万一の備え、事業継続計画策定のススメ(第7回) 新型コロナで慌てるテレワーク対策なき会社

テレワーク 災害への備え

公開日:2020.03.25

 世界各国に新型コロナウイルス禍が広がる中で、日本政府は、企業にテレワークの活用を推奨している。働き方改革の実現策、および昨年から東京オリンピック・パラリンピックの交通問題の解決策として導入が求められていた。現実は一部の企業を除くと、それほど力を入れていなかった感もある。しかし、今回のコロナウイルス問題で、事業継続のために中小企業も含めていやが応でも導入を検討しなくてはならなくなった。ただ、多くの企業はテレワークを行う環境が整備されていない。整備するには時間もお金もそれなりにかかる。

テレワークに欠かせない自宅のパソコン整備

 すでにテレワークは働き方改革を実現する具体策として注目されていたものの、実態としては「育児や介護といった事情を抱える一部の従業員を対象とするものだ」という認識が少なからずあるように思える。そのため環境整備については、全従業員がテレワークをするのを前提にしていない(図1)。

●図1 テレワークの分類

出典:「平成30年版情報通信白書」を基にBiz Clipが作成

 テレワークを急きょ導入したいと考えたときに、真っ先に浮上する課題がパソコンの用意とその運用体制の整備だろう。現在、パソコン抜きの業務はほとんど想像できない。ただし現状では、オフィスにあるパソコンはノートパソコンばかりではなく、持ち出せないデスクトップパソコンもまだまだ多いはずだ。また、コロナウイルスの感染者が見つかった場合、オフィスが立ち入り禁止になり、そこで使っていたノートパソコンも自宅に持ち帰れなくなる可能性もある。そうしたケースを考慮すると、基本的には従業員が自宅で使える専用のパソコンを、あらかじめ用意しておかなければテレワークに支障が出るということになる。

 しかし、従業員自身がテレワークで使うノートパソコンを新たにそろえるには、それなりの費用を覚悟しなくてはならない。しかも、購入したパソコンを自社の業務で使えるように設定するには一定のスキルが必要で手間がかかる。使い始めてからも、ハード、ソフトに関するさまざまな問い合わせに、会社側は対応しなければならない。オフィスならパソコンに詳しい従業員が対応できても、分散する従業員の自宅からの問い合わせやトラブルに一つひとつ対応するのは難しいだろう。

 セキュリティリスクにも配慮が必要だ。たとえテレワーク用にパソコンを調達できても、利用場所が分散し、ITリテラシーの高くない従業員が管理することになれば、情報漏えいやデータ紛失などのリスクは増す。パソコンはオフィスにあるIT機器の中でも、特に管理に手間がかかる代物だからだ。

パソコンの導入から運用までトータルに考える

 つまり、事業継続のためにテレワークを導入するには、従業員が自宅で使うのを前提にパソコンの調達から運用管理まで見直す必要がある。パソコン、スマホ、タブレットの調達に関しては、厚生労働省が急きょ用意した「時間外労働等改善助成金」の新型コロナウイルス感染症対策のためのテレワークコースでも、助成金の対象外だ。基本的には自社ですべて賄わなくてはならない。

 その際、会社の備品として購入してもいいが、リースやレンタルなどのサービスを活用して、月額の利用料を支払う方法を検討してもいいだろう。いっときに多額の出費が必要ないので、素早く導入に動けるからだ。こうした月額などで利用料を支払うサービスの中には、導入から設定、管理さらには廃棄まで一括で提供しているプランもある。パソコンに詳しい社員がいない中小企業は特に注目したい。

 ソフトウエアなどの設定が済んだ状態でパソコンが短時間で届けば、非常に楽だ。使い方が分からなかったり、トラブルがあったりした際には、ヘルプデスクが用意されるプランも検討したい。こうしたサービスを活用すれば、テレワーク用パソコンの環境を整備するハードルはぐっと下がる。

 ソフトウエアなどのバージョンアップもサービスとして提供する企業に任せられれば、なおさら手間がかからない。テレワーク用ということでなくても、セキュリティの部分まで含めてアウトソーシングできるなら、情報システム部門がなかったり、担当者が少なかったりする中小企業には魅力的だろう。

 現在、新型コロナウイルス対策としてテレワークの導入が迫られているが、本来は事業継続計画(BCP)の一環として、中小も含めたすべての企業が検討しておく課題だった。さらに、新型コロナウイルス問題が収束した後には、生産性向上による働き方改革の実現策にもなるはずだ。今こそ、積極的に動くべきだろう。

執筆=高橋 秀典

【MT】

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