光線銃で撃ち合って競うプログラム)」という原始的なコンピューターゲームが開発され、それが人気となり、米国各地に広まっていました。

 その頃、大学で電子工学を学んでいたノーラン・ブッシュネル氏(後に世界初のゲーム専門会社「アタリ」を創業)は、コンピューターゲームの面白さに着目。遊園地で働いていたブッシュネル氏は、レジャー施設にコンピューターゲームを配備すれば、ビジネスにできると思いつきました。

 そこでブッシュネル氏は、コンピューターゲームを小型の筐体に収まるように改良。スペースウォーの「撃ち合うルール」をテニスゲームに変えたり、ボールでブロックを崩していく「ブロック崩し」に発展させたりました。結果的に両ソフトとも全米でヒットし、コンピューターゲームがビジネスで成功した初のケースといわれています。これ以降コンピューターゲームは、デパートの屋上や遊園地といった遊びのシーンで、人の目に触れるようになりました。

動く敵を消すのが面白い

 ブッシュネル氏のゲームは1970年代中頃に日本にも輸入され、特にブロック崩しタイプのゲームがヒットしました。その頃、玩具会社で働いていた西角友宏氏は、ゲーム人気に目を付けた営業担当から「これ(ブロック崩し)を超えるものを作ってくれ」と依頼され、インベーダーゲームを開発します。

 開発に当たって西角氏はまず「面白さの本質」をつかもうとしました。ブロック崩しゲームの人気の秘訣は「ブロックを全部消すというシンプルで明快な目標、達成したときの爽快感や満足感」が魅力の核だと理解しますが、ただ踏襲するだけだとオリジナルを超えられません。面白さを高めるためさまざまな工夫が凝らされました。

 まず1つ目は「双方向性」の魅力です。「動かないブロックを消していくだけでも面白いのであれば、攻撃してくる敵を撃ち消していけば、さらに面白くて満足できるだろう」と、西角氏は敵キャラが攻撃してくる設定を採用します。

 2つ目は「難易度を高めて飽きないようにする」です。ステージをクリアするたびに攻略をするためのレベルを高くすることで、「シンプルすぎると飽きる」という弱点を押さえる狙いがありました。

 難易度の高さは、この他にも効果があります。レベルが高くなるほど勝つのは難しくなるため、プレーヤーはゲームオーバーのたびに悔しい思いをします。しかしそれは「次こそは記録を超えてやる!」というモチベーションにもつながるため、自発的にお金をつぎ込むユーザーも出てくることになります。西角氏は上司から「(難易度を)もっと易しくしたら」と言われても従わなかったそうです。

 こうして発売された「スペースインベーダー」は、発売されるや空前の大ブームを引き起こします。一説には、1日で大卒者の平均初任給を稼いだとか、発売元のタイトーの売り上げは5000億円に上ったという話もあります。なお、「スペースインベーダー」という名前はタイトーの商品名です。「インベーダーゲーム」は、スペースインベーダーの模倣品を含めた俗称となります。

 海外でも大ブレークします。アタリ社がスペースインベーダーを家庭ゲーム機用に移植すると、史上初のソフト百万本突破を記録する大ヒットとなりました。ソフトバンクの孫正義氏も、若い頃はインベーダーゲームを海外に販売する仕事をしていたといいます。

「100円で遊ぶ」という文化をつくり出す

 インベーダーゲームの成功の裏には、コンピューターという新しいイノベーションがありました。技術の進歩でゲームプログラムが小型の筐体に収められ、普及できたことで、ヒットの下地となる環境が整いました。

 もちろん、ハードだけではヒットしません。西角氏のように、ユーザーを熱狂させるソフトを作る人材も必要です。ハードとソフトの両面において、人を引き付ける革新が結び付いたことが、新しいビジネスの成功を生み出したのです。

 イノベーションには、新たな価値を生み出して社会的に大きな変化を起こす側面がありますが、インベーダーゲームもまさにそれです。従来なかった、100円で遊べる場をつくり出し、愛好する人たちが集まって楽しめるひとときをもたらしました。それが現在も、ゲームセンターという形で続いています。

 タイトーが運営するゲームセンターには、今でもスペースインベーダーの敵キャラがロゴとして使われています。

執筆=味志 和彦

佐賀県生まれ。産業技術の研究者を経て雑誌記者など。現在コラムニスト、シナリオライター。

【T】

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