新規事業に挑戦!(第5回) 販売手法や商品の組み合わせをずらして勝機をつかむ

販路拡大

公開日:2016.08.08

 新卒で地方銀行に就職するも、1年で退職しプロフィット・ラボラトリーを創業した平川雅之氏。スポーツ施設の仲介業で失敗し、マーケティングの大切さを痛感。2008年頃からは企業をプロデュースする事業をスタートした。現在では、マスコミとのリレーションシップを一切構築せず、プレスリリース1枚で、約300社もの企業をマスコミに登場させた実績を誇る。

プロフィット・ラボラトリー(企業をプロデュースする事業)第1回

 世の中には、良い商材を開発している企業が数多くあります。しかし、それがヒット商品になることは極めてまれで、埋もれていくものの方が多い。ヒット商品が生まれない一番の要因は、マーケティング活動にあります。せっかく良い商品やサービスを生み出しても、多くの企業は世の中にうまくPRできていないのです。

 プロフィット・ラボラトリーは企業の良い製品やサービスを世の中に広める支援をしています。同社の強みは、徹底した「ズラし」の戦略です。商品・顧客・販売方法を少しずつずらしながら顧客企業と一緒に商品やサービスをプロデュースしています。

 たいていのPR会社は、マスコミに顧客の商品などを売り込むとき、記者や番組担当者とのリレーションシップを築くことでメディア露出を図ります。しかし、プロフィット・ラボラトリーでは、マスコミとのリレーションシップを一切構築せず、プレスリリース1枚で、これまでに300社もの企業をマスコミに登場させました。

 通り一遍に顧客の製品・サービスを「売り込む」のではないところがミソです。商品を売り込もうとする顧客企業と並んで、「マスコミも顧客」と捉えているのです。

 プロフィット・ラボラトリーでは、顧客(=マスコミ)がどんな情報を欲しがっているのかを徹底的に分析、マスコミはトレンド情報を欲していることをつかみ、それを応用したマーケティングをしています。同社は、社会トレンドと顧客商品をリンクさせ「世の中ごと」に変換した情報を送っています。このため、同社がプロデュースする多くの顧客企業がマスコミに取り上げられるのです。

響くコンセプトと「ズラし」の戦略

 新しい事業や製品、サービスを開発したものの、その広め方が分からない――。そのような顧客企業をサポートし、新しい販路を開拓したり、マスコミへのPRなどを代行したりしているのがプロフィット・ラボラトリーだ。

 顧客企業を支援する方法は、「商品」「顧客」「販売方法」の3つをずらすというもの。顧客だけをずらす、商品だけをずらす、商品と顧客をずらすなど、その組み合わせは全部で8通りあります。「従来の方式にとらわれず、これらを少しずつずらしていくことで、圧倒的な他社との差異化が図れる」と平川雅之社長は話します。

 この3つを、ずらしたりずらさなかったりする中で、新しいメッセージ、つまり顧客企業から売り込みを依頼された事業や商品のコンセプトが見えてくるといいます。プロフィット・ラボラトリーの事業戦略において、このコンセプトづくりが最も重要だと話す平川社長は、次のように説明します。

 「優れたコンセプトとは、ワンセンテンスで説明できて、情報の受け手から能動的な反応が得られるものです。『へー、面白いですね!欲しい、行ってみたい!』というのが能動的な反応で、『へー、そうなんですね……』という普通の反応が返ってくるものはコンセプトとしては成り立たないものです。コンセプトが良ければ、そのたった10秒ほどのメッセージで顧客に『欲しい』と思わせることができるのです」

 平川社長は、コンセプトを考えるためのヒントを幾つか挙げてくれました。

・今まで一番感動してくれた顧客は誰だったか考えてみる。
・なぜこの人が買うの!?なぜこの人から問い合わせが来るの? ということがなかったか思い出してみる。
・他の業界で使われている手法を自分の業界に取り入れたらどうなるだろうと考えてみる。
・バカバカしい組み合わせを考えてみる。
・具体的に、○○さんだったらこれ絶対欲しいって言うよな、という情景を思い浮かべてみる。
・自分の今までの経験を基に、あのときの・今の自分だったらこれ絶対欲しい!というものを考えてみる。

 まず、このコンセプト立案とずらしの手法で、同社が実際に効果を上げた事例を紹介しましょう。

和菓子を弁当屋で販売

 冷凍の大福やおはぎなどを卸している和菓子製造会社の事例です。商品は和菓子で、最終顧客は和菓子店ですが、販売方法は卸先へのルート営業です。

 プロフィット・ラボラトリーは、この案件において、まず顧客を、なんと弁当店にずらしました。また営業方法をプッシュ型のDM送付にずらします。そうすることで、新しい販路が開拓できたのです。

 弁当店には「お弁当の横に和菓子を置かせてください。冷凍なので売れる分だけ解凍して出していただければ結構です」と提案したそうです。弁当とスイーツは“別腹”なので、和菓子を置いたことで弁当が売れなくなることはないだろうと考えたのです。弁当店には弁当の売り上げを減らさず、和菓子が売れた分だけ売り上げが上がるというメリットがあります。

 突然の取引ではリスクがあるので、まずは和菓子100個を無料で送付し、売れた分だけのお金を支払ってもらったそうです。2週間の契約で売れ残った場合、そのまま販売するなら全額支払ってもらい、もし売らないのであれば、クール便で送り返してもらいました。

 全国の弁当店にDMを流したところ反響は大きく、この和菓子製造会社は、月の売り上げが半年後に約1000万円から3倍の約3000万円にアップしたといいます。

 「この案件では、弁当店にとって『和菓子が客単価アップのツールになりますよ』というコンセプトを打ち出しました。これが良かったと思っています。例えば『和菓子はおいしいですよ』というコンセプトでは、弁当店には響かなかったと思います」

執筆=森部 好樹

1948年佐賀県生まれ。東京大学を卒業後、旧日本興業銀行に入行。香港支店副支店長などを経て興銀証券へ出向。ビックカメラで取締役を務め、2002年、格安メガネチェーン「オンデーズ」を設立し社長に。2007年共同広告社に移り、2008年同社社長に就任。2013年に退社して独立し、顧問業を専門とする会社、ロッキングホースを創業。現在代表取締役。

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