ビジネスに生かす中国古典の言葉(第2回) まずは自分の行いを正し、身をおさめととのえること

歴史・名言

公開日:2015.07.09

「修身斉家治国平天下」(『大学』)

 皆さんはどんな夢や目標を持っているでしょうか。子どもの頃ならサッカー選手になってワールドカップで活躍する、政治家になってよい国をつくる、なんてことを夢見ませんでしたか。

 社会に出た今なら、いずれは経営トップになる、起業して会社を上場させたいといった目標を掲げるビジネスパーソンもいるでしょう。もちろん、素敵なパートナーと巡り合い、幸せな家庭を築くという夢もあるかもしれません。そんな夢や目標を実現するにはどうすればいいのか。『大学』にこんな言葉があります。

おさ まってのちいえととのう。家斉いて后くにおさまる。国治まって后天下てんかたいらかなり。

(訳)身を修めて後に、家の秩序が整う。家が整って後に、国が治まる。国が治まった後には、天下全体が平和になるのである。

 『大学』は四書五経の一つで、いわゆる国を治める指導者に向けて書かれた書物です。日本でも江戸時代から多くのリーダーたちが学んでいました。今回紹介する言葉は「修身(しゅうしん)・斉家(せいか)・治国(ちこく)・平天下(へいてんか)」とよくそらんじられている有名な一節です。意味はそんなに難しくはないですね。天下を治めるには、まず自分の行いを正しくすること、次に家庭をととのえ、次に国家を治め、そして天下を平和にすべきであるということです。

己の行動が正しいかを常に自問する

 現代に置き換えれば、自分自身を修められなければ、幸せな家庭を築くことはできない。幸せな家庭を築けなければ、従業員を幸せにする企業経営はできない。そして、それができなければ、企業を大きく発展させることをできないといった感じでしょうか。つまり、自分の身を修めることがすべての物事を成し遂げる根幹だというわけです。

 しかし、現代のビジネスパーソンの中で、自分の身を修めるといったことを考えている人はどのくらいいるでしょうか。戦前までならともかく、我々は学校で「修身」を習ったことはありません。

 辞書を引くと、修身とは「自分の行いを正し、身をおさめととのえること」とあります。誤解を恐れずに言うと、昔よくお年寄りが言っていた「お天道様が見ているよ」という言葉に象徴されるような気がしています。何をするにも、人が見ていなくても、その行いは正しいかを自問する姿勢を持つことが大事です。

 ちょっとシチュエーションは異なりますが、京セラや第二電電(現KDDI)を創業し、日本航空を再建した名経営者の稲盛和夫さんは、第二電電を設立するに際して、「動機善なりや、私心なかりしか」と自問し続け、己を律したというのは有名な話です。

 また、掃除は古くから自己鍛錬法の一つとされてきましたが、カー用品店チェーン「イエローハット」を創業した鍵山秀三郎さんは会社のトイレを自らの手で磨いています。当初誰も見ていないところで鍵山さん一人が始めたトイレ掃除でしたが、やがて社員が自主的に参加するようになりました。そして、結果的に同社躍進の後押しとなったのです。

 修身とは、毎日の生活あるいは仕事をして行く中で、己の行動を律し、実践していくもの。常に、自分の行いが正しいものであるか意識することが何よりも大切です。

【T】

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